共同不法行為とは。加害者が複数いる交通事故の損害賠償はどうなるのか。

慰謝料・損害賠償
共同不法行為とは。加害者が複数いる交通事故の損害賠償はどうなるのか。

交通事故の加害者と被害者は1人ずつとは限りません。たとえば、車が歩道にのりあげてしまい、何人もの通行人にぶつかってケガをさせてしまうことがあったとします。この場合は、被害者が複数いることになります。

また、1人の被害者が車にひかれたあとにさらに別の車が被害者をひいた場合を想定します。このとき、加害者は最初の車の運転手と二番目の車の運転手と2人いるということになります。

ここでは特に後者の加害者が2名以上いる場合の交通事故について、被害者は誰にどのように損害賠償ができるかということについて説明します。

目次
  1. 加害者が複数いる交通事故とは
  2. 共同不法行為
  3. 共同不法行為の場合は誰に損害賠償請求ができるのか
  4. タクシーと車の衝突の例へのあてはめ
  5. 求償権の行使
  6. 加害者のうち1名が死亡している場合の請求額はどうなるのか
  7. 共同不法行為の加害者の1人が逃げた場合や支払い能力がない場合
  8. まとめ

加害者が複数いる交通事故とは

加害者が複数いる交通事故とはどういったものがあるでしょうか。冒頭でも書きましたが、

  • 歩行者が車にひかれたあとに別の車にもひかれてしまった場合
  • 車同士が衝突して、その衝撃で1台がそばをとおっていた歩行者を引いてしまった場合

などが考えられます。 また、

  • 車にひかれて病院に運び込まれた被害者を治療中に医師が医療ミスをおかし、被害者を死亡させてしまう場合
  • 運転免許がないことを知りながら車を使わせて事故が起きた場合

などのケースもあります。

また、

タクシーに乗っていてそのタクシーが別の車と衝突事故を起こし、車に乗っていた人がケガをしてしまった場合

はどうでしょうか。

この場合はタクシー側も衝突車も加害者になることが考えられます。

共同不法行為

民法709条は、

故意または過失により他人の生命・身体・財産に損害を与えた者は、その損害を賠償する責任を負う

と定めています。これを不法行為といいます。

故意過失によって交通事故をおこしてしまって他人にケガをさせた場合、不法行為をおこなったということになります。そのため損害賠償責任を負うのです。

不法行為のバリエーションとして、複数の人がそれぞれの故意過失によって同じ被害者に損害を与えることもありえます。このような不法行為を、共同不法行為といいます。

「共同」というと、いかにも加害者たちが事前にしめしあわせ、ある人にともに不法行為をおこなったような印象を受けるかもしれません。

しかし、実は加害者同士には面識がある必要はありません。また、同じ被害者に損害が発生することについて、事前に共謀していたり共通認識を持っていたりする必要もありません。

共同不法行為の場合は誰に損害賠償請求ができるのか

民法719条は、

数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えた場合、連帯して被害者の損害を賠償する義務を負う

としています。また、同条は、

共同の行為者の誰が損害を加えたか明らかでないときも同様

としています。 つまり、被害者は、加害者の誰に対しても全額交通事故の損害賠償請求をすることができるのです

そして、加害者は「自分よりも別の加害者のほうに請求してくれ」という反論はできません。そのため一旦は認められた損害賠償金を全額被害者に支払う必要があります。

タクシーと車の衝突の例へのあてはめ

タクシーと車の衝突の例へのあてはめ

「加害者が複数いる交通事故とは」の項で加害者が複数いる事故の例をいくつか挙げてみました。

そのなかで、タクシーにのっていて別の車に追突されたことにより、タクシーに乗っていた人がケガをした場合を考えて見ましょう。

仮にケガをした被害者にまったく落ち度がなく、シートベルトもきちんとしていたとします。 事故の状況としては、タクシーにも追突してきた車にも前方不注意があったとすると、

