歩きスマホはNG!歩きスマホによる事故で過失や刑事責任を負うことも。

歩行者は一般的には交通弱者と考えられています。自動車よりもバイクよりも自転車よりも弱いからです。
そのため「歩行者」と「自動車・バイク・自転車」が事故を起こした場合、多少歩行者に不注意があったとしても、自転車・バイク・自転車のほうが悪いと判断されやすくなっています。
自転車・バイク・自転車を運転する人は、それくらい歩行者に優しい運転を心がけなければならないということです。
しかし、歩きスマホは別です。スマホを熱心に操作しながら街中を歩いている人がいますが、その状態で交通事故を起こせば、さすがに歩行者でも加害者と認定されます。
歩きスマホは「歩く凶器」になることがあるのです。
- 目次
歩きスマホ交通事故の実態
歩きスマホ事故はなぜ起きるのでしょうか。そして歩きスマホ事故はどれくらい発生しているのでしょうか。 歩きスマホ事故の実態をみていきましょう。
スマホは便利で楽しすぎる
歩きスマホ事故が起きるのは、スマホが便利で楽しいからです。 昨今、スマホでできることが広がりました。
このような人の集中力を奪う要素が、スマホにはふんだんに盛り込まれています。スマホの楽しさはガラケーの何倍にもなるでしょう。
スマホは、膨大な情報量の割に画面が小さいため、画面を凝視(ぎょうし、じっと見ること)しなければなりません。つまり歩きスマホは歩くために必要な視野を奪っているのです。
また街中を安全に歩くには音情報も重要です。歩行者が背後から自動車が近づいている音を聴けば自然と体が道路と反対方向に移動します。
しかし歩きスマホは歩くために必要な聴覚も鈍くなるため反応が遅くなります。
音楽をイヤホンで聴きながらである場合には、完全に外部に対する聴覚が失われている場合もあるでしょう。
歩きスマホは歩きながらスマホの世界に没入しているようなものなのです。交通事故を起こさないほうが不思議といっても言い過ぎではありません。
それだけ歩きスマホは危険な行為なのです。
ながらスマホによる事故が急増している
スマホを操作しながらの歩行だけではなく、スマホを操作しながら車を運転する行為も問題になっています。
警察庁によると、携帯電話などを操作しながら車を運転中に発生した交通事故は、2016年に1,999件発生しています。
なかでも、スマホなどの画像を運転中に見ることで発生した事故は927件にのぼります。
歩きスマホ事故に限った調査ではありませんが、東京消防庁は、歩きながらまたは自転車に乗りながらの「ながらガラケー・スマホ交通事故」の件数を公表しています。
事故件数の推移は以下のとおりです。
2010年から2016年までに約2.5倍になっています。
この調査では、ガラケーとスマホの内訳は発表されていません。しかし、スマホの個人保有率は2011年の14.6%から右肩上がりに上昇し、2016年には56.8%にまで急増しています。
これは全体の数字ですが、20代に限定すれば2011年の40%台から2016年には94.2%へと爆発的に増えています。
そのため「ながらガラケー・スマホ交通事故」の増加もスマホの普及が影響していると考えるのが自然でしょう。
ながらガラケー・スマホの危険性は事故の多さだけではありません。事故の深刻さも知っておいてください。
上記の2010~2013年の4年間の事故、計122件を集計したところ、救急搬送されたときの状態は以下のとおりでした。
さらにこの122件のなかには駅のホームから転落した少年も含まれています。
参考:東京消防庁「歩きスマホ等に係る事故に注意!」
歩行者に過失が1割ついた事例も
歩行者と自転車の交通事故では、通常は「自転車側が悪い」となります。
しかし福岡地裁は2014年、歩きながらガラケーを操作していた歩行者の過失を1割、自転車側の過失を9割とする判決を言い渡しました。
走行中の自転車が歩行者の直前で突然左折し衝突しました。これだけなら自転車に乗っていた人の過失が10割になるはずです。
裁判官も「十分な注意を払わずに左折した自転車が、事故の主要な発生原因」と断定しています。
しかし裁判官は続けて「歩行者といえども、周囲の安全を確認して通行すべきだった」といったのです。
