保険会社を味方と思ってはダメ!交通事故の示談で知っておくべき注意点

交通事故に遭ったら、まず当事者同士で示談交渉をおこないます。しかし、車を運転するほとんどの人が任意保険に加入しているため、被害者は加害者の加入する保険会社と示談交渉をおこなうのが一般的です。
保険会社の担当者は被害者に対して親身になってくれることがあります。示談交渉は面倒なものです。
そのため、被害者のなかには「この人は私の味方なんだな。言うとおりにしていいんだな」と思う人もいるかもしれません。では、本当に被害者は保険会社を信用してしまっていいのでしょうか。
ここでは、交通事故の示談交渉での保険会社の対応などを紹介し、被害者が不利にならないためのポイントを説明します。
- 目次
一般的な示談の進め方
交通事故に遭ったら示談交渉をおこないます。交通事故の示談交渉では損害賠償金について話し合うことになります。
示談交渉は問題の当事者同士でおこなうものです。交通事故の場合、当事者は加害者と被害者ですので、加害者と被害者が示談交渉をおこないます。
被害者は加害者の保険会社と示談交渉をするのが一般的
交通事故では加害者と被害者が示談交渉をおこなうと説明しました。しかし、実際は被害者が加害者の加入する保険会社の担当者と示談交渉をおこなうことがほとんどです。
自動車を運転する人は自賠責保険に加入することが義務付けられています。自賠責保険は最低限の補償しかできません。
したがって、ほとんどの人は自賠責保険で補償できない部分をカバーするため、任意保険にも加入しています。任意保険には「示談代行サービス」がついていることが多くあります。
このため交通事故では、被害者が加害者の加入する保険会社の担当者と示談交渉をおこなうことが多くなります。
では、車同士の交通事故であり、当事者双方が任意保険に加入している場合はどうなるのでしょうか。このとき、当事者双方に過失がある事故の場合、双方が加入する保険会社同士で示談交渉がおこなわれます。
保険会社は親身に被害者の対応をしてくれることがある
加害者の保険会社のなかには、親身になって被害者の対応をしてくれる担当者も多くいます。
実は「被害者を信頼させて早期に示談を終えてしまいたい」という理由で保険会社が親身になることがあるのです。 決して「この人は被害者の味方なんだな」と勘違いしてはいけません。
保険会社が示談交渉でとる3つの対応
適正な金額より低い損害賠償金額を提示してくる
交通事故で示談交渉が成立すれば、加害者から被害者に損害賠償金が支払われます。損害賠償金には、慰謝料などの人的損害も含まれます。
さらに後遺障害が認定されたり、被害者が死亡した場合は後遺障害慰謝料や死亡慰謝料も支払われます。これらの慰謝料金額には以下の3つの算出基準があります。
保険会社と示談交渉をおこなう場合、保険会社は任意保険基準で慰謝料を計算します。
任意保険基準は非公開ですが、一般的には自賠責保険基準と弁護士基準の間の金額と言われています。しかし、実際は自賠責保険基準と変わらないほど低額なこともあるようです。
このとき、弁護士に示談交渉を依頼すれば、弁護士基準で慰謝料を計算して示談交渉をおこないます。弁護士基準は過去の判例を元にしているため、最も妥当で高額な基準です。
また、仕事をしている人が交通事故に遭うと休業損害が支払われます。休業損害は主婦などの家事従事者にも認められた損害です。
しかし、保険会社のなかには「家事従事者は実収入がない」などといって休業損害を認めないこともあるようです。
このような場合も、弁護士に依頼すれば適正な休業損害を獲得しやすくなります。
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症状固定・治療費の打ち切りを勧める
被害者がけケガをすると、加害者側の保険会社が治療に必要な入通院費などの支払いをしてくれます。
しかし、交通事故から一定期間が経過すると、保険会社から「そろそろ症状固定をして通院を終了してください」と言われることがあります。
症状固定とは治療を続けてもそれ以上症状の改善が望めない状況をいいます。保険会社が支払い義務を負う治療費は、原則として症状固定までの治療費です。
したがって、保険会社は被害者に早く症状固定をしてもらい、治療費を打ち切りたいと考えているのです。
