自賠責保険と任意保険の慰謝料の違いとは?

交通事故の損害賠償金の慰謝料には自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士(裁判)基準の3つの基準があり、それぞれの基準によって支払われる損害賠償金額が変わってきます。ではこれらの基準がどういうもので、慰謝料金額はどのように変わってくるのでしょうか。
自賠責保険と任意保険の違い
自動車とバイク(二輪自動車、原動機付自転車)は原則として自賠責保険に強制的に加入する必要があります。自賠責保険は最低限の補償が受けられる保険で、人身事故のみの補償になります。したがって、交通事故によって壊れた自動車やバイク、自転車などの補償はありません。また、自賠責保険は対人賠償に限られているため、自分自身の怪我の治療費などは対象外となります。
任意保険は民間の保険で、個人が任意で加入する保険です。任意ではありますが、現在自動車やバイクを運転する方のほとんどがこの任意保険に加入しています。自賠責保険は最低限の補償しか受けられないために、自賠責保険で補償されていない部分を任意保険でカバーしようとしているようです。(表1)
表1.自賠責保険と任意保険の補償内容の違い
自賠責保険
自賠責保険の正式名称は「自動車損害賠償責任保険」といい、自動車損害賠償保障法によって、自動車とバイクを持つ人に加入を義務づけられている保険で、別名「強制保険」と呼ばれています。そのため、もし自賠責保険未加入の場合、一年以下の懲役または50万円以下の罰金や免許停止処分になる可能性があります。
自賠責保険で補償される内容と支払い限度額としては下記のようになっております。
・傷害(治療費、休業損害、慰謝料など):120万円
・後遺障害(慰謝料、逸失利益など):4,000万円(常時介護)、3,000万円(随時介護)、後遺障害等級別(第1級:3,000万円~第14級:75万円)
・死亡(慰謝料、葬儀費用など):3,000万円
任意保険
交通事故はいつ誰に起こるかわかりません。任意保険に加入義務はありませんが、交通事故による死亡事故では億単位の損害賠償請求が発生する場合もあることから、万が一のためにも加入しておくことを強くお勧めします。任意保険の補償内容としては主に下記の7つの種類が挙げられます。
対人賠償責任保険
歩行者や相手側の車に乗っていた人に怪我をさせたとき、または死亡させてしまったときなど損害賠償を負わなければならなくなった場合に、自賠責保険でカバーしきれなくなった部分をカバーするものです。任意保険のなかでもっとも重要な保険と言っても過言ではありません。対人賠償責任保険の補償の補償額は「無制限」が基本です。もちろん数千万円まで減額することもできますが、億単位の賠償額になることもありますので、安全を見て無制限にしておくことをお勧めします。
・補償対象:被保険者以外
・補償額:無制限が基本
対物賠償責任保険
交通事故で、相手側あるいは周りの人の車や所有物など、他人の財産に損害を与えてしまった場合に支払われる保険です。この対物賠償責任保険に関しても、億単位の賠償額になることがありますので、安全を見て無制限にしておくことをお勧めします。
・補償対象:被保険者以外の財物
・補償額:無制限が基本
人身傷害補償保険
契約した車の搭乗者全員が、交通事故によって怪我をしたり死亡した場合に、保険会社の基準範囲内で、加害者及び被害者の過失割合に関係なく実際の損害額が全額支払われる「実損払い」の保険です。したがって補償額を加入者が決めるものではありません。ただし、死亡保険金については補償額を加入者が決めることができ、5,000万円程度に設定するのが一般的といわれています。また、人身傷害補償保険は、契約車両に乗っているときだけでなく、歩行中に自動車事故に遭って死傷したときや、契約車両以外の車に乗車中の自動車事故で死傷した場合も、被保険者とその家族について補償されることが特徴です。(表2)
表2.人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険の補償対象
搭乗者傷害保険
保険に加入している車の搭乗者全員が交通事故で怪我をしたり死亡した場合に、「自賠責保険」や「対人賠償保険」とは別に、過失に関係なく支払われる保険です。ただし、搭乗者保険は飲酒運転など違法な乗車をしていた場合には支払われません。この搭乗者傷害保険は下記の2種類の支払い方法があります。
・日数払い:入通院にかかった日数分だけ定額で保険金が支払われます。
・部位症状別払い:負傷した部位によって支払われる金額が決まっています。
どちらの支払い方がいいかどうかはケースバイケースで、保険会社によっては支払い方が選択できないこともありますので、確認が必要です。
無保険者傷害保険
加害者が任意保険に加入しておらず、損害賠償の支払い能力がない場合や、十分な賠償を受けられないといった場合に、その不足分を自分が契約している対人賠償保険と同額の範囲内で補償してもらえる保険です。ただし、この無保険者障害保険は、後遺障害が残った場合や死亡した場合にのみ適用されることに注意が必要です。無保険者傷害保険は、すべての自動車保険に自動的に付帯されており、保険金額も固定されています。
・補償対象:被害者が死亡あるいは後遺障害が残った場合
・補償額:自分が加入している対人賠償保険の範囲内(固定)
自損事故保険
「カーブを曲がりきれずにガードレールに衝突した」などのような単独事故の場合や、相手のいない事故を起こした場合、同乗者には自賠責保険から保険金が支払われるのですが、ドライバー本人が怪我をしたり死亡した場合には保険金が支払われません。このような事故の場合にドライバーが最低限の補償を受けることのできる保険です。自損事故保険は、保険金額が固定されています。
車両保険
保険の対象となる車両が交通事故のよって損害を受けたときに補償する保険です。車両保険の補償額は、車の時価を基準に決まります。さらに保険料に大きく影響するのも車両保険の特徴です。あまりに古い車や時価が低い車の場合、車両保険をつけることができない場合もあります。
交通事故における慰謝料の3つの基準
交通事故の損害賠償において、慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があり、それぞれ慰謝料の補償額には下記の3つの基準があります。
1.自賠責保険基準
2.任意保険基準
3.弁護士(裁判)基準
いずれの慰謝料においても、金額相場は、弁護士(裁判)基準>任意保険基準>自賠責基準となっています。一例として、後遺障害慰謝料の3つの相場を記載します。(表3)
表3.後遺障害慰謝料の等級別慰謝料相場
1.自賠責保険基準
自賠責保険の支払いを基準とした算出方法であり、人身事故のみに補償されます。したがって、どの慰謝料においても弁護士基準や任意保険基準と比較して、補償額は低くなってしまいます。
2.任意保険基準
加害者の加入している保険会社が、示談交渉をする際に使用する基準であり、この基準は保険会社によって異なります。この基準は公開されていませんが、一般的に、弁護士基準と自賠責保険基準の間くらいの金額とされています。
3.弁護士(裁判)基準
一般的に最も高い損害賠償額の基準と言われ、過去の判例に照らし合わせて算出している基準です。専門的な知識を持った方でないと、弁護士基準での請求は難しいと言われています。
まとめ
以上のように、交通事故における慰謝料の補償額には、3つの基準があります。
自賠責保険基準では非常に狭い範囲しか補償ができませんし、任意保険基準では、被害者がその基準を知ることは極めて困難です。
また、何が請求できて何が請求できないかなど、専門家でないと判断が難しい部分もあります。
そんなときは、弁護士など、交通事故に関する豊富な知識を持った専門家を利用してみることをお勧めします。
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