知らないと1000万円以上の損!?交通事故の慰謝料相場と増額する方法。

交通事故では、車や荷物が損壊したり乗っていた人がケガをすることがあります。このとき「加害者に慰謝料を請求する」というのを聞くことがあるのではないでしょうか。
では交通事故の慰謝料とはどういうものなのでしょうか。また損害賠償と慰謝料はどう違うのでしょうか。
この記事では、交通事故における慰謝料がどういうものなのか、さらに慰謝料の金額相場や損をしないためのポイントについて説明します。
- 目次
交通事故における慰謝料
慰謝料とは
交通事故に遭うと、被害者は車両修理費や治療費など、さまざまな損害を被ります。 民法では、交通事故の被害者は加害者に損害賠償請求ができると規定します。
民法第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
慰謝料は、損害賠償のうち精神的な損害を補填するために支払われるものです。つまり、慰謝料は損害賠償のうちのひとつになります。
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交通事故の慰謝料相場
交通事故の慰謝料相場には下記の3つの基準があります。
自賠責保険基準
自賠責保険は車を運転する人すべてが加入を義務付けられている自動車保険で、強制保険ともいわれています。自賠責保険は被害者に対する最低限の補償を目的としています。
したがって、自賠責保険基準は3つの基準のなかでもっとも低額な金額となっています。
任意保険基準
任意保険は、自賠責保険と異なり任意で加入する自動車保険です。TVCMなどでよく耳にする自動車保険は、この任意保険のことです。
任意保険は自賠責保険だけではカバーできない損害を補填するために任意で加入します。任意保険基準は保険会社ごとに異なるうえに公開されていません。
任意保険基準は、自賠責保険基準と後述の弁護士(裁判所)基準の間の金額といわれています。しかし、実際は自賠責保険基準とあまり変わらない金額であることが多いようです。
弁護士(裁判所)基準
弁護士(裁判所)基準は、交通事故を弁護士に依頼した際、損害賠償金の計算に使用する基準です。
弁護士基準は過去の交通事故の判例を基にしているため、3つの基準のうち最も高額な基準です。弁護士基準は裁判所基準(裁判基準)と呼ばれることもあります。
まず、これら3つの基準をしっかりと頭に抑えておきましょう。
慰謝料の種類
交通事故の慰謝料は下記のように3種類あります。それぞれの慰謝料は「交通事故の慰謝料相場」の項で説明した基準ごとに金額が異なります。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)
入通院慰謝料は、交通事故でケガをして通院や入院をした場合に支払われます。これは、交通事故のために入通院することで被る精神的苦痛に対して支払われます。
自賠責保険基準の入通院慰謝料
自賠責保険基準の入通院慰謝料は下記で計算されます。
- 入通院慰謝料=4,200円/日×治療日数
この治療日数は下記の1、2のうち少ない日数を採用します。 -
- 治療期間(入院期間と通院期間の全日数)
- 実通院日数(入院期間+通院期間のうち実際に病院に通った日数)×2
交通事故では、ケガの状況により治療に時間がかかることもあります。このとき、治療にかかった全日数分の入通院慰謝料がもらえるのでしょうか。
実は自賠責保険基準の入通院慰謝料は120万円が上限となっていますので、注意が必要です。
弁護士基準の入通院慰謝料
弁護士基準の入通院慰謝料は、日弁連交通事故相談センター東京支部の「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)の慰謝料表を使用します。
慰謝料表には別表Ⅰと別表Ⅱがあります。通常の計算には別表Ⅰ、他覚症状のないむち打ち症や打撲など軽度のケガの場合は別表Ⅱを使用します。
別表Ⅰ
別表Ⅱ
入通院慰謝料計算例
例えば交通事故でむちうちになったとします。むちうちの場合、一般的に3か月ほど通院するケースが多くあります。また、通院のペースとしては、週に3回前後が多いようです。
この場合、自賠責保険基準と弁護士基準では以下のような計算になります。
自賠責基準
治療期間90日より実通院日数72日(3日/週×12週×2)のほうが少ない日数のため、治療日数は72日を採用します。
入通院慰謝料=4,200円/日×72日
よって自賠責保険基準のむちうちの入通院慰謝料は302,400円 となります。
弁護士基準
むちうちの場合、別表Ⅱをもちいます。
別表Ⅱの通院期間3か月の金額を読むと、弁護士基準のむちうちの入通院慰謝料は53万円となります。
以上のように、むちうちのような軽度のケガでも弁護士基準のほうが入通院慰謝料が高額になることがわかります。
また、いずれの場合でも入通院慰謝料の計算では入院期間と通院期間が重要になります。