また、示談交渉を始めるには、交通事故で発生した損害がすべて確定している必要があります。
そのため、「症状固定を勧め、示談交渉を早く終わらせたい」という保険会社の意図もあります。
ただし、症状固定の判断は保険会社がおこなうものではなく主治医が判断するものです。
保険会社から症状固定を勧められ、治療費を打ち切られたからといって、治療を終了しなければならないことはありません。今後も治療が必要かどうかは主治医と相談して決めましょう。
では、主治医と相談した結果、保険会社からの治療費の打ち切り後も通院をする場合は治療費をどう支払うのでしょうか。
この場合、一旦被害者自身で治療費を負担し、症状固定後に保険会社に治療費を請求することになります。
被害者自身で治療費を負担して通院する場合、健康保険を利用すれば治療費の負担を軽減できます。
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被害者の過失割合を大きくする
被害者が追突事故などの被害にあった場合、通常は被害者に過失がありません。
しかし、事故の状況から「被害者にも一定の過失がある」と判断された場合、被害者と加害者の過失割合を争うことがあります。
被害者にも過失があると判断された場合、被害者に支払う損害賠償金額から被害者の過失割合分を減額した金額を保険会社が支払います。
このとき、保険会社は保険金の支払い額を少なくするために「被害者にも過失があった」または「被害者の過失割合が大きい」と主張することがあるのです。
過失割合は典型的な事故であれば裁判例をベースとした相場があります。しかし、事故態様によって相場がないケースや例外に当たるケースもあります。
したがって、保険会社の主張する過失割合を鵜呑みにしてはいけません。過失割合は専門的で複雑なのです。過失割合で加害者と争う場合は弁護士に相談することが大切です。
保険会社を信用してはいけない?
「保険会社の担当者が被害者に親身な対応をすることがある」と説明しました。そのため「この人は被害者の味方なんだな」と勘違いする場合があります。
では加害者側の保険会社は本当に被害者の味方なのでしょうか。
保険会社は加害者に代わって被害者に保険金を支払う義務があります。つまり保険会社にとって「お客さまは加害者」です。
その意味で保険会社は被害者ではなく加害者側の味方といえるでしょう。
保険会社と示談交渉するときのポイント
感情的にならず冷静になる
感情に任せてこちらの要望を押し付けてしまうと、抵抗してしまうのが人間の心理です。
また、こちらが冷静でないと見なされると、そこに漬け込んで被害者側に不利な条件を提示する保険会社もあります。
相手がどんな態度で来ても、感情的にならずに常に冷静でいることが大切です。
必要以上に保険会社を恐れすぎない
保険会社は示談交渉に関して専門的な知識を持っていることは確かです。しかし、加害者が任意保険に加入しているということは、ある程度の支払い能力があるということです。
ですから、被害者が冷静に対応して正当な損害賠償額を請求すれば、相応の金額を支払ってもらえる可能性が高くなります。
保険会社のいいなりにならない
保険会社が被害者側に不利な条件を提示してきても、いいなりになってはいけません。異論がある場合は、それを証明する材料を十分に準備しておくことが必要です。
また、保険会社が被害者に不利な条件を提示した場合、「なぜそのような提示内容なのか」などの理由を明確にすることも大切です。
症状固定は保険会社が決めるものではない
保険会社は症状固定や治療費の打ち切りを勧めることがあると説明しました。症状固定は被害者の意見を聞いて主治医が判断するものです。保険会社が決めるものではありません。
保険会社から症状固定を勧められた場合は、まず主治医に相談しましょう。今後も通院が必要かどうかは主治医と相談して決めましょう。
それでも解決しない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士などの専門家に相談する
示談交渉では、保険会社が被害者に不利な損害賠償の内容を提示することがあります。ですから、被害者が保険会社と直接やりとりする際には、以下の2つの点に注意しましょう。
