もらい事故で被害者が損しないための対処法

過失割合
もらい事故で被害者が損しないための対処法

もらい事故という言葉は知っていますか?もらい事故というと追突事故などをイメージされる方も多いと思います。


もらい事故に明確な定義はありませんが、ここでは被害者側に全く責任がない交通事故と定義することにします。


例えば、被害者が歩道を通行しているところを加害者の自動車に轢かれたというケースや、被害者の自動車が信号待ちをしているところを加害者の自動車が追突したというケースなどは、被害者に全く責任はない交通事故となり、もらい事故といえます。


特に、追突事故は車両相互の交通事故の中でも最も大きな割合を占める事故類型です。


今回は、もらい事故とはどのような事故なのか、もらい事故ではない事故との違い、もらい事故の被害に遭った場合の対応などについて解説します。

目次
  1. もらい事故と被害者にも責任がある事故の違い
  2. さまざまなもらい事故の態様
    1. もらい事故の例
    2. もらい事故とはならない例
    3. もらい事故になるかならないかの判断は難しい!
  3. もらい事故に遭った場合の対応
  4. もらい事故の慰謝料について
    1. 慰謝料の算出方法
    2. もらい事故の場合は過失相殺されない!
  5. もらい事故では保険会社に示談交渉を代行してもらえない!
  6. まとめ

もらい事故と被害者にも責任がある事故の違い

では、被害者にも責任がある交通事故、すなわち、もらい事故以外の交通事故がどのような事故なのかも見てみましょう。


例えば、歩行者が横断歩道付近の横断歩道ではない道路を横断していたところを自動車に轢かれたというケースであれば、被害者である歩行者にも横断歩道ではない道路を横断したという点で被害者にも責任が認められます。


交通事故の裁判では被害者と加害者の責任の割合(過失割合)が決められますので、上記の事例では、一般的に加害者の過失割合が75%、被害者の過失割合が25%ということになっています。


他方で、もらい事故は被害者側に全く責任がない交通事故ですから、加害者の過失割合が100%、被害者の過失割合が0%になります。

 

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さまざまなもらい事故の態様

もらい事故の一例は冒頭で少し触れましたが、その他のもらい事故の例を説明します。それに加えて、もらい事故に似ているが実はもらい事故とはならない例についても説明します。


もっとも、後述の「もらい事故になるかならないかの判断は難しい!」で述べるように、もらい事故になるケースとならないケースは紙一重なことが多く、その判断は難しいので「なんとなくこんな場合にもらい事故になるんだ」という程度に理解して頂ければ結構です。

 

2-1.もらい事故の例

①信号機の設置されていない横断歩道上の事故で、歩行者が横断歩道を横断中に自動車に轢かれたケース


②歩行者用道路を歩いている歩行者が自動車に轢かれたケース


③歩道と車道の区別がない道路で、右側通行している歩行者が自動車に轢かれたケース


④信号機が設置されている交差点で、青信号を直進している自動車と赤信号で交差点に進入した自動車との事故


⑤自動車で道路を直進中に、対向車線から来た対向車がセンターラインをオーバーしてきたケース


⑥追い越し禁止場所での追い越しの際の事故

 

2-2.もらい事故とはならない例

a ①のケースで、事故の時間帯が夜間(日没から日の出までの時間)であるようなケースでは、歩行者にも5%の過失が認められます。


b ③のケースとは少し異なり、歩道と車道の区別がない道路で、左側通行している歩行者が自動車に轢かれたケースでは、歩行者にも5%の過失が認められます。


c ④のケースで、青信号を直進している自動車に重過失(酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転など)がある場合には、青信号を直進している自動車に20%の過失が認められます。


d ⑤のケースで、直進中の自動車に前方不注視などの過失がある場合には、10%の過失が認められます。


e ⑥のケースで、追い越される側の自動車に重過失(酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転など)がある場合には、追い越される側の自動車に20%の過失が認められます。


f 追突事故であっても、追突された自動車が急ブレーキをかけた場合などは、追突された自動車側に20%の過失が認められます。

 

2-3.もらい事故になるかならないかの判断は難しい!

もらい事故になる例ともらい事故とはならない例を紹介しました。両者を比較するとわかるように、同じような事故態様であっても、さまざまな細かい事情によって過失の有無は変化します。


上記の例でいうと、③とbは歩行者が道路の右側を歩いているか左側を歩いているかという違いによって、もらい事故か否かが変わってきます。


また、過失割合は基本的な過失割合をベースにして、過失割合を修正すべき事情の有無によって加算されたり減算されたりします。


上記の例でいうと、①をベースとしてaのような事情(事故の時間帯が夜間であること)があれば、過失割合が修正され、被害者にも過失ありとなります。


さらに言うと、事故の時間帯が夜間であっても被害者が児童や老人である場合には被害者の過失割合が減算されるので、過失割合は0になります。


このように、過失割合を決めるためにはさまざまな事情を考慮しなければならず、かなり難しい作業になります。ですので、もらい事故か否かは弁護士に相談することをおすすめします。

