交通事故の相手が外国人なら損害賠償はどうすればいいのか徹底解説

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交通事故の相手が外国人なら損害賠償はどうすればいいのか徹底解説

近年、日本に外国人の数が増加してきております。法務省入国管理局の統計によると、平成28年の外国人の入国者数は、2,321万8,912人であり、同年の在留外国人数は238万2,822人にも上りました。旅行客でも、日本に住んでいる外国人でも、移動の手段として自動車を運転することもあるでしょう。
また、日本人が海外に旅行することも、近年珍しくなくなってきました。平成27年の出国者数は、1,621万人にも上ります。ここでも、日本人が、海外でレンタカーを借りて、自動車を運転することもあるでしょう。
このように、日本にいる外国人の数が増え、海外にいる日本人の数も増えた状況下においては、日本人と外国人の交通事故も必然的に増加すると考えられます。そこで、もしあなたが日本で外国人の運転する自動車に衝突されるなどした場合や、海外で交通事故の被害に遭った場合、どうなるのでしょうか。日本人の場合と何か異なることがあるのでしょうか。
本記事では、まずは日本で外国人と交通事故を起こした場合の処理の方法についてご説明した後に、海外で交通事故に遭った場合の対処方法などもご説明し、外国人の関係する交通事故について分かりやすく解説したいと思います。

目次
  1. 外国人は日本で運転することができるのか
  2. 根拠となる法律
  3. 裁判所の管轄はどこ?
  4. 外国人に損害賠償請求できるもの
    1. 1.自賠責保険について
    2. 2.積極損害について
    3. 3.消極損害について
  5. 日本人が外国で事故を起こした場合には
  6. まとめ

外国人は日本で運転することができるのか

まず、前提として、どういう条件が揃えば外国人が日本で自動車を運転することができるのかについてご説明しましょう。

日本で自動車を運転するには、次のいずれかの運転免許を所持している必要があります。

✔ 通常の国内運転免許証

✔ 国際運転免許証(ジュネーブ条約加盟国がジュネーブ条約に基づき発行された型式のもの)

✔ 外国運転免許証(スイス、ドイツ、フランス、台湾、ベルギー、スロベニア、モナコ)


そして、私たちが普段耳にするような有名な国は、ほぼすべてジュネーブ条約に加盟しています。


そのため、日本にいる外国人はそれぞれの自国で取得した運転免許証があれば少しの手続だけで日本で運転できるのです。


しかし、外国人は皆、日本の交通ルールをほとんど知らないでしょう。そう考えるとやはり怖いですね。

なお、ジュネーブ条約加盟国に含まれていない大国が1つあります。それは中国です。


そのため、日本で自動車を運転する中国人は日本の教習所に通って運転免許を取得しなければなりません。

根拠となる法律

では、本題に戻りましょう。まず、日本において外国人が交通事故を起こした場合、その被害者は日本の法律に基づいて加害者に対して損害賠償請求をなしうるのでしょうか。

結論から申しますと、日本の法律に基づいて請求できます

その根拠は、法の適用に関する通則法17条で「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による」と定めているところ、交通事故が日本で起こっている以上、交通事故による被害は日本で発生しているからです。

ただし、逸失利益(交通事故に遭わなければ得られたであろう利益のこと)の算定にあたっては、その国の経済状況なども考慮して判断されますので、全ての手続が日本人と同様になされるわけではありません。

「基準となる法律は日本法である」ということです。

裁判所の管轄はどこ?

では、日本法に基づいて裁判で加害者に対して損害賠償を請求するにあたって、日本の裁判所に訴えを提起することはできるのでしょうか。

結論から申しますと、日本の裁判所に訴えを提起することができます

その根拠は、民事訴訟法3条の3第8号で「不法行為に関する訴え 不法行為があった地が日本国内にあるとき」には、日本の裁判所に提起することができると定めているからです。

ただし、加害者の外国人の国籍国に管轄がある可能性もあります。


この場合、加害者が国籍国で先に裁判を提起した場合には、どちらの国での裁判が進行するかが争いになることもあります。

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外国人に損害賠償請求できるもの

外国人が日本で交通事故を起こしたとしても日本の法律が適用されるのであれば、日本人と全く同じように処理されるのでしょうか。それとも何か異なるところがあるのでしょうか。

結論から申しますと、まったく同じというわけではなく、少しだけ異なる処理がなされることもあります。具体的に見ていきましょう。

1.自賠責保険について

まず、自賠責保険は加害者が外国人であった場合を排除していないので、自賠責保険からの支払は日本人と同様になされます。


したがって、加害者が外国人の場合であっても、場合によっては損害の全額が自賠責から補償されることがあります。

2.積極損害について

積極損害とは、治療費などのように、実際に被害者が事故のために実際にお金を支払わなければならなくなった損害のことをいいます。


この損害は、加害者が外国人かどうかにかかわらず、出費を強いられる費用に相当するので、日本人とほぼ同額が認められます。

ただし、外国人も怪我をした場合には、外国人に特有な事情として、渡航費(海外の病院に行くための旅費や、海外から家族が心配してお見舞いに来たときの旅費など)などの特殊な費用が請求されることもあります。

