交通事故の過失割合とは?損をしないために知っておくべき6つのポイント

過失割合
弁護士監修
交通事故の過失割合とは?損をしないために知っておくべき6つのポイント

交通事故で被害者になると、加害者に対し損害賠償金の請求をすることができます。


そのとき、被害者の「過失割合」が非常に重要です。過失割合が高くなると、賠償金の金額を大きく減額されてしまうからです。


高額な賠償金の支払いを受けるためには、過失割合を小さくしなければなりません。過失割合は、どのようにして決定するのでしょうか?


なるべく過失割合を小さくして、賠償金を増額する方法についても押さえておきましょう。


今回は、交通事故の「過失割合」の基本的な知識と損害賠償金に与える影響、賠償金の増額方法や注意点などを網羅的に解説します。

目次
  1. 過失割合とは
    1. 交通事故の責任を加害者と被害者に割り振る方法
    2. 過失相殺とは
    3. 過失相殺の例
  2. 過失割合の基準は?
  3. 過失割合は基準通りになるとは限らない!
  4. 過失割合を調べる方法
    1. 判例タイムズで確認
    2. 交通事故の赤い本・青い本で確認
    3. 弁護士に聞く
  5. 基本の過失割合と修正要素
  6. 過失割合を低くして賠償金を増額させる方法
    1. 判例タイムズの基準を使って自ら交渉する
    2. 弁護士に示談交渉を依頼する
  7. まとめ

過失割合とは

1-1.交通事故の責任を加害者と被害者に割り振る方法

交通事故後、自分の保険会社の担当者が相手の保険会社との間で「ロクヨン」とか「ナナサン」などという話をしているのと聞いたことがないでしょうか?


これは、被害者と加害者の過失割合のことを話し合っているのです。過失割合とは、交通事故の結果に対する被害者と加害者の責任の程度です。


交通事故が起こったとき、多くのケースでは加害者だけではなく被害者にも過失が認められます。


こちらが交通ルールを守って走行しているところに加害者が横からぶつかってきたようなケースでも、被害者に一定の過失があると言われてしまうのです。


交通事故では、被害者の過失が0という事案はかなり珍しいです。そして、被害者側にも過失がある以上、加害者との過失の割合を決めなければなりません。それが過失割合です。


過失割合は、合計で100%となるようにして被害者と加害者の過失の割合を決定します。


たとえば、加害者の責任が非常に重い場合には、加害者と被害者の過失割合は90:10などになりますし、被害者にもある程度責任があるだろうというケースでは、加害者と被害者の過失割合が70:30などになります。

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1-2.過失相殺とは

それでは、このような過失割合は何のために決定しているのでしょうか?


それは「過失相殺」を行うためです。過失相殺とは、当事者の過失割合に応じて、請求できる損害賠償金の金額を減額することです。


つまり、被害者に過失があると、その割合に応じて加害者に対して請求できる賠償金の金額を減らされてしまうのです。


被害者が加害者に賠償金を請求できる根拠は、「損害賠償請求権」という権利です。


ここで、被害者にも損害発生についての責任があるなら、被害者にも相応の負担をさせるべきということになります。


そこで、被害者の過失によって損害が生じたといえる金額については、賠償金額を減額することによって当事者間の公平をはかっているのです。

 

1-3.過失相殺の例

過失割合にもとづいて過失相殺が行われると、具体的にどのようなことが起こるのでしょうか?以下で、具体例を確認してみましょう。


たとえば、交通事故に遭って3,000万円分の損害が発生したとします。このとき、被害者の過失割合が0であれば、3,000万円全額を支払ってもらうことができます。


しかし、被害者の過失割合が1割なら、1割減の2,700万円しか請求できなくなります。


被害者の過失割合が2割なら、2割減の2,400万円、過失割合が3割なら、3割減の2,100万円しか請求できなくなってしまうのです。


このように、被害者の過失割合が高くなると、加害者に請求できる賠償金の金額がどんどん減らされてしまうので、被害者にとっては非常に大きな不利益があります。


被害者が加害者の保険会社と示談交渉を進めるときには、自分の過失割合をなるべく小さくすることが大切です

過失割合の基準は?

それでは、過失割合はどのようにして決めているのでしょうか?


実は、交通事故の過失割合は、ケースごとに一定の目安となる基準が定まっております。そこで、同じような交通事故であれば、同じ過失割合が認定されます。


同じような交通事故なのにケースによって過失割合が異なると、不公平になりますし、当事者も納得できなくなるからです。


たとえば、同じように後ろから追突されたのに、Aさんの場合は過失割合が0で、Bさんの場合は過失割合が10%だから賠償金が1割減になる、などというと、Bさんは納得できないですよね?