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もらい事故に遭った場合の対応

もらい事故に遭った場合、被害者はどのような対応をすればよいのでしょうか。交通事故が発生すると、まずは安全な場所へ移動した後で事故の発生を警察に通報しなければなりません。


次に、加害者の住所、氏名、連絡先、車のナンバー、保険会社などの情報を確認します。その後、保険会社への連絡も忘れないようにしましょう。


警察の事故状況の調査には協力するようにしましょう。人身事故の場合は実況見分調書(交通事故の状況などを記載した調書)が作成されます。実況見分調書は、事故態様に争いが生じた際に有力な資料となります。


事故により負傷したときは病院へ行くことは当然だと思いますが、事故の時点で痛みが無い場合であっても、実は負傷しており、数日後に痛みが生じることもありますから、検査はしておいたほうがよいでしょう。

もらい事故の慰謝料について

4-1.慰謝料の算出方法

もらい事故が人身事故であった場合は、負傷の程度に応じて、死亡慰謝料、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料が発生します。慰謝料は精神的苦痛を受けたことの損害ですから、治療費や修理費用などの財産的な損害とは異なり損害が目に見える形で表れません。


しかし、慰謝料の算定方法については3つの基準があります。これらの基準を理解しているだけでも、示談交渉で相手方からもらえる損害賠償額を増やすことができる可能性が高まるので、ぜひとも読んでください。

 

①自賠責保険基準

まず1つ目は自賠責保険基準です。自賠責保険とは、自動車を運転する人に加入が義務付けられている強制保険です。交通事故の被害者に対して、法令で定められた最低限の補償をするためのものなので、後述する2つの基準よりも低額なものになります。

 

②任意保険基準

2つ目は任意保険基準です。任意保険とは、自賠責保険でカバーできない損害を補償することを目的としたものです。自賠責保険と異なり、強制ではなく、自分で補償内容を吟味して加入する保険を選びます。


任意保険基準は、保険会社が独自に定めている基準なので具体的な金額は公開はされていませんが、一般的に自賠責保険基準より高額で、後述の裁判基準より低額になります。 

③裁判基準

3つめは裁判基準です。裁判基準は、交通事故の過去の判例や裁判所の考えをもとに算出された基準です。弁護士基準とも言われており、3つの慰謝料の基準の中で最も高額です。


ですが、保険会社は、示談交渉の際に任意保険基準を適用した損害額を提示してくることがほとんどです。保険会社は、あくまで加害者側の味方であり、また、民間の営利企業なので、被害者へ支払う損害額を可能な限り少なくしたいためです。


被害者としては当然、裁判基準に基づいた損害額の請求を考えるでしょう。しかし、裁判基準を適用させるには、具体的な基準や法的な知識が必要なので大変困難です。そこで、裁判基準を熟知している交通事故に強い弁護士に依頼することで、裁判基準やそれに近い金額で示談をすることができます。


裁判基準の具体的な金額については、以下の記事を参考にしてください。

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4-2.もらい事故の場合は過失相殺されない!

もらい事故は被害者の過失はありませんから、慰謝料の算定にあたり過失相殺され慰謝料が減額されることはないという点で、もらい事故以外の事故とは異なります。

もらい事故では保険会社に示談交渉を代行してもらえない!

もらい事故の示談交渉で被害者が注意しなければならないのは、被害者が任意保険に加入している場合であっても、保険会社が加害者との示談の代行をすることができないことです。


弁護士法第72条は、弁護士以外の者が報酬を得て他人のために示談交渉の代行などの法律事務を行う事を禁止しています。


保険会社が加入者の示談交渉を代行することは、報酬を得て(=保険料の支払いの対価として)他人のために法律事務を行っていることになりますから、弁護士法第72条に抵触する可能性があります。


そして、被害者に過失が全くないもらい事故の場合には、被害者が加入する保険会社は保険金を支払う立場にはありませんから、示談交渉を代行できないということになるのです。


被害者が弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用を負担することなく示談交渉を弁護士に依頼することができます。弁護士費用特約に加入している場合は、これを積極的に利用しましょう。

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まとめ

本記事では、もらい事故に関する内容を一通り解説しました。もらい事故の代表的な例としては単純な追突事故がありますが、追突事故であることが明らかである場合を除いて、もらい事故か否かの判断が難しいことは上記で述べたとおりです。


したがって、事故の当事者間で争いが生じる可能性がある場合は早めに弁護士に相談することをおすすめします。また、当事者間での争いが特にない場合であっても、もらい事故では被害者が加入する保険会社が示談を代行してくれないので、示談交渉は弁護士に依頼すべきです。

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