3.消極損害について

消極損害とは、休業損害・逸失利益などのように、被害者が実際にお金を支払うわけではないけれども損害として認められる損害のことです。

理論的には、加害者が外国人であるかどうかという事実は被害者の請求できる損害賠償額に影響はありません。ただし、事実上、次のような制約があります。


✔ 外国語で書かれた書証には翻訳の添付が必要となります。

✔ 証人尋問の際には、通訳人を用意しなければなりません。

✔ 加害者が帰国した後は、直接会って話ができなくなるため、手紙・FAX・Eメールなどの手段による意思疎通が必要となります。そのため、外国語によるコミュニケーションが必要不可欠となります。

では、加害者もケガをしていた場合はどうでしょうか。

これは、ケースによって日本人の場合と同じかどうかが分かれうるところです。休業損害を例にとって説明しましょう。

例えば、加害者の外国人が日本人と結婚していて、永住者の在留資格を持ち、日本で就労していた場合には、休業損害は日本人の場合と同じです。

また、就労可能な在留資格を持ち、ある程度長期滞在が見込まれる外国人の場合には、日本において得ていた収入額を基礎として計算されますが、損害賠償の対象期間が在留期間を超えるときは、在留期間が更新される可能性が立証されることを条件に更新後の期間も含めて算定されます。

しかし、短期滞在など就労不能な在留資格を持ち、長期の滞在が見込まれない外国人の場合には、本国における休業損害の発生であり、通常は本国に帰って生活をすることから、本国における収入額を基礎として算定されます。


この場合には、本国の経済水準が大きく影響を与えます。

例えば、その外国人が発展途上国出身であったときは、休業損害は日本人の場合よりも安くなる傾向があると考えられますが、先進国出身であったときは、日本人と同じかそれ以上になる可能性があります。

この点に関し、最高裁判所は次のような判断をしていますので、参考までに掲載しておきます。

「財産上の損害としての逸失利益は、事故がなかったら存したであろう利益の喪失分として評価算定されるものであり、その性質上、種々の証拠資料に基づき相当程度の蓋然性をもって推定される当該被害者の将来の収入等の状況を基礎として算定せざるを得ない。


損害の填補、すなわち、あるべき状態への回復という損害賠償の目的からして、右算定は、被害者個々人の具体的事情を考慮して行うのが相当である。


こうした逸失利益算定の方法については、被害者が日本人であると否とによって異なるべき理由はない。


したがって、一時的に我が国に滞在し将来出国が予定される外国人の逸失利益を算定するに当たっては、当該外国人がいつまで我が国に居住して就労するか、その後はどこの国に出国してどこに生活の本拠を置いて就労することになるか、などの点を証拠資料に基づき相当程度の蓋然性が認められる程度に予測し、将来のあり得べき収入状況を推定すべきことになる。


そうすると、予測される我が国での就労可能期間ないし滞在可能期間内は我が国での収入等を基礎とし、その後は想定される出国先(多くは母国)での収入等を基礎として逸失利益を算定するのが合理的ということができる。

 

そして、我が国における就労可能期間は、来日目的、事故の時点における本人の意思、在留資格の有無、在留資格の内容、在留期間、在留期間更新の実績及び蓋然性、就労資格の有無、就労の態様等の事実的及び規範的な諸要素を考慮して、これを認定するのが相当である。」(最判平成9年1月28日)。



日本人が外国で事故を起こした場合には

次に、日本人が外国で交通事故に遭ったケースをご紹介しましょう。

この場合には、裁判所の管轄はその外国となるのが原則です

もっとも、加害者が帰国して日本に居住している場合や、加害者の財産が日本にある場合、当事者間で日本の裁判所に訴えを提起することができることを合意した場合など、一定の場合には日本の裁判所に管轄が認められます。

また、準拠法もその外国の法律となるのが原則です。もっとも、当事者双方とも日本に常居所がある場合には、日本法に準拠することもあり得ます。

しかし、原則通りその外国の法律に準拠して紛争が解決されることとなった場合には、現地の弁護士に依頼しましょう。


その方法としては、現地の知人や日本企業、場合によっては領事館で紹介してもらうことなどがあります。

そして、裁判で勝訴したことを理由に日本の財産を執行したい場合には、裁判所の承認手続を経なければなりません。


この手続については、専門的なところも多いので、弁護士に相談してください。

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まとめ

以上の通り、日本で外国人と交通事故を起こした場合は、日本人の場合とあまり変わらないのですが、一部変わる場合もあります。


他方、外国で交通事故に巻きまれた場合には、原則として現地で手続を進めざるを得ませんので、注意してください。

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