そうだとすると、過失割合の基準というのは、どのような基準なのかが問題です。これについては、裁判所が採用している過失割合の認定基準があります。その基準は、これまでの判例や専門家による研究によって作られた基準です。


この基準は自動車対自動車の事故、自動車とバイクの事故、自動車と自転車の事故、自動車と歩行者の事故などの類型に分けられています。


さらにそれぞれの類型で信号機のある交差点上での事故、信号機のない交差点上での事故、一方通行違反の事故、三叉路の事故など、ケースごとに基準となる過失割合が細かく定められているのです。


そこで、交通事故に遭ったときには、自分のケースをこの過失割合の認定基準にあてはめると、適切な過失割合を知ることができます。


裁判をしたときには、この過失割合の基準によって、それぞれの当事者の過失割合が認定されます。

過失割合は基準通りになるとは限らない!

過失割合に法律的に決まった基準があるのなら、相手の保険会社と示談交渉をするとき、必ずこの基準によって、双方の過失割合が決定されているのでしょうか?


実は、そうはなっていないので、問題があります。相手の保険会社は、最終的に決まった賠償金を被害者に対して支払わなくてはなりません。


そこで、なるべく支払う金額を減額しようとしてきます。被害者の過失割合が上がると、相手の保険会社が支払う金額が低くなるので、相手の保険会社にとっては有利です。


被害者は、通常交通事故の過失割合についての知識など持ち合わせていません。


そこで、相手の保険会社は、被害者の無知につけ込んで、基準より大幅に高い過失割合を被害者側に押しつけてくることが多いのです。


被害者が自分で相手の保険会社と示談交渉をしていると「あれ?こんなに過失割合が高いの?」と感じることがありますが、それは、相手が基準を無視して不当に高い過失割合を押しつけているからかもしれません。


そんなとき、何も気づかずに相手の言うままに高い過失割合を受け入れてしまったら、大きな損失を被ることになってしまいます。

過失割合を調べる方法

相手の保険会社と示談交渉をしていて、相手の主張する過失割合に納得できない場合には、まずは自分のケースで適切な過失割合の基準を知る必要があります。


それでは、過失割合はどのようにしたら調べることができるのでしょうか?

 

4-1.判例タイムズで確認

有名なのは、「判例タイムズ」という雑誌で確認する方法です。判例タイムズとは、1948年から刊行されている非常に古い歴史を持った法律雑誌です。


これの別冊で、不定期に交通事故の過失割合認定基準についての本が刊行されています。現在最新のものは、2014年7月4日に刊行された「別冊判例タイムズ38号[全訂5版]」です。


表題は「民事交通訴訟における過失相殺の認定基準」というものです。判例タイムズは、判例タイムズ社のウェブサイトからネット通販でも購入することができます。


別冊判例タイムズに過失割合の基準が掲載されていることは非常に有名です。そこで、ここで掲載されている過失割合の認定基準のことを「判例タイムズの基準」ということがあります。


今後、どこかで「判例タイムズの基準」という言葉を目にしたときには、今回ご紹介した過失割合の法律的な基準だと理解すると良いです。

 

4-2.交通事故の赤い本・青い本で確認

適切な過失割合を知りたいとき、判例タイムズを購入する以外にも方法があります。それは、交通事故の赤い本青い本という本によって確認する方法です。


交通事故の赤い本とは、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」という本で、日弁連交通事故センター東京支部から発行されています。表紙が赤いので、赤い本と言われます。


交通事故の青い本とは、「交通事故損害額算定基準」という本で、日弁連交通事故相談センター本部から発行されています。表紙が青いので、青い本と呼ばれます。


どちらにも交通事故の損害賠償に関する専門的な内容が詳しく掲載されていて、中に過失割合の認定基準も載っています。別冊判例タイムズと同じ内容です。


こちらについても、日弁連に申込みをすると、郵送でも購入することができます。

 

4-3.弁護士に聞く

判例タイムズや赤い本・青い本を見ると、ケースごとの過失割合が載っているので、過失割合を知ることはできるのですが、素人が見ても正確に読み解くのが難しいことがあります。


自分の場合にどのケースがあてはまるのかがよくわからないこともありますし、修正要素(次の項目で説明します)が適用されるかどうかの判断ができないこともあるでしょう。


そんなときには、弁護士に聞いて確認する方法がもっとも確実です。弁護士は、過失割合の認定基準についてもとても詳しいですし、多くのケースを解決しているので、実務的な感覚も持っています。


