5億を超える損害賠償も!交通事故の高額賠償3事例
- 目次
横浜地裁判決平成23年11月1日の事例
<事案の概要>
本件は、深夜に徒歩で横断禁止の規制のある国道を横断していた被害者(当時41歳)が、国道を走行してきたタクシーにはねられて死亡した交通事故です。
被害者は自ら眼科医院を経営する医者でした。
本件事故により、被害者の衣服(コート、マフラー、ハンカチ、ズボン、ベルト、靴など)はすべて損壊ないし使用不可能となったが、コートはグッチ製、ベルトはイブサンローラン、下着類もラルフローレン、靴はルイヴィトンと高級品ばかりでした。
この事案に対して裁判所は次のように判断しました。
<判決の概要>
1.慰謝料 2,800万円
被害者は妻である原告花子を扶養しており一家の支柱であったものと認められるから、死亡慰謝料としては2,800万円が相当である。
2.逸失利益 4億7,852万円
① 基礎収入
被害者は、眼科医として病院勤務を経て平成16年3月に眼科クリニックを開設し、本件事故当時は開業医として稼働していた。
被害者の平成18年の所得金額は5,071万円(一時所得は除く、1万円未満切り捨て、以下逸失利益の計算においては同様)であり、平成19年は6,128万円、平成20年は4,893万円、平成21年は6,101万円であった。
被害者の基礎収入としては、毎年所得の変動があることから以上の4年間の平均額とするのが相当であり、その金額は5,548万円である。
② 生活費控除率 40%
被害者の扶養者は妻のみであり、被害者の収入は平均収入額をかなり上回っていることから、税金の負担額も平均成人男性の負担をかなり上回っているものと推認できる。
しかし、収入が増加しても生活費にかける金額は収入に比例して増加するものではなく、むしろ生活費が収入に占める割合は(ブランド品の購入など収入に見合った生活費の増額があることを考慮しても)高額所得者ほど低下していくものと思われることから、生活費控除率は40%とするのが相当である。
③ 就労可能期間 26年
被害者は本件事故時41歳であったから、その就労可能期間は67歳までの26年間とするのが相当である。
④ 小括 4億7,852万円
3. 治療費 41万8,910円
4. 葬儀費用 150万円
5. 着衣損害 10万円
本件事故により、被害者が着用していた衣服のうちコート及び白色マフラー、ハンカチ、手袋、ベルトは破損、汚損は認められなかったが、黒色スーツ上下、ワイシャツ、半袖シャツ、革靴(ルイヴィトン製)は破損または汚損し、使用不能となったことが認められる。
その損害額は、減価償却を考慮し10万円と認めるのが相当である。
6. 1.ないし5.の小計 5億0,853万8,910円
このように開業医の医者が死亡したことによって5億円を超える賠償金が認められました。ただし、被害者の過失割合が60%とされたので結果的に支払われた額は2億円程度でした。
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名古屋地裁平成23年2月18日の事例
<事案の概要>
大学の授業終了後、別の駐車場に駐車している被害者などを送り届けるため、加害者の乗用車に5人が搭乗する際、被害者が自らボンネット上にうつ伏せになって乗りました。
加害者は乗用車を発進させゆっくりした速度で走行していましたが、ハンドルを左に切った際、被害者がボンネットから転落して路面に頭部が打ちつけられました。
その結果、被害者は遷延性意識障害の後遺症を残す重篤な症状となりました。
<判決の概要>
① 治療費 142万659円
② 入院雑費 49万9,200円
1日1,300円の384日分である49万9,200円
③ 付添看護料(症状固定前) 0円
④ 交通費など 85万5,057円
⑤ 休業損害 199万2,576円
被害者は昭和62年2月生まれで、本件事故のあった平成19年4月13日には20歳でE大学の3年生になったばかりの時期であったこと、遅くとも平成18年5月ころからは当時のアルバイト先である会社が経営するお好み焼き屋でアルバイトをしており、平成19年は、本件事故の前日である4月12日までの102日間に52万9,318円のアルバイト代を稼いでいたこと、本件事故は大学の講義が終わった後に発生しており、当日も、その後被害者はアルバイトに行く予定であったことが認められる。
学業や就職活動とアルバイトを両立することは十分に可能であると考えられることからすれば、本件事故前日までの102日間の収入を基礎収入として384日分の休業損害を認めるのが相当である。
⑥ 逸失利益 1億1,455万8,209円
