交通事故で健康保険は使える!任意保険と健康保険のお得な活用法。

自動車保険には、「自賠責保険」と「任意保険」があることは、「任意保険と自賠責保険の違いは?自動車保険に加入すべき理由を解説。」の記事で説明しました。
では、そのうち「任意保険」とは一体何を補償してくれるのでしょうか。実際に事故にあった場合、治療費などは、誰に請求すればよいのでしょうか。
ここでは、そのような疑問に応えるため、自動車保険の「任意保険」について詳しく説明します。さらに交通事故で治療費を立て替えることになったとき、「健康保険」を使えるのかについても説明します。
- 目次
任意保険とは
保険の種類
自動車保険の任意保険、といっても契約内容によって、補償の対象・範囲などはさまざまです。具体的にどのような補償があるのでしょうか。
主な任意保険として7つの保険があります。さらに7つの保険は、事故の相手方に対する補償するものと自分自身や搭乗者に対する補償するものにわけられます。
【事故の相手方に対して補償するもの】
対人賠償保険(相手方が死亡・ケガした場合)
交通事故の相手方が、死亡・ケガした場合に、自賠責保険の補償上限を超える部分を補償します。
対物賠償保険(相手方の物損の補償)
交通事故を起こして、他人の車や財物を壊した場合などに補償されます。自賠責では物を壊したことによる賠償責任は補償されないため、任意保険がなければ全額自己負担となります。
【自分自身や搭乗者に対して補償するもの】
搭乗者傷害保険
保険に加入している車両などに乗っている「搭乗者」が死亡・ケガした場合に、過失に関係なく補償されます。
②の人身傷害保険と同じく、搭乗者を補償するものですが、保険金の計算方法に大きな差があります。
人身傷害補償保険
自分自身、搭乗者が交通事故で死亡・ケガをした場合に補償されます。過失割合にかかわらず、保険会社の基準により実際に発生した損害額が支払われます。
自損事故保険
運転手みずからの責任で起こした事故により、運転手自身が死亡・ケガした場合に補償されます。
無保険車傷害保険
賠償能力が十分でない車による事故に巻き込まれた場合、補償されます。
車両保険
事故により破損した車両の修理代が補償されます。
その他の特約
以上のほか、「特約」をつけると、補償をより充実させることができます。代表的なものとして、弁護士費用等補償特約があります。
これは、弁護士への法律相談や交渉、訴訟に関する費用を補償するもので、近年、交通事故の事件処理において利用が増えています。
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自分自身や搭乗者に対して補償するもの
自分自身や搭乗者に対して補償する任意保険について、具体的に補償内容をみていきましょう。
2-1.搭乗者傷害保険について
保険に加入している車の「搭乗者」であれば、運転手、助手席、後部座席に乗っている人たちも含めて全員が補償の対象となります。
この保険は、過失に関係なく補償される保険であり、自賠責保険や各種傷害保険などとは関係なく支払われます。
ただし、実際の損害額ではなく、あらかじめ契約で決められた金額が支払われるため、人身傷害補償保険の上乗せ補償といった位置づけで考えられます。
また、飲酒運転など違法行為をしていた場合、搭乗者傷害保険は支払われませんので注意しましょう。
2-2.人身傷害補償保険について
人身傷害補償保険に入るメリット
搭乗者傷害保険と同様、保険に加入している車の搭乗者が死亡・ケガした場合、補償されます。契約内容によっては、歩行中や契約車両以外に搭乗中の事故についても補償されることがあります。
そして、人身傷害補償保険の大きな特徴として、過失割合に関係なく、また、相手方との示談成立を待たずして、実際の損害額が補償されるという点が挙げられます。
人身傷害補償保険に入っている場合とそうでない場合では、次のとおり、支払を受ける金額が大きくかわってきます。
損害額1,000万円、過失割合が相手方:自分=70:30の場合の例
人身傷害補償保険に入っている場合
過失割合に関係なく、相手方の示談を待たずして損害額の1,000万円が、加入している保険会社から支払われます。
人身傷害補償保険に入っていない場合
損害額の70%にあたる700万円が、示談成立後、相手方保険会社から支払われます(残りの300万円は自己負担)。
一般的に示談成立までは時間がかかるため、人身傷害補償保険に入っていない場合、先に自分で治療費を支払わなければならないケースがあります。
また、自分に過失がある場合、損害額の一部しか支払われず、残りについて自己負担しなければなりません。
人身傷害補償保険に入っていれば、支払時期や過失割合について心配する必要はありません。