加害者側の保険会社から「治療費を打ち切る」などと言われることもありますが、治療をやめてしまうと、治療日数が短くなり、適正な入通院慰謝料が支払われなくなってしまいます。
治療費の打ち切りを打診された場合であっても、主治医と相談し、治療が必要と判断された場合は治療を続けることが大切です。
なお、打ち切り後に治療費を自己負担した場合、正当と認められる治療費については保険会社に請求できますので安心してください。
後遺障害慰謝料
交通事故でケガをすると、場合によって後遺障害が残ることがあります。
後遺障害とは、これ以上治療をしても改善が見込めない状態(症状固定)後に、自賠責保険の等級認定を受けたものをいいます。
後遺障害が認定されると等級に応じた後遺障害慰謝料が支払われます。 後遺障害には要介護のものが1~2級、それ以外のものが1~14級の計16の等級があります。
基本的に、等級の数字が小さいものほど症状が重く、数字が大きくなるほど症状が軽くなります。
表のように、後遺障害慰謝料は認定された等級によって金額が異なります。したがって適正な後遺障害慰謝料を受け取るには、正しく等級認定を受けることが大切です。
また、後遺障害慰謝料は算出基準によっても金額が変わります。最も症状が重い第一級を例に見てみると、弁護士基準の金額は自賠責保険の金額より一千万円以上高額な金額になります。
交通事故のケガで多いとされるのが「むちうち」です。むちうちで後遺障害が認定される場合、14級9号あるいは12級13号ということが多いです。
むちうちは他覚的所見に乏しく後遺障害を認定しにくいと言われています。しかし、場合によって前述のように後遺障害が認定されることもあります。
あきらめずに弁護士に相談してみましょう。
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死亡慰謝料
交通事故では残念ながら被害者が死亡することもあります。
本来、慰謝料とは被害者本人が被った精神的苦痛に対して支払われるものです。しかし、死亡事故では被害者本人は死亡しているため慰謝料請求ができません。
死亡事故の場合は被害者の相続人が被害者の慰謝料請求権を相続するという形をとります。
また、被害者遺族も被害者が亡くなったことで精神的苦痛を被ります。そのため、被害者遺族は下記の2つの慰謝料を請求することになります。
自賠責保険基準
自賠責保険基準では、上記の二つの慰謝料それぞれに対して以下のように金額が決められています。
なお、死亡した被害者に被扶養者がいる場合は、上記の金額に200万円加算されます。
弁護士基準
一方、弁護士基準は自賠責保険基準のように被害者本人と遺族の慰謝料を分けて計算するわけではなく、2つを合わせた金額で支払われます。
弁護士基準の死亡慰謝料は、死亡した被害者の立場によって金額が下記のように異なります。
表中の「一家の支柱」とは、家族の生計を維持しているのが主に被害者の収入である場合をいいます。
日弁連交通事故相談センター東京支部の「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」は毎年見直しがおこなわれており、2016年版では死亡慰謝料の改定がおこなわれています。
上記金額は改定された金額を記載しています。
交通事故の慰謝料を増額する方法
弁護士に相談する
ここまで、交通事故の慰謝料の種類と相場について説明しました。
交通事故では、通常加害者側の保険会社と示談交渉をおこないます。このとき、保険会社は会社独自の任意保険基準で慰謝料を算出します。
任意保険基準は会社によって異なりますが、場合によっては自賠責保険基準と変わらない金額のこともあります。提示された慰謝料金額で示談交渉を成立してしまうと、適正な慰謝料が支払われないことになります。
このとき、弁護士に示談交渉を依頼すれば、慰謝料を弁護士基準で計算してもらえるため、適正な慰謝料金額で示談交渉をおこなうことができます。
また、治療費の打ち切りを打診されたときや後遺障害の等級認定に関しても弁護士に相談することで適切なアドバイスが受けられるため、慰謝料の増額が期待できます。
代表的な慰謝料増額事由とは
交通事故の慰謝料は増額事由に関する明確な基準はありません。したがって、一般的には相場以上に慰謝料を増額することは難しいと言わざるを得ません。
そのなかでも、下記のように加害者に重過失がある場合には増額される場合もあります。
このように、相場より慰謝料を増額できるのは特殊な場合に限られるのが現状です。
まとめ
交通事故の慰謝料について解説しました。 適正な慰謝料を獲得するには、弁護士基準で慰謝料を計算することが大切です。
弁護士基準で慰謝料を計算するには弁護士への依頼が必要です。 最近では無料相談をおこなっている弁護士事務所もありますので、まずは相談してみることをおすすめします。
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