交通事故の過失割合の決め方とは?交差点など事故態様別に解説。

過失割合
交通事故の過失割合の決め方とは?交差点など事故態様別に解説

交通事故では、保険会社同士で示談交渉をおこない過失割合を決めます。このとき、被害者にも過失があると受け取れる損害賠償金額が少なくなります。示談交渉では、被害者が納得できない過失割合を保険会社から提示されることも多くあります。このような場合、被害者はどのように対応すればいいのでしょうか。本記事では、まず過失割合がどのようにして決まるのか、一般的な事故態様の過失割合を例に挙げて説明します。また提示された過失割合に納得できない場合の対処法についても詳しく説明します。

目次
  1. 交通事故の過失割合とは?
    1. 被害者側にも過失が認められるケースが多い
    2. 損害賠償では過失相殺が行われる
    3. 過失割合によって損害賠償額が増減する
  2. 過失割合はどのようにして決まる?
    1. 保険会社が事故態様から過失割合を提示
    2. 保険会社提示の過失割合が絶対ではない
    3. 過失割合に合意できない場合には最終的に裁判で争う
  3. 交通事故のパターン別過失割合の解説
    1. 歩行者対自動車・バイクの事故の過失割合
    2. 自動車対自動車の事故の過失割合
    3. 自動車対バイクの事故の過失割合
    4. 自転車対自動車・バイクの事故の過失割合
  4. 過失割合に納得がいかない場合にはどうする?
    1. 保険会社は被害者の味方ではない
    2. 納得いかない場合には弁護士に相談
  5. まとめ

交通事故の過失割合とは?

被害者側にも過失が認められるケースが多い

民法では

709条

故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したものは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う


と規定されています。


交通事故で相手にケガをさせたということは、自らの過失によって相手の利益を侵害したことになるため、加害者は被害者に対して損害賠償する義務を負います。


ところで、交通事故というのは、加害者の過失のみが原因ではないことがあります。


実際に起こる交通事故の多くでは、被害者にも幾分かの過失が認められます。そして、被害者にも過失がある場合、加害者に100%の損害賠償責任を負わせてもいいのかが問題になります。

損害賠償では過失相殺が行われる

民法では、交通事故などの「不法行為」の損害賠償について、

722条2項

被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる


旨定めています。これは「過失相殺」と呼ばれるもので、被害者側に過失がある場合には損害賠償額を減額できることを意味しています。


たとえば、交通事故の被害者にも、速度制限をオーバーや、信号無視などの過失が認められることがあります。このような被害者側の過失分についてまで加害者側に責任を負わせるのは公平ではないため、過失相殺により損害賠償額を減額することになります。

過失割合によって損害賠償額が増減する

交通事故の損害賠償額を算定するときには、過失相殺を考慮して「過失割合」を決めます。過失割合とは、加害者、被害者双方の過失の度合いになります。

 

交通事故では、被害者の過失割合が大きくなるほど、被害者が受けられる損害賠償額が少なくなります。


たとえば、交通事故で1,000万円の損害が生じた場合、加害者対被害者の過失割合が8対2であれば、加害者は800万円の損害についてだけ賠償すればよく、残りの200万円は被害者自らが負担することになります。

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過失割合はどのようにして決まる?

保険会社が事故態様から過失割合を提示

交通事故の過失割合は警察が決めるわけではありません。


裁判になった場合には裁判所が決めることになりますが、必ず裁判をしなければならないわけではないので、まずは加害者と被害者が話し合いで決めることになります。


なお、交通事故発生後、被害者に損害賠償額を提示してくるのは、加害者の加入している自動車保険(任意保険)会社です。


保険会社が損害賠償額を計算する際、事故態様から過失割合を割り出して、被害者に提示しているのです。

保険会社提示の過失割合が絶対ではない

過失割合は、過去の裁判例を基準に算定されます。実務的には「民事交通訴訟における過失相殺の認定基準(別冊判例タイムズ)」という本が利用されることが多くなっています。