交通事故の示談交渉は、被害者にもある程度の知識が必要です。しかし、示談交渉には法律などの専門知識が必要な場合もあり一般人が保険会社と互角に戦うのは難しいです。
したがって、交通事故の示談交渉では交通事故に強い弁護士に相談することが大切です。
弁護士に相談することで交通事故に関する専門知識が得られるうえ、被害者の精神的な負担を軽減することにも繋がります。
被害者に過失がない場合は弁護士に依頼すべき
車同士の事故で当事者双方に過失がある場合、保険会社同士で示談交渉をおこなうと説明しました。
では、被害者が任意保険に加入していないときや被害者の過失がゼロの場合はどうなるのでしょうか。
この場合、被害者は自分で加害者側の保険会社と示談交渉をおこなうことになります。
被害者が任意保険に未加入の場合に自分で交渉しなければならないことについてはすぐ理解して頂けると思います。
では、なぜ被害者に過失がない場合、保険会社が示談交渉をおこなえないのでしょうか。
実は、弁護士法では 「弁護士以外の者が報酬を得る目的で他人のために法律事務をおこなうこと」 を禁止しています。
被害者に過失がある事故であれば、保険会社は被害者(契約者)の代わりに損害賠償金を加害者に支払う義務があります。これは自社の義務のためであって「他人のため」ではありません。
しかし、被害者に過失がない事故の場合、被害者の保険会社は損害賠償金を加害者に支払う必要がありません。
そのため、被害者側に過失がない場合、被害者の保険会社が示談交渉を代行できないのです。
このとき、保険会社から提示された金額が妥当な金額かどうかを被害者が自分で判断しなれればならないのです。
しかし、被害者は専門知識が乏しいことが多く、自分だけで提示額が妥当か判断することは困難です。少しでも提示された金額に納得できない場合は安易に示談に応じてはいけません。
一度示談を成立させてしまうと、やり直すことは困難です。このような場合、交通事故に強い弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に依頼することで、保険会社から提示された示談金額が妥当なものかどうか判断してもらえます。また、弁護士基準で慰謝料を計算してもらえるため、損害賠償金額の増額が期待できます。
被害者にも過失があれば保険会社が示談交渉を代行できる
車同士の事故であり当事者双方に過失がある場合、双方が任意保険に加入していれば、通常は保険会社同士で示談交渉をおこなうと説明しました。
では、被害者は自分の加入する保険会社に任せっぱなしでいいのでしょうか。
このとき、被害者と加害者が同じ保険会社だった場合は注意が必要です。このような場合、保険会社同士の馴れ合いが起きる可能性があるのです。
保険会社の馴れ合いが起きるとどうなるのでしょうか。
このとき、いずれの担当者も「自社の損失を減らす」という目的があります。
これにより、加害者側の担当者が低額な損害賠償金額を提示してきても、被害者側の担当者が被害者に対して適当にごまかしてしまうことがあるのです。
ですから、保険会社同士の示談交渉だからといって全てを保険会社に任せてはいけません。被害者自身も保険会社の提示した損害賠償金額が妥当かどうか調査することが大切です。
ただし、相手は交通事故の示談交渉に慣れた保険会社です。困ったときは交通事故に強い弁護士に相談しましょう。弁護士は被害者の味方となってくれますので、安心して相談できます。
まとめ
交通事故の示談交渉での保険会社の対応について説明しました。保険会社は保険金を支払う立場ですので、加害者の味方であって被害者の味方とはなりません。
また、追突事故のように被害者の過失がゼロの事故や任意保険未加入の場合、被害者は自分で示談交渉をおこなう必要があります。
示談交渉に精通した保険会社を相手に有利な交渉をすることは困難です。このような場合は交通事故に強い弁護士に相談することが大切です。
弁護士なら示談交渉を有利に進められる可能性が高くなります。最近では相談料や着手金が無料の事務所もあります。このようなところを利用するのもいいでしょう。
また、自動車保険に弁護士費用特約を付帯している場合、弁護士費用の負担もないため大変便利です。
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