交通事故の加害者が取るべき対応とやってはいけないこと

車を運転する限りどんな人でも交通事故の加害者になる可能性があります。また重大事故であれば損害賠償だけではなく行政上・刑事上の不利益まで被る可能性があります。交通事故の加害者が余計な不利益を回避するためには、日頃から対処法を知っておく必要があります。では交通事故の加害者になってしまったらどのような対応をとればいいのでしょうか。本記事では交通事故の加害者になった場合に取るべき対応や、注意すべきポイントについて詳しく説明します。なお、本記事は加害者側に立った記事となっております。被害者が交通事故の現場で取るべき対応については、「交通事故の現場で被害者が損しないための初期対応完全ガイド」に詳しく解説をしてありますので参考にしてください。
- 目次
加害者が事故現場で取るべき4つの対応
交通事故を起こしてしまったら、誰もがパニックになって、どのように対応したらいいのかわからなくなってしまいます。
このとき加害者としての対応を誤ると刑事責任を負うこともあります。
交通事故の加害者が事故現場で取るべき対応について以下で説明していきます。
被害状況の確認
交通事故を起こしたら、すぐに自動車を停めて車から降り被害状況を確認しましょう。
事故現場が道路の中央だったり、すぐに車を停められない場合は、路肩などほかの車の運行の妨げにならないような場所まで車を動かすことも大切です。
交通事故を起こすと免許の点数が心配で「逃げてしまいたい」という気持ちが働くこともあります。
しかし、交通事故を起こしたにも関わらず、その場から立ち去ってしまうと「当て逃げ」、被害者がケガをしたり死亡している場合は「ひき逃げ」になってしまいます。
加害者が現場から逃げてしまうと、結果的に刑事責任が重くなり免許の点数も大きく加算されてしまうのです。
交通事故を起こしたら必ず車を停めて被害状況を確認しましょう。
負傷者の救護
被害状況を確認した結果、負傷者がいた場合は救護をおこなわなければなりません。これを救護義務といいます。
もし被害者が危険な場所にいる場合は道路脇など安全な場所に移動させましょう。そのあと救急車を呼び、応急措置をおこないます。
もし交通事故の加害者が負傷者の救護を怠った場合、「救護義務違反」となり刑事罰や行政処分の対象となります。
危険防止措置
交通事故では二次被害が起こることがあります。したがって加害者は道路上の危険を防止する措置をとる義務があります。このことを危険防止義務といいます。
危険防止義務を怠った場合にも罰則があります。二次被害の発生を予防するため、必要に応じて後続車両の誘導をおこないます。発煙筒や三角表示板なども利用して事故があったことを後続車両に知らせましょう。
ただし交通事故では事故現場を警察が確認します。二次被害の心配がない場合は勝手に片づけたりせず、周囲に注意を促す程度に留め、現場の状況をそのままにしておきましょう。
警察への通報
交通事故を起こしたら、事故の程度に関わらず必ず警察に報告しなければなりません。救護措置や危険防止措置が済んだらすぐに警察に連絡しましょう。
警察に報告すると免許の点数が加算されたり罰則が適用される可能性があります。そのため加害者のなかには警察に報告しない人もいます。
しかし、このようなことをすると道路交通法違反となり罰則が適用されます。必ず警察を呼びましょう。
交通事故を起こして警察に報告する主な内容は下記となります。
✔ 交通事故の発生日時と発生場所
✔ 死傷者の数と負傷者のケガの状況
✔ 損壊したもの、および損壊の程度
✔ 事故車両の積載物
✔ 緊急措置の内容
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加害者が事故現場でやってはいけない3つのこと
ここまで交通事故の加害者が事故現場で取るべき対応について説明しました。
一方、交通事故では加害者がやってはいけないこともあります。以下で詳しく説明します。
不当な要求に応じてはいけない
交通事故の加害者が任意保険に加入している場合、加害者の加入する保険会社と被害者で示談交渉をおこないます。
では加害者が任意保険に加入していない場合はどうなのでしょうか。
この場合、加害者は自分で被害者と示談交渉をおこなうことになります。
このとき、被害者のなかには不当に高い金額を請求してくる人もいます。しかし加害者だからといってこのような不当な請求にすべて応じる義務はありません。
もし不当に高い金額を請求をされる場合は弁護士に相談しましょう。
お金を払ってはいけない
交通事故現場では絶対に被害者にお金を支払ってはいけません。お見舞金などを支払うのもやめましょう。
加害者になると、被害者に誠意を示したい一心で「お見舞金などを渡したい」と思うこともあるでしょう。
しかし、下手に現金を手渡すと「この金額で済むと思うのか」と思われ、逆効果となる可能性もあります。
また加害者としては示談金のつもりでお金を支払ったとしても、被害者が金額に納得しなければ、結果的に保険会社から損害賠償請求されてしまいます。
つまり加害者が事前に被害者にお金を払ったからといって、保険金から事前に支払った金額が差し引かれるかどうかわからないため払った分だけ加害者が損をする可能性もあります。
もし任意保険に加入している場合は、損害賠償だけではなくお金に関するすべてのことを保険会社に任せるようにしましょう。
もし被害者が難癖をつけてくる場合は会話を録音しておくといいでしょう。
念書を書いてはいけない
交通事故の加害者になってしまったら、念書を書くのは絶対にやめましょう。
被害者はどのような人かわかりません。念書を盾に取り不当な要求をする可能性もあります。
事故現場で被害者あるいは加害者のどちらかから「念書を書いてこのことは終わりにしよう」という話になったとします。