前記認定のとおり、被害者は本件事故当時E大学の3年生であったから、後遺障害逸失利益の基礎年収は賃金センサス平成18年男子大卒全年齢平均賃金である676万7,500円とするのが相当である。
⑦ 将来付添費(介護料) 1億5,903万8,917円
(ア)将来介護の期間
被害者は、平成21年10月1日以降、現在の自宅で自宅療養をしている。
被害者は昭和62年2月生まれであるから、自宅療養を開始した時点での被害者の年齢は22歳と8ヶ月弱である。また、昭和36年11月生まれ原告花子はこの時点で47歳である。
平成20年簡易生命表の男子の平均余命は22歳が57.82年、23歳が56.85年であるから、22歳8ヶ月弱の男子の平均余命はおおむね57年であると認められる。
したがって、将来介護の期間は57年間(ライプニッツ係数18.7605)と認めるのが相当である。
(イ)原告花子が67歳になるまでの20年間(ライプニッツ係数は12.4622)
被害者母が就業する平日(月曜から金曜、年間240日)の夜間は同人が介護をするが、日中は職業介護人を依頼する必要がある。
被害者母の休業日(土曜、日曜、祝日、年間125日)のうち60日間は、被害者母が就業と介護以外に休息をとるための時間(レスパイト)のため日中の職業介護人を依頼する必要がある。
したがって、この20年間については1年のうち300日間については日中の職業介護と夜間の近親者介護が、残りの65日間については全日の近親者介護が行われるものとして介護料を算定するのが相当である。
日中の職業介護の費用を日額2万円、夜間の近親者(主として被害者母)による介護の費用を日額5,000円、全日の近親者による介護の費用を日額1万円と認めるのが相当である。
したがって、上記20年間の介護費用は(日額2万5,000円×300日+日額1万円×65日)×12.4622=1億156万6,930円である。
(ウ)被害者母の67歳以降の37年間
被害者母が67歳になれば肉体的負担の大きい被害者の介護も不可能となるから、年間365日職業人介護の必要性が認められる。
そして、その費用は、上記(ア)のとおりの介護の内容からして、日額2万5,000円を認めるのが相当である。
したがって、上記37年間の介護費用は、日額2万5,000円×365日×(18.7605-12.4622)=5,747万1,987円である。
したがって、介護費用は、1億5,903万8,917円である。
⑧ 住宅改造費用 1,895万9,680円
被告の主張する介護用住宅の建築費である3,959万2,195万円よりも、上記の〈1〉ないし〈4〉の合計479万7,063円高額である4,438万9,258円を、介護用住宅を建築するのに必要な費用であると認めるのが相当である。
そして、前記認定のとおり介護用でない通常の住宅の建築費用が2,542万9,578円であるから、本件事故によりその差額である1,895万9,680円の住宅建築費用分の損害が発生したと認められる。
⑨ 車両改造費 286万2,212円
被害者の在宅介護生活における外出移動には車両の改造(車椅子ごと乗車可能な改造)が必要であること、改造車両の費用が516万4,144円、通常車両の費用が439万6,589円でありその差額は76万7,555円であることが認められる。
初回購入の1台分に加え、将来にわたり耐用年数6年ごとに買い替える必要があり、自宅介護の開始時からの平均余命である57年後までに買い替える回数は9回となる。
その合計費用は、76万7,555円×(1+0.7462+0.5568+0.4155+0.3100+0.2313+0.1726+0.1288+0.0961+0.0717)=76万7,555円×3.729=286万2,212円である。
⑩ 介護ベッド費用 375万1,673円
被害者の在宅介護生活のためには介護用ベッドが必要であること、関連器具を含めた1台分の費用は合計126万8,400円となること、在宅介護開始時の1台に加え、その後はその耐用年数の8年ごとに買い替える必要があり、平均余命の57年間に買い替える回数は7回となることが認められる。
以上によれば、介護ベット費用分の損害は、
126万8,400円×(1+0.6768+0.4581+0.3100+0.2098+0.1420+0.0961+0.0650)=126万8,400円×2.9578=375万1,673円
であると認められる。
⑪ 介護リフト費用 372万9,046円
被害者の在宅介護生活のためにはベッドリフト、浴室リフトが必要であること、関連器具を含めた各1台の費用は合計126万750円となること、在宅介護開始時の各1台に加え、その後はその耐用年数の8年ごとに買い替える必要があり、平均余命の57年間に買い替える回数は7回となることが認められる。