歩行者というだけでどのような事故でも無罪放免になるわけではないという裁判官のメッセージが聴こえてきそうです。
歩きスマホ以外で「歩行者が悪い」と認定された事故
歩きスマホ以外でも、交通事故において「歩行者が悪い」と認定された事例があります。
自転車の通行が許されている歩道を女性が自転車で走行していたところ、突然歩道に男性が飛び出してきて衝突しました。自転車の女性は転倒し左手を骨折しました。
大阪地裁は歩行者の男性に過失があるとして、46万円の損害賠償金を女性に支払うよう命じました。
裁判官は、歩行者が歩道に出るときに自転車の有無をまったく確認しなかったことを重視したのです。
この事例については「意外に簡単に歩行者の過失が認められる」という印象を持った方もいるでしょう。
加害者の男性はガラケーもスマホも操作していなかったのに損害賠償しなければならないのです。
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過失割合2018.05.15
交通事故で被害者になると、加害者に対し損害賠償金の請求をすることができます。そのとき、被害者の「過失割合」が
歩きスマホ事故の罪と罰
歩きスマホ事故は刑事罰に該当する可能性もあります。 スマホに集中していた歩行者が過失のない自転車の運転者と衝突し、自転車に乗っていた人がケガを負ったとします。
この場合、スマホ歩行者に過失傷害罪(刑法第209条)が適用される可能性があります。同罪は30万円以下の罰金または科料を科しています。
このとき、被害者が死亡すれば過失致死罪(刑法第210条)が適用され、50万円以下の罰金に処せられるかもしれません。
スマホの歩行者により重い過失があり、そのせいで相手を死傷させてしまった場合、罪名は重過失致死傷罪(刑法第211条)になります。
この罪の罰は、5年以下の懲役または禁錮、または100万円以下の罰金です。
自転車スマホでは死亡事故や5,000万円の賠償金も
歩きスマホをする人は自転車スマホをする可能性もあります。 そこで、自転車スマホによる事故のなかでも深刻な2つの事例を紹介します。
スマホを操作しながら自転車を走らせていた女性が、歩行者の女性と衝突し死なせてしまいました。
横浜地裁は2018年8月、自転車スマホの女性に禁錮2年、執行猶予4年を言い渡しました。罪名は重過失致死傷罪です。女性はかなり悪質でした。
自転車スマホの女性は当時大学生でしたが、自主退学したそうです。被害に遭った女性の死因は脳挫傷でした。
被害女性の娘は判決後に「判決内容は軽い。法律が時代に合っていない」とのコメントを残しました。
別の事故では、女子高校生が夜間に携帯を見ながら自転車で走行し、看護師に衝突しました。看護師は転倒したときのケガで歩行困難となり、職を失いました。
女子高生側には5,000万円の慰謝料が命じられました。
自転車を停めて携帯を見るか、携帯をしまって自転車に乗るか、このうちどちらかを選択していれば起きなかった事故です。代償と呼ぶにはあまりに大きすぎる悲劇です。
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まとめ
歩きスマホ事故がこれだけ多発し、かつ深刻な事態を引き起こしていれば、今後法律で規制されても仕方がないかもしれません。
アメリカのニュージャージー州フォートリーという街では、2012年に歩きスマホを禁止する条例が制定されました。違反すると85ドル(約9,000円)の罰金が科されます。
またスマホには、歩きスマホをしていると警告が出るアプリもあります。
しかしこれ以上事故が増えるようなら、歩いていることを検知するとスマホが起動しなくなる機能が搭載されるかもしれません。
みずから歩きスマホをやめるか、法律で禁止されてやめるかは、同じ「やめる」でも大きな違いがあります。
法律で罰せられるからではなく、周りの人や自分の人生を台無しにしないためにも、歩きスマホは今すぐやめるべきでしょう。
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