わかりづらい道路標識が原因で交通事故!過失割合はどうなる?

一時停止や一方通行、速度制限など、道路標識は運転者に交通ルールを知らせ、交通事故を防止する役割を果たします。その一方、分かりづらい道路標識は運転者が正しく認識できず、事故原因になることがあります。
ここでは、分かりづらい道路標識が原因で交通事故が発生した場合に運転者の過失はどう判断されるかについて説明します。
分かりづらい道路標識が事故原因になる?
道路標識は交通秩序を維持するために設けられている
車を運転する人は、運転中、道路標識に常に注意を払っていると思います。
道路標識は、道路を利用する車や自転車、歩行者などが皆安全に通行できるよう、国や自治体などの道路の管理者が設置しているものです。
道路標識の様式は法令などで定められており全国共通です。道路を利用する人は、道路標識のおかげで、その場所で守らなければならない交通ルールを一目で知ることができます。
道路標識は交通秩序を維持し交通事故を防止するための重要な役割を果たすものといえます。
分かりづらい標識は事故原因の1つになる可能性がある
道路標識は誰にでも見えやすい位置に分かりやすい状態で設置されるべきです。もし道路標識がわかりづらかったり見えにくかったりすれば、道路の利用者は交通ルールを知ることができません。
交通ルールがわからなければ事故につながることもあります。
たとえば、制限速度が40km/hの標識が見えなかったら70km/hで走行してしまうこともあるでしょう。道路の状況によっては、制限速度をオーバーしたことが原因で、事故が発生してしまうこともあります。
道路標識というのは、分かりやすく見やすい状態であってはじめて道路標識として機能します。
標識自体に問題があれば運転者の過失が軽減されることがある
交通事故を起こした運転者には通常は過失があります。しかし、標識に問題があった場合には、通常の場合と比べて運転者の過失の程度は低いと考えられます。
つまり、分かりづらい標識が事故原因となった場合には運転者の過失が軽減されることがあるのです。
標識が分かりづらい(見えづらい)場合とは?
標識そのものがわかりにくい場合
道路標識は、本来、誰が見てもわかりやすいものになっています。教習所でも道路標識について学びますからドライバーは標識を見て意味をすぐに理解できるはずです。
しかし、実際にはぱっと見ても理解できない、わかりづらい標識が全国にたくさんあります。 わかりづらい標識の例としては以下のようなパターンがあります。
同じ場所にいくつもの標識が設置されている
標識は1か所に1つとは限らず、同じ場所にいくつも設