2-3.人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険の違い
人身傷害補償保険は、補償対象が搭乗者傷害保険と似ていますが、保険金の計算方法に大きな違いがあります。
具体的には、搭乗者傷害保険は、契約時に設定した定額の保険金が支払われるのに対し、人身傷害補償保険は、実際に発生した損害額に対して、契約時に設定された保険金額の範囲内で補償される点です。
重大事故の場合など、思いのほか治療費などがかかる場合があります。このような場合、搭乗者傷害保険では賄いきれないケースも多々あります。
保険料はもちろんのことですが、補償される範囲も十分に考慮されたうえで、保険に加入することをお勧めします。
2-4.自損事故保険について
自損事故保険とは、自身の過失が100%の事故または相手方がいない事故により、死亡・ケガした場合に補償されるものです。
例えば、居眠り運転で電柱にぶつかりケガをした、といったケースです。このケースでは、同乗者は自賠責で補償されますが、運転手は自賠責の対象とはなりません。
そんな場合に補償してくれるのが自損事故保険です。なお、自損事故保険と人身傷害補償保険の両方の補償対象にあたる場合は、人身傷害補償保険から保険金が支払われます。
2-5.無保険車傷害保険について
無保険車傷害保険は、相手方が無保険車で賠償金の支払能力がなく、被害者が交通事故により死亡・後遺障害を負った場合、本来相手方が負担すべき損害賠償の不足分を補償するものです。
事故の相手方を補償する対人賠償保険に加入していない車は意外と多くあります。
もし、そのような車と交通事故にあった場合、いくら裁判などで高額の賠償金支払いが認められても、実際支払いを受けることは難しいのが現実です。
また、自賠責の補償上限は、死亡事故で3,000万円、ケガの場合で最高120万円、後遺障害の場合は75万円から4,000万円と、損害の全額が補償されないケースが多くあります。
このことから、無保険車傷害保険は自分の身を守るための保険といえます。
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健康保険について
3-1.治療費の支払いについて
これまで、被害者側を補償する任意保険の内容について説明してきました。では、実際に交通事故で入通院した場合、治療費はどのように支払うのでしょうか。
実際、自分で治療費を立て替えるのか、相手方保険会社が最初から支払うのかについては、保険会社によって対応が異なります。
自分で治療費を支払う場合、健康保険を使えないとなると10割負担となり、高額の支払が必要となり、被害に遭った方にさらなる負担となります。
では、交通事故の場合も医療機関で健康保険は使えるのでしょうか。
3-2.健康保険の利用について
「交通事故で病院に行ったのに、健康保険が使えない!」 医療機関でこのような扱いを受けることがあります。本当に交通事故での通院などで健康保険は使えないのでしょうか。
答えは、「いいえ!」です。基本的に健康保険は利用できます。
健康保険の利用ができないケースは
であり、交通事故の場合、「第三者の行為による負傷」 に該当するとも思われます。
しかし、厚生労働省から、交通事故の場合であっても医療保険の適用があり保険給付の対象となるとの通達が出されています(平成23年8月9日 保保発0809第3号「犯罪被害や自動車事故等による傷病の保険給付の取扱いについて」)。
交通事故の通院利用については問題なく健康保険が使えます。健康保険の利用を遠慮する必要はまったくありません。
なお、健康保険を使うと自由診療ができないため、高度先進医療が使えないケースもあります。治療方針によっては健康保険の適用をすべきか否か、医師と相談することをお勧めします。
3-3.健康保険を使うためには
交通事故の通院において、健康保険を利用するためには、加入している健康保険組合に「第三者行為による傷病届」を提出する必要があります。
加入している健康保険組合から書面を取り寄せ、必要事項を記載のうえ返送してください。
なお、傷病届は後に病院から提出を求められる可能性もあります。念のため控えをとっておいてください。
まとめ
このように、交通事故において、相手方を補償する保険だけでなく、自分自身や同乗者を補償する保険が多くあります。
交通事故では思わぬ損害が発生するケースも多くあります。任意保険に加入する際は、金額だけでなく、補償内容をよく検討したうえで加入してください。
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