 

具体的には、過去の裁判例から導き出された「基本の過失割合」に、様々な「修正要素」から加算や減算を行い、最終的な過失割合が決まります。


保険会社も、おおむねこのような流れで過失割合を決定していますが、それはあくまで保険会社の考えです。


過失割合の算定は複雑なため、保険会社の考えが正しいとは限りません。提示された過失割合が適切とは言えないこともあります。

過失割合に合意できない場合には最終的に裁判で争う

保険会社の提示する過失割合に合意すれば、その過失割合をもとに算定された損害賠償金を受け取ることになります。


なお、過失割合に納得がいかない場合には、弁護士に相談することができます。弁護士に依頼すれば、適正な過失割合を算出したうえで、保険会社と交渉してくれます。


交渉が成立しない場合には裁判に持ち込むことになりますが、弁護士に依頼していれば、裁判になった場合でも、適切な損害賠償額を獲得することができます。

交通事故のパターン別過失割合の解説

以下、主な事故態様の基本の過失割合について説明します。


なお、実際に過失割合を算定するときには、基本の過失割合に対して、ケースごとに設けられている修正要素(「夜間+5」「児童・高齢者-5」など)から修正を加えた上で、ケースバイケースの柔軟な解決を図ります。

歩行者対自動車・バイクの事故の過失割合

歩行者と自動車・バイクの事故では、歩行者が保護され、自動車・バイクの過失割合が大きくなります。なお、対歩行者の場合、自動車とバイクは同じ扱いになります。

歩行者と直進車の横断歩道上での事故

歩行者が横断歩道を横断しているときの事故については、歩行者側の信号が青の場合と信号機のない横断歩道の場合には、加害者側の過失割合が100%となります。

歩行者対自動車・バイクの事故の過失割合 歩行者と直進車の横断歩道上での事故

なお、Aを歩行者、Bを自動車とした場合、信号の色と基本の過失割合は次のようになります(※黄信号とは、青信号の点滅を含みます)。


A(青信号):B(赤信号)=0:100

A(黄信号):B(赤信号)=10:90

A(赤信号):B(赤信号)=20:80

A(赤信号):B(黄信号)=50:50

A(赤信号):B(青信号)=70:30

歩行者と右折車の横断歩道上での事故

 歩行者対自動車・バイクの事故の過失割合 歩行者と右折車の横断歩道上での事故

Aを歩行者、Bを自動車とした場合、信号の色と基本の過失割合は次のとおりです。


A(青信号):B(青信号)=0:100

A(黄信号):B(青信号)=30:70

A(赤信号):B(青信号)=50:50

A(黄信号):B(黄信号)=20:80

A(赤信号):B(黄信号)=30:70

A(赤信号):B(赤信号)=20:80

駐車場内での事故

歩行者対自動車・バイクの事故の過失割合 駐車場内での事故

駐車場内での歩行者と自動車の事故の場合、基本の過失割合は、 歩行者:自動車=10:90 となります。

自動車対自動車の事故の過失割合

交差点での直進車同士の事故

信号機のある交差点

自動車対自動車の事故の過失割合 交差点での直進者同士の事故 信号機のある交差点

赤信号を無視して進入した車の過失割合は100%となり、青信号で侵入した車の過失は0%となります。信号の色と基本の過失割合は、次のとおりです。


A(青信号車):B(赤信号車)=0:100

A(黄信号車):B(赤信号車)=20:80

A(赤信号車):B(赤信号車)=50:50

信号機のない交差点

道路交通法により左方優先となるため、左方車の過失割合の方が小さくなります。

自動車対バイクの事故の過失割合 交差点での直進車同士の事故 信号機のない交差点

同幅員の交差点で、AとBが同程度の速度の場合、基本の過失割合は次のようになります。


A(左方車):B(右方車)=40:60

交差点での右折車と直進車の事故

自動車対自動車の事故の過失割合 交差点での右折車と直進車の事故

信号機のある交差点で両車とも青信号で侵入した場合、もしくは信号機のない交差点の場合には、右折車は直進車が通過するのを待たなければなりませんから、右折車の過失割合が大きくなります。