タクシー側と追突してきた車側どちらも加害者

ということになります。この場合、被害者はタクシーに対しても追突してきた車に対しても損害賠償請求をすることができます。

仮に、自分が乗っていたタクシー側の過失割合が3割、追突してきた車側の過失割合が7割だったとしたらどうでしょうか。

答えは、 どちらの加害者の過失割合が高いかは、どちらの加害者に損害賠償請求するかには関係ありません

したがって、被害者はタクシー側にも追突してきた車にも自由に選んで請求ができるのです。そして請求された側の加害者は被害者に全額慰謝料を支払わなければなりません。

仮に被害者が自分が乗っていたタクシーに全額慰謝料を請求したとします。この場合、請求されたタクシー側は、被害者に対して、まずは損害賠償金を全額支払わなければなりません。

過失割合は保険会社が警察の現場検証などを参考に決めますが、明確な基準があるわけではなく当事者の交渉によっても上下します。

被害者に対して「この当事者の示談交渉がおわるまで待ってから過失割合に応じて請求しなさい」と求めるのはあまりにも酷ですよね。

事故直後から治療や通院は始まりますので慰謝料はなるべく早く支払ってほしいところです。そのため民法は各加害者に満額の支払を義務付けているのです。

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求償権の行使

前述のタクシーの例で、被害者が、自分が乗っていたタクシー側に慰謝料請求をして慰謝料100万円を満額支払ってもらったとします。

その場合、当然ですが、もう片方の加害者である追突した車側から重ねて慰謝料をもらうことはできません。

そのようなことが認められると二重取りになってしまうからです。 しかし、このままだとタクシー側に酷な結果になってしまいます。

そこで求償権というものが存在します。

共同不法行為の場合、片方の加害者が自分の不法行為への関与分を超えて賠償金を支払った場合、事後的に別の加害者に対して、その加害者の関与分を返してくれという請求をすることができます

たとえば、上述のタクシーの例ですと、被害者への慰謝料が100万円で、過失割合がタクシーと追突車で3:7の場合とします。

追突した車の運転者は100万円のうち70万円については責任があるということになります。

そのため、タクシー側としては、被害者に100万円支払ったあと、追突車に対して自分の責任である70万円を負担して払い戻してくれという請求ができるのです。

加害者のうち1名が死亡している場合の請求額はどうなるのか

複数の当事者が絡む交通事故では共同不法行為者全員が生存しているとは限りません。

では共同不法行為の場合で共同不法行為者のうち1人が死亡してしまっている場合はどうなるのでしょうか。

不法行為についての損害賠償金の支払債務は相続の対象になります。したがって、死亡した加害者の相続人は被害者に対する損害賠償金の支払債務を相続することになります。

そのため、被害者は生きている加害者と死亡した加害者の相続人のどちらにも損害賠償請求ができることになります

ただし、相続人は被相続人の死亡後、一定期間相続放棄をすることができます。

もし相続財産のほうが損害賠償金よりも少ない場合、相続放棄をすれば相続人はマイナス財産である借金を負わなくてよいことになります。

そのため、こういった場合は、被相続人の選択で損害賠償債務も相続財産も放棄するということが多いです。

この場合、残念ながら被害者は生きている加害者にのみ損害賠償請求をしていくことになります。

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共同不法行為の加害者の1人が逃げた場合や支払い能力がない場合

加害者のうちの1人が逃げたり、支払い能力がなかったりする場合はどうなるのでしょうか。 前述のとおり、被害者は加害者のうち誰にでも全額請求することができます。

したがって、加害者の1人が逃げたり支払い能力がまったくないという場合、その加害者から損害賠償金を取立てることが難しくても他の加害者に全額を請求できるのです

加害者側からみると求償権の行使が困難になるので、このような状態は困った状態です。しかし、被害者としては安心といえます。

まとめ

加害者が複数いる場合の交通事故の損害賠償請求についてイメージしていただけましたでしょうか。

加害者が複数いると、誰にどのように請求すればよいかなど権利義務関係が錯綜しがちです。

このような事故に巻き込まれた場合は、交通事故分野に強い弁護士に早めに相談することをおすすめします。

交通事故に強い弁護士なら、過失割合や加害者それぞれの資力、事故の状況などを踏まえ、「誰にいつどのようなタイミングで損害賠償請求をするのがもっとも被害者救済につながるか」を考えてアドバイスをしてくれることが期待できます。

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