依頼者ごとに適切な過失割合を算出して、ケースごとの適切な過失割合を認定して教えてくれるでしょう。


また、依頼者が希望したら、該当する過失割合のページをコピーしてくれるので、保険会社と交渉する場合などにはもらっておくと良いでしょう。

基本の過失割合と修正要素

ところで、過失割合を調べるとき、「基本の過失割合」と「修正要素」に注意しなければなりません。基本の過失割合は、ケースごとに基準となる過失割合の数字です。


これに対し、修正要素とは、個別の事案によって過失割合を加算したり減算したりすべき事情のことです。


たとえば、同じような状況で自動車同士が接触した場合でも、加害車の自動車が飲酒運転をしていたら、その自動車の過失割合を高くするべきです。


被害者の自動車が徐行をしていなかったら、今度は被害者の過失割合を高くしないと公平になりません。


このように、過失割合を認定するときには、単に基本の過失割合をあてはめるだけではなく、適切な修正要素を当てはめなければならないのです。


修正要素としては、以下のようなものがあります。

【夜間】

夜間の場合、歩行者からは自動車を見つけやすく自動車からは歩行者を見つけにくいので、歩行者の過失割合が上がります。

 

【住宅地、商店街】

これらの地域では、車の方に特に高い注意義務が課されるので、歩行者の過失割合が下がります。

 

【大型車】

車が大型車の場合、危険が増すので、大型車の方の過失割合が上がります。

 

【徐行なし】

徐行をしていなかった当事者の過失割合が上がることがあります。

 

【著しい過失】

通常想定されているよりも大きな過失です。たとえば酒酔い運転や軽度のスピード違反、脇見運転、著しく不適切なハンドル操作やブレーキ操作などです。

 

【重過失】

故意に匹敵するほどの重大な過失です。たとえば飲酒運転や重度のスピード違反、無免許運転や居眠り運転などです。


過失割合の修正要素が適用されると、過失割合が5~20%程度加算されたり減算されたりします。過失割合を認定するときには、この修正要素についても、適切に当てはめなければなりません。

過失割合を低くして賠償金を増額させる方法

被害者が自分で相手の保険会社と示談交渉をしていると、相手から高い過失の割合を主張されて、賠償金を大きく減らされてしまうおそれがあります。


それでは、過失割合を低くして賠償金を増額させるには、どのような方法をとれば良いのでしょうか?以下でその方法を確認しましょう。

 

6-1.判例タイムズの基準を使って自ら交渉する

まずは、自分で判例タイムズの基準を調べて相手と交渉することが考えられます。


判例タイムズを購入するか、弁護士に相談して該当ページのコピーをもらうなどして、相手にその内容を提示し「正しくはこちらの基準が適用されるはず」と言ってみましょう。


このことで相手が納得したら、正しい基準を適用して賠償金をアップさせることができます。

 

6-2.弁護士に示談交渉を依頼する

自分で保険会社に「適切な過失割合の基準を使ってほしい」と言っても、相手が納得しないことが多いです。


「そんなことを言うなら、示談できません」「それはちょっと無理です」などと言われることもあります。


そこで、適正な過失割合を適用してもらうためには弁護士に対応を依頼すべきです。弁護士が示談交渉をするときには、判例タイムズの過失割合の基準を使います。


相手の保険会社も、弁護士が適切な過失割合の基準で過失割合を主張した場合に、弁護士相手に「それは無理です」などと言うことはありません。


弁護士にそのようなことを言っても通用しないのは明らかですし、示談が決裂したら裁判になってしまうだけだからです。


そこで、過失割合に不満があるなら、弁護士に示談交渉を依頼しましょう。


今は、たくさんの弁護士事務所が交通事故の無料相談を受け付けているので、利用してみると良いでしょう。

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まとめ

今回は、交通事故の過失割合のことと、過失割合の決まり方、調べ方、過失割合を下げて賠償金を増額させる方法をご紹介しました。


過失割合には適切な認定基準がありますが、被害者が自分で示談交渉をしていると、不当に高い過失割合を当てはめられてしまいます。


弁護士に示談交渉を依頼して、適切な基準を当てはめてもらい、最大限の賠償金を獲得してもらうことが大切です。


今、相手の保険会社と過失割合のことでもめていて困っているなら、まずは弁護士に無料相談の申込みをしてみることをおすすめします。

 

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