一方で、直進車にも右折車に注意を払う義務があるため、基本の過失割合は次のようになります。


A(直進車):B(右折車)=20:80

自動車対バイクの事故の過失割合

自動車とバイクの事故では、バイク側が重大なケガを負う可能性が高いため、自動車側に高い注意義務が課されるため、自動車側の過失割合が高くなります。

交差点での直進車同士の事故

信号機のある交差点

自動車対バイクの事故の過失割合 交差点での直進車同士の事故 信号機のある交差点

Aをバイク、Bを自動車とした場合、信号の色と基本の過失割合は次のとおりです。


A(青信号):B(赤信号)=0:100

A(赤信号):B(青信号)=100:0

A(黄信号):B(赤信号)=10:90

A(赤信号):B(黄信号)=70:30

A(赤信号):B(赤信号)=40:60

信号機のない交差点

自動車対バイクの事故の過失割合 交差点での直進車同士の事故 信号機のない交差点

Aをバイク、Bを自動車とし、同幅員の交差点でAとBが同程度の速度の場合の基本の過失割合は次のとおりです。


A(左方車):B(右方車)=30:70

自動車対バイクの事故の過失割合 交差点での直進車同士の事故 信号機のない交差点50対50

A(右方車):B(左方車)=50:50

自転車対自動車・バイクの事故の過失割合

自転車と自動車・バイクの事故では、自転車側が保護され、自動車・バイク側の過失割合が大きくなります。なお、対自転車の場合、自動車とバイクは同じ扱いになります。


以下は、交差点での直進車同士の事故についての過失割合です。

信号機のある交差点

自転車対自動車・バイクの事故の過失割合 信号機のある交差点

Aを自転車、Bを自動車・バイクとした場合、信号の色と基本の過失割合は次のとおりです。


A(青信号):B(赤信号)=0:100

A(赤信号):B(青信号)=80:20

A(黄信号):B(赤信号)=10:90

A(赤信号):B(黄信号)=60:40

信号機のない交差点

自転車対自動車・バイクの事故の過失割合 信号機のない交差点

Aを自転車、Bを自動車・バイクとした場合、同幅員の交差点における基本の過失割合は、 A:B=20:80 となります。

過失割合に納得がいかない場合にはどうする?

保険会社は被害者の味方ではない

交通事故の被害者が、保険会社から提示された過失割合に納得できないケースは珍しくありません。過失割合の算定は、ただでさえ複雑です。


また、保険会社は加害者側ですから、被害者に有利になるよう過失割合を算定してくれることは期待できません。


交通事故で加害者側と示談する際、保険会社の言うとおりにしていれば、十分な補償が受けられない可能性があります


提示された過失割合に疑問を感じる場合には、そのまま示談することはせず、弁護士などの専門家に相談して対処方法を考えることが大切です。

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納得いかない場合には弁護士に相談

交通事故の過失割合に納得できない場合には、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に依頼すれば必ず裁判になるのではないかと躊躇してしまう人もいるかもしれませんが、弁護士には交通事故の示談交渉も任せることができます。


交通事故案件を多数扱っている弁護士であれば、過失割合の算定方法についても熟知していますから、適切な過失割合を導き出した上で保険会社と交渉してくれます


交渉が成立しない場合、裁判まで対応してもらえますから、適切な損害賠償額を獲得することができます。

まとめ

交通事故の過失割合は、損害賠償額を決める重要な要素です。しかし、交通事故で保険会社から提示される過失割合は、適切でないこともあります。


過失割合の算定には専門的な知識が必要です。過失割合に納得がいかない場合には、専門知識をもった弁護士に相談するようにしましょう。

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