その後被害者が「やっぱり警察に連絡しよう」と警察に連絡する可能性だってあります。こうなると加害者は警察への報告義務違反とみなされてしまいます。
もし被害者から念書を書くように迫られても「交通事故の示談交渉は保険会社を介しておこないます」ときっぱり断るようにしましょう。
示談交渉で加害者がするべきこと
交通事故直後は当事者のどちらが加害者なのかわからない場合もあります。そのような場合は「安易に謝ってはいけない」といわれています。
しかし、追突事故のように明らかにこちらに過失がある場合は被害者に対して誠意を見せる必要があります。
例えば交通事故直後の状況確認の際に、
「ケガはないですか?」
「車は動きますか?」
などと被害者を気遣い、声をかけるのも大切です。
保険会社に任せっぱなしにしない
交通事故の加害者が任意保険に加入している場合、加害者の加入する保険会社が被害者と示談交渉をおこないます。
しかし被害者への対応をすべて保険会社に任せたままでいいのでしょうか。
こちらが加害者であることが明白な場合は、謝罪やお見舞いなど被害者に対して誠意ある対応を取りましょう。
「謝罪の言葉がない」など加害者の対応に誠意が見られない場合、被害者側の処罰感情が強くなり刑事告訴される可能性もあります。
保険会社は刑事責任に関与しないため、このような場合は弁護士に依頼する必要があります。
お見舞いに行く場合の注意点
お見舞いは加害者の義務ではありません。しかし、明らかにこちらに過失がある場合は、お見舞いに行って誠意を伝えるべきでしょう。
では具体的にいつお見舞いに行くのがいいのでしょうか。
入通院や治療など被害者にもさまざまな都合があります。被害者の都合を最優先に考えましょう。
お見舞いに行く際は事前に被害者に連絡をして、都合のよい日時を確認してから行くようにしましょう。
お見舞いの際はトラブルを避けるためにも絶対に現金を渡してはいけません。お見舞いに行くなら現金ではなくお見舞いの品を持参しましょう。
お見舞いの品はお花や菓子折り、フルーツなどが一般的です。食品は後々トラブルを招く可能性もありますので、お花がいいでしょう。
保険会社は刑事上の対応をしてくれない
任意保険に加入していたとしても、保険会社は刑事責任には対応しません。
交通事故の被害者は、捜査機関に対して「加害者に厳罰を求める」と供述していることが多くあります。
このとき、弁護士に依頼して被害者から嘆願書を入手することが重要になります。
嘆願書とは、被害者が加害者の処分を軽くするように裁判が始まる前に警察や検察に提出する書類です。
被害者は加害者に厳罰を求めるのが通常ですから、簡単に嘆願書を書くはずがありません。
刑事事件に強い弁護士であれば、適切な対応で嘆願書を入手し被害者の供述を緩められる可能性が高くなります。その結果、不起訴処分や起訴された場合であっても執行猶予になる可能性が高くなります。
刑事罰を軽くする方法については以下の記事を参考にしてください。
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加害者が弁護士に相談するメリット
加害者側が任意保険に加入していない場合、自分で示談交渉をおこなう必要があります。
しかし、加害者は交通事故を起こしたことでパニックになって冷静な判断ができない場合もあります。
また被害者側の被害感情が大きい場合、加害者が直接被害者に連絡を取ろうとしても応じてもらえないことがあります。
さらに交通事故では刑事責任が発生する可能性があります。保険会社は刑事責任に対応しないため、加害者が自分で対応する必要があるのです。
加害者が任意保険に加入している場合、保険会社の選任した弁護士が就くこともあります。しかし保険会社と提携する弁護士は損害賠償を軽くすることを目的としています。
したがって、加害者の行政上や刑事上の責任については対応しないのが一般的です。
以上を踏まえると、交通事故の加害者になったときは加害者が自分で選んだ弁護士に依頼することが重要になります。
弁護士に示談交渉を依頼すれば、加害者が直接交渉するよりもスムーズに進む可能性があります。
弁護士には専門分野があります。弁護士を選ぶ際は刑事事件に強い弁護士を選ぶようにしましょう。
加害者側の弁護士費用は誰が払う?
保険会社が選任した弁護士については保険会社が弁護士費用を負担します。
では加害者が自分で弁護士を選んだ場合、弁護士費用は誰が負担するのでしょうか。
原則として加害者が自分で弁護士を選んだ場合、弁護士費用はすべて自己負担になります。
加害者は弁護士費用特約が使えるのか
加害者が加入している任意保険に弁護士費用特約を付けている場合があります。
弁護士費用特約は、交通事故の被害者が示談交渉をする際に必要な弁護士費用を保険会社が負担してくれる特約です。
では加害者の場合、弁護士費用特約を使って弁護士費用を保険会社に負担してもらえるのでしょうか。
弁護士費用特約とは「交通事故の被害者が示談交渉をする際に」保険会社が弁護士費用を負担する特約です。
被害者に過失がない事故の場合、加害者は被害者に損害賠償を請求できないため、加害者は弁護士費用特約を利用できません。
ただし、被害者にも過失がある交通事故の場合、加害者が被害者に対して損害賠償請求する際の弁護士費用については、弁護士費用が一部補償される場合もあります。
まとめ
交通事故の加害者は、損害賠償だけではなく場合によって行政上・刑事上の不利益まで被る可能性があります。
余計なトラブルを回避するためにも、交通事故の加害者になった場合に取るべき対応や、注意すべきポイントを知っておくことが大切です。
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