以上によれば、介護リフト費用分の損害は、126万750円×(1+0.6768+0.4581+0.3100+0.2098+0.1420+0.0961+0.0650)=126万750円×2.9578=372万9,046円である。
⑫ シャワーキャリー費用 329万8,070円
被害者の在宅介護生活のためにはバスキャリー(入浴用の車椅子)が必要であること、1台分の費用は47万8,800円となること、在宅介護開始時の1台に加え、その後はその耐用年数の3年ごとに買い替える必要があり、平均余命の57年間に買い替える回数は18回となる。
以上によれば、シャワーキャリー費用分の損害は、329万8,070円である。
⑬ 車椅子費用 407万4,336円
被害者の在宅介護生活のためには室内用と外出用の2台の車椅子が必要であること、1台分の費用は周辺器具を含めると46万5,990円となること、在宅介護開始時の各1台(計2台)に加え、その後はその耐用年数の5年ごとに買い替える必要があり、平均余命の57年間に買い替える回数は11回となることが認められる。
以上によれば、車椅子費用分の損害は、93万1,980円×4.3717=407万4,336円である。
⑭ 医療機器費用 436万8,757円
証拠(略)によれば、被害者の在宅介護生活のためには医療器具が必要であること、その合計額は少なくとも99万9,327円であること、在宅介護開始時の各1台に加え、その後はその耐用年数の5年ごとに買い替える必要があり、平均余命の57年間に買い替える回数は11回となることが認められる。
以上によれば、医療機器費用分の損害は、99万9,327円×4.3717=436万8,757円である。
⑮ 将来雑費 2,258万3,400円
証拠(略)によれば、被害者の在宅介護生活のためにはオムツなどの諸雑費が必要であること、その費用は月額にして23万7,975円であることが認められる。
在宅介護開始時における平均余命は57年であるが、上記の諸雑費の月額からすれば、月額10万円を前提に58年間の額として原告が算定した10万円×12月×18.8195=2,258万3,400円の将来雑費分の損害がある。
⑯ 慰謝料 3,130万円
・傷害慰謝料 330万円
・後遺障害慰謝料 2,800万円
⑰ 損害額合計 3億7,329万1,792円
⑱ 後記3のとおり既受領の障害基礎年金148万5,145円は過失相殺前に損益相殺することになるから、これを上記から控除して、残額は3億7,180万6,647円である。
このように、植物人間状態になってしまった場合に合計で3億7,000万円を超える損害が認定されました。
神戸地裁判決平成6年7月19日の事例
続いて、物損で高額な認定がなされた判決をご紹介いたします。
<事案の概要>
本件事故現場は片側二車線の名神高速道路下り線路上でした。
加害者の車は、本件事故直前、時速約100kmの速度で同道路下り線の走行車線内を東方から西方へ向け走行していましたが、事故現場において、同車両の左前方を走行していた普通乗用自動車の右後部に追突しました。
加害者の車はこの追突の後、前方に行って道路中央分離帯に乗り上げ、そのガードレールに衝突してさらにこれを突き破って暴走し、道路上り線の走行車線と路肩をふさぐ形で横転し、横転後、炎上しました。
このように、本件事故は加害者が誰かと衝突したわけではありません。
しかし加害者は、実は原告である会社から呉服や洋服を運搬するようにお願いをされていたのです。本件はこの会社から加害者に対して損害賠償請求がなされた事案でした。
<判決の概要>
① 女物式服関係 金4,589万4,070円 2124点
② 女物一般呉服 金2,040円 965点
③ 古着呉服一切 金7,797万2,940円 6215点
合計 金1億4,939万9,730円
① 紳士服 金1,692万9,020円 4605点
② 古着洋服一切 金242万4,420円 1381点
合計 金1,935万3,440円
① 毛皮(非課税品) 金845万8,500円 252点
② 毛皮(課税品) 金8,414万3,500円 534点
合計 金9,260万2,000円
総計 金2億6,135万5,170円
このように、単なる物損だけで2億6,000万円を超える損害額が認定されたのです。呉服などの高価なものばかりが積載されていたことが原因ですね。
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