盗難車の交通事故。賠償責任はどこにあるのか徹底解説!

慰謝料・損害賠償
盗難車の交通事故。賠償責任はどこにあるのか徹底解説!

交通事故は日々数多く発生しています。それゆえに、よくある交通事故のケースとは少し異質な事故も発生しているのも事実です。もしも加害者の運転する自動車が盗品だった場合、普通のケースとどのように異なるのでしょうか。今回は、加害者の運転する自動車が盗品だった場合について紹介します。

目次
  1. 運転者の民事責任
  2. その他の者の民事責任
  3. 一般の事故との対応の違い
  4. 車を盗んだ者の刑事責任とは
    1. 窃盗罪
    2. 強盗罪
    3. 恐喝罪
    4. 詐欺罪
    5. 横領罪
    6. 遺失物等横領罪
  5. 被害者のとりうる手段とは
    1. 告訴・告発
    2. 被害届の提出
    3. どの手続きをとるべきか警察と相談しよう
  6. まとめ

運転者の民事責任

加害者の運転する自動車が盗まれたものであっても、その運転手は損害賠償責任を負わなければなりません。


その根拠としては、民法第709条自動車損害賠償保障法第3条があります。これは一般的な場合と同様です。

その他の者の民事責任

では、車を盗まれた人はどうでしょうか。

実は、運転手以外でも自動車損害賠償保障法第3条に基づいて責任を負う場合があるのです。


車を盗まれた人が責任を負うとなった場合には、もちろん慰謝料も払わなければなりません。

同条は次のような内容になっています。

(自動車損害賠償責任)

第三条  自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。

 

この条文は、運転手でなくとも「この『自己のために自動車を運行の用に供する者』が、その自動車を運行することによって誰かを傷つけたりした場合には損害賠償をしなければならない」ということです。

では、この「自己のために自動車を運行の用に供する者」というのはどのような人を指しているのでしょうか。

これは、

運行を支配していること(「運行の用に供する」)

運行により利益を得ていること(「自己のために」)

を条件としています。

①の運行支配は、客観的なものや事実上のもののみならず、管理監督可能性を含めて判断されます。

例えば、Aが公道上にエンジンキーをつけたままにして自動車を放置していたところ、そこを通りがかったBがこれを盗み出し、その現場から約百数十メートル離れたところで事故を起こしたケースのように「簡単に管理できたのに全然管理していなかった」などというケースが典型的です。

そして、②の運行利益も客観的に見て利益を得ていると判断されればよく、実際に利益が発生したかどうかは問いません。

例えばレンタカー業者が典型的です。

このようにかなり広く判断されるため、運行供用者に該当する者はかなり広いといえます。これを前提として、具体的に加害者の車が盗難車だった場合について見てみましょう。

確かに、自動車を盗まれた被害者には責任を負わせるべきではないとの価値判断もあり得るでしょう。

しかし、判例は、Aが公道上にエンジンキーをつけたままにして自動車を放置していたところ、そこを通りがかったBがこれを盗み出し、その現場から約百数十メートル離れたところで事故を起こしたケースについて「Aが自動車が放置されていることを知りながら何の措置もとらなかったこと」や「事故現場と盗まれた現場の距離が短いこと」を理由にAは運行供用者に当たるとしました。

他方で、別の判例では、タクシー会社の車庫にドアの鍵をかけずにエンジンキーをつけたままにしていた自動車を第三者が盗み出し、約2時間後に事故を起こした事案で、タクシー会社の責任を否定します。

これらの判例からすると、「盗まれたからといって直ちに運行供用者に当たらない」というわけではないのです。このように盗まれた側も責任に問われる可能性があります。

なお、車を盗まれた人もその人が加入している任意保険を利用できる可能性があります(その保険の特約で、盗まれた場合などが除外されていれば利用できないため、あくまで「可能性」にすぎません)。

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一般の事故との対応の違い

仮に被害者が運転手と車を盗まれた人の双方に損害賠償請求をなしうる場合、その2人又はそれぞれが加入する任意保険会社と交渉をすることになります

運転手との交渉は一般の事件と同じです。

ただし、運転手は次に述べる通り逮捕される可能性がありますので逃亡する可能性があります。その場合には、その行方は警察に任せてもいいかもしれません。

また、車を盗まれた人との交渉においては人身損害(治療費や慰謝料など)しか請求できませんので注意してください。

車を盗んだ者の刑事責任とは

では車を盗んだ者にはどのような刑事責任を問えるのでしょうか。

一般的に「車を盗んだ」といっても、その態様にはさまざまなものがあります。

例えば、

✔ Aが路上に一時的に止めてジュースを買いに行っている隙に盗んだ場合

✔ 新車の試乗会で「ちょっと運転してくる」とだけ告げてそれを持ち出した場合

✔ 友人から預かっている車をそのまま自分の物にした場合

など、本当にさまざまです。

そのため刑事責任もケースによって変わってきます。以下、よくある犯罪を説明します。

窃盗罪

窃盗罪の条文は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」とされております。

判例理論なども補って説明すると、他人の占有する財物を自分又は第三者の占有に移したことをいいます。占有とはその物を事実上支配することをいいます。

例えば、家のガレージに置いてある車を持ち出して自分が占有すると窃盗罪です。一番典型的な泥棒ですね。

強盗罪

強盗罪の条文は「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する」とされております。

窃盗罪は単純に盗み出す行為なのに対して、強盗罪は相手方の反抗を抑圧するに足りる程度の「暴行又は脅迫」、すなわち被害者が「これは反抗をしたらすぐに反抗を抑えられて何か盗られるだろうな」と思うような「暴行又は脅迫」があることをいいます。

例えば、タクシーに乗っていた客がナイフを出して「車をよこせ」などといい、そのタクシーを自分の物にするのが典型例です。

恐喝罪

恐喝罪の条文は「人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」とされております。

判例によってこの犯罪はかなり具体化されており、恐喝とは「暴行・脅迫によって相手方の反抗を抑圧するに至らない程度に畏怖させ、財物の交付を要求する行為」をいいます。

この定義は強盗の暴行強迫よりも弱いもので足りますので、「強盗まではいかないけれども怖いことを言った」ような場合に適用されます。


この他にも被害者が実際に畏怖したことや加害者が財物を受領したことなどが必要です。

詐欺罪

詐欺罪の条文は「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」とされております。

「欺いて」とは、相手方が真実を知っていれば財産を渡さないような重要な事実を偽ることをいいます。

例えば、相手の持つ自動車を盗む目的で「君の車、少し壊れているみたいだね。私が預かって直してあげるよ」などと告げて被害者をだまし、車を受け取った場合が典型的です。

横領罪

横領罪の条文は「自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する」とされております。


つまり、自分が持っている他人の物を、所有者しかできないような処分をすることをいいます。

例えば、友人から車を預かったが、友人から「返してくれ」と言われていたのに、これを返さず自分の物にしていたようなケースが典型です。

遺失物等横領罪

遺失物等横領罪の条文は「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する」とされております。


この犯罪は窃盗罪と比べると分かりやすいです。

先ほど窃盗罪は他人の「占有」する物を盗むことだと説明しました。

しかし、この犯罪は「占有を離れた物」を盗んだ場合です。

例えば、Aさんが自分の自動車を大阪市内の路上に駐車して、すぐ隣の自動販売機にジュースを買いに行きました。

このときはそれほど距離が離れていないため、Aさんも自分の手元に車を置いている感覚でジュースを買いに行ったでしょう。


そのため、この車はまだAさんの占有下にあると判断されます。

では、Aさんが自分の自動車を大阪市内の路上に駐車して、そのままアメリカへ行ってしまった場合はどうでしょうか。

この場合、自動車とAさんの距離はものすごく離れていますし、Aさんとしても自分の手元に自動車を置いているとは考えていないはずです。


この場合には、この車はAさんの占有下にないと判断されやすくなります。

被害者のとりうる手段とは

では、交通事故の被害者や盗難の被害者は実際にどのような手続きを経て加害者を処罰できるのでしょうか。その代表的な手段として、告訴・告発・被害届の提出があります。

告訴・告発

告訴・告発とは捜査機関に対して犯罪を申告し処罰を求める意思表示をすることです。


被害者本人が行う場合には告訴といい、被害者以外の第三者がこれを行う場合には告発といいます。

告訴も告発も、「書面(告訴状や告発状というタイトルがつけられます)又は口頭で検察官又は司法警察員(巡査部長以上の者)にこれをしなければならない」とされています。


告訴・告発を受けた検察官又は司法警察員は、調書を作成します。

もっとも、告訴・告発が受理されたからといって、必ずしも犯人及び証拠を発見・収集・保全する手続が行われるわけではありません。

ただ、検察官は起訴したか・しなかったのかの結論を告訴人・告発人に通知する義務を負いますので、告訴・告発が受理されたからには捜査をする方向で考慮するでしょう。

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被害届の提出

被害届は被害事実についてのみ申告するものです。これには犯人の起訴を求める意思表示は含まれておらず、法的な位置づけの無い事実上のものです。


そのため、警察にとっても告訴や告発に比べて被害届の取扱いは緩やかになされていると考えられます。

どの手続きをとるべきか警察と相談しよう

これらの手続を経なければ警察は絶対に動いてくれないのでしょうか。

結論から申しますとそうではありません。

告訴・告発や被害届の提出がなくとも、警察が動いてくれることはあります。


ただし、警察が犯罪行為そのものを認識していない場合もありますし、被害者がどの程度犯人を処罰したいと考えているのか分かっていない場合もあります。

そのため「こんな出来事があったのだ」「私は加害者を処罰してほしいと考えているのだ」ということを警察に伝える必要があります。


そのための手段として、告訴や告発、被害届の提出などがあるというわけです。

実際の事案においては、具体的にどのような手続をとるべきかについて警察と相談するとよいでしょう。

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まとめ

以上、加害者の車が盗難車だった場合には民事・刑事ともに複雑になってきます。このような場合には一度弁護士と相談するのがよいでしょう。

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