交通事故でむちうち!入院・通院の慰謝料相場

慰謝料・損害賠償
交通事故でむちうち!入院・通院の慰謝料相場

交通事故によりむちうちになったという話は、みなさんもよく耳にしたことがあると思います。


むちうちとは、交通事故による衝撃で、頭部が鞭のように激しく前後にしなり、頚部などに障害が発生することをいいます。


医学的には外傷性頸部症候群、頚椎捻挫、外傷性頭頸部症候群、外傷性頚椎捻挫、頚部挫傷などの傷病名・診断名がつけられています。


本稿では、交通事故によりむちうちになった場合に認められる損害の内容や、保険会社との交渉など、損害賠償請求するうえでの注意点を解説したいと思います。


なお、本稿の内容は、むちうちのケースに限らず、けがの程度が比較的軽微なケース(例えば、腰椎捻挫や打撲など)全般に当てはまる内容になっています。

目次
  1. 主な損害の内容
    1. 治療費
    2. 施術費
    3. 文書料
    4. 付添費
    5. 通院交通費
    6. 休業損害
    7. 後遺障害逸失利益
    8. 傷害慰謝料
  2. 治療費の支払いのタイミングや注意点について
    1. 治療費の支払のタイミングについて
    2. 健康保険の利用について
    3. 保険会社から治療費の支払いを受ける際の注意点
  3. 後遺障害等級の認定についての注意点
    1. 認定方法
    2. 注意点
  4. 事故事例
    1. 事例1(弁護士介入あり。弁護士介入前の保険会社からの金額提示あり)
    2. 事例2(弁護士介入あり。弁護士介入前の保険会社からの金額提示なし)
  5. おわりに

主な損害の内容

1-1.治療費

交通事故で傷害を負った場合、病院の治療費は、けがの治療のために必要かつ相当な費用であれば交通事故の損害として全額が認められます。


ですが、損害としての必要性が認められるのは、原則として症状固定に至るまでの治療費です。症状固定とは、保険会社ではなく医師が決めるもので、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状況を言います。


症状固定になると、症状の改善が見込めず、治療を継続する必要性が無いため、原則として症状固定前の治療費のみが交通事故の損害として認められます。


例えば、整形外科でレントゲンやMRIを撮影する費用、痛み止めの薬代など、症状固定時までの検査・治療に要する費用の全額が損害として認められます。

 

1-2.施術費

整骨院や接骨院などの施術費についても、医師の指示がある場合などは損害として認められる傾向にあります。


もっとも、整骨院や接骨院は、医療機関ではないので、病院の治療費よりも損害として認められにくくなっています。


例えば、病院への通院は1回だけで、その後整骨院ばかりに通院しているといったケースでは、その施術費用の全額が損害として認められない可能性があります。


そのため、整骨院や接骨院は、あくまで病院の治療を補助するものという位置づけで考えておくようにしてください。


また、整骨院や接骨院に通院する際には、一度主治医に相談してみる方が良いでしょう。また、保険会社の了承も得るようにしておきましょう。

 

1-3.文書料

診断書作成料、交通事故証明書取得費用などの文書を作成するために必要となった費用は、まとめて文書料と呼ばれ、損害賠償請求に必要かつ相当な範囲で損害として認められます。


領収書を貰った場合には、紛失しないように注意してください。

 

1-4.付添費

入院や通院の際に、近親者が付き添って看護をした場合の損害に対する費用を付添費といいます。


入院付添費は、医師から付添看護の指示があった場合やけがの程度、被害者の年齢などにより必要があるとされた際に認められます。


看護師やヘルパーなどの職業付添人に付添看護を依頼した場合は実費全額が、近親者付添人の場合は、1日あたり6,500円が被害者本人の損害として認められます。


通院付添費は、症状や幼児の年齢などから判断し、必要と認められる場合に原則として1日あたり3,300円が被害者本人の損害として認められます。

 

1-5.通院交通費

病院への通院交通費も損害として認められます。通院交通費は、症状などによりタクシーの利用が必要とされるケース以外は電車、バスの料金で計算されます。


また、自家用車を利用した場合は、移動距離1kmにつき15円が損害として認められます。

 

1-6.休業損害

交通事故の被害者が傷害を負った場合、治療や療養のために休業せざるを得なくなることがあります。そのような場合に休業したことにより、得ることができなくなった収入を休業損害といいます。


労働をして給与・報酬を得ている場合だけでなく、専業主婦などが家事労働に従事できなかった場合も休業損害が認められます。


休業損害は、事故前の1日あたりの収入×休業日数という算出方法により算出されます。


休業損害についての詳細は、下記の記事を参考にしてください。

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1-7.後遺障害逸失利益

後遺傷害逸失利益とは、後遺障害を負った場合に、加害行為がなければ被害者が将来得られるであろう経済的利益を失ったことによる損害をいいます。


言い換えると、後遺障害を負うことで、労働能力の一部又は全部が失われるため、失われた分を収入に換算した場合の損害のことをいいます。


後遺障害逸失利益の詳しい計算方法は下記の記事を参考にしてください。

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むちうちの場合、けがの程度は大きくありませんので、必ずしも後遺障害が残存するとは限りません。


もっとも、後遺障害が残存することもしばしばあり、残存する場合の後遺障害等級は第14級又は第12級の場合が多いです。


後遺障害等級の詳しい内容については、下記記事を参考にしてください。

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1-8.傷害慰謝料

傷害を受けたことによる精神的苦痛に対する損害を傷害慰謝料といいます。傷害慰謝料は、入通院期間によって金額が変わってきます。


裁判基準による傷害慰謝料の金額は以下の表の通りです。例えば、むちうちによる負傷で、入院はしていないが、5か月通院した場合であれば、慰謝料は79万円となります。


表1.裁判基準による傷害慰謝料の金額

裁判基準による傷害慰謝料の金額

 

治療費の支払いのタイミングや注意点について

2-1.治療費の支払のタイミングについて

被害者が加害者から入通院慰謝料などの損害の賠償を受けられるタイミングは、示談や裁判の後になるのが原則です。


もっとも、交通事故の場合で、加害者が自動車保険に加入している場合には、入通院の段階で、必要な治療費を保険会社に支払ってもらうことが可能です。


加害者が自動車保険に加入していなくても、強制保険である自賠責保険に対して仮渡金請求をすることができます。


仮渡金請求とは、加害者との示談や裁判が終了していなくても、傷害の態様に応じて5万円から40万円の範囲内で自賠責保険金を事前に受け取りができる制度のことです。


その他にも、被害者が人身傷害保険に加入している場合には、人身傷害保険から治療費の支払いを受けることができます。


他方で、加害者や被害者が自動車保険や人身傷害保険に加入していない場合や、自賠責保険の仮渡金が上限を超えた場合の治療費については、


一旦被害者が治療費を負担したうえで、示談交渉の際に加害者にまとめて請求するという流れになります。

 

2-2.健康保険の利用について

被害者が治療費を全額立て替えることは、被害者にとって大きな負担になるため、健康保険を利用することにより、治療費の負担を抑えることができないのでしょうか。


交通事故によるけがでは、健康保険を利用できないと思っている方もいるかもしれませんが、交通事故でも健康保険を利用することができます。


健康保険が利用できないという誤解は、一部の医療機関でも生じています。健康保険の利用を断られたというケースが稀にあります。


ですが、旧厚生省(現在の厚生労働省)は、昭和43年10月12日 保健発第106号「健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて」で、


「自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変わりがなく、保険給付の対象となるものであるので、この点について誤解のないよう住民、医療機関等に周知を図るとともに、保険者が被保険者に対して十分理解させるように指導されたい」


という通達を出し、交通事故の治療においても健康保険の利用ができるものとの見解を示しています。

 

2-3.保険会社から治療費の支払いを受ける際の注意点

加害者が加入する保険会社から治療費の支払いを受けている場合でも、通常はむちうちの場合であれば、3~6か月で支払いの打ち切りを打診されることが多いです。


被害者は、支払いの打ち切りを打診されたとしても、まだ通院の必要性がある場合には、けがの現状や痛みの程度、医師の見通しなどを保険会社の担当者に伝えて、治療費の支払いを継続するようにお願いしましょう。


場合によっては医師に治療継続の必要性に関する意見書を作成してもらう事も有益です。


もっとも、加害者側の加入する保険会社が被害者に対して示談前に治療費の支払いを行うのはあくまでサービスであり、法的な義務があるわけではありません。


したがって、治療費の支払いをお願いするにあたり、保険会社の担当者に対して治療の必要性などを訴えることは別として、礼節を欠くような言動は行わないように注意しましょう。

 

後遺障害等級の認定についての注意点

3-1.認定方法

後遺障害等級が認められるためには損害保険料率算出機構の調査事務所による等級認定を受ける必要があります。


その手続は、まず事前に医師に検査をしてもらい、後遺障害診断書を記載してもらい、後遺障害診断書を自賠責保険会社に提出する、という流れです。


後遺障害等級認定に不服がある場合は、異議申立をすることができます。

 

3-2.注意点

医師に後遺障害診断書を作成してもらう際には、自覚症状をしっかり伝え、記載してもらうことが重要です。


また、後遺障害と診断される結果が出る可能性のある検査については十分に行ってもらうことも重要です。


むちうちの場合は後遺障害非該当となることが多いですが、第14級(9号)または12級(13号)が認定されるケースもあります。


むちうちで12級が認定されるケースは、MRIなどの画像所見から神経の圧迫が確認でき、かつ、圧迫されている神経に対応する身体の部位に知覚障害などの異常が認められる場合である傾向があります。


他方で、14級が認定されるケースは、12級が認められるケースよりも明確な基準はなくケースバイケースの判断になります。


例えば、画像所見からは神経の圧迫が確認できないが、検査により身体の特定の部位に神経症状が生じていると認められる場合などは、14級が認定される可能性があります。

 

事故事例

4-1.事例1(弁護士介入あり。弁護士介入前の保険会社からの金額提示あり)

頚部打撲、腰部打撲により通院期間124日の男性について、


治療費26万9,774円、通院交通費3,246円、休業損害1万1,649円、傷害慰謝料67万7,869円の合計96万2,556円(保険会社の提示額は27万6,708円)で保険会社と示談した事例。

 

4-2.事例2(弁護士介入あり。弁護士介入前の保険会社からの金額提示なし)

外傷性頸・腰部捻挫、両膝手股打撲傷により通院期間95日の男性について、


治療費90万2,060円、通院交通費4万7,260円、傷害慰謝料50万円の合計144万9,320円のうち、過失割合10%を過失相殺され、144万9,320円の90%にあたる130万4,388円で保険会社と示談した事例。

 

おわりに

むちうちでの損害の内容や、損害賠償請求するうえでの注意点を解説しました。


その中でも、特に後遺障害の認定に関しては法的な知識のみならず、医学的な知識も必要なものであり、被害者が自分で請求し、有利な認定を受けることはかなり困難であると思います。


そこで、経験豊富な弁護士に相談することをおすすめします。


弁護士に依頼すると、医師に後遺障害診断書を作成してもらう際のアドバイスや、申請の際の意見書の作成など、被害者に有利な認定を受けやすいように手続きをすすめてくれますので、一度相談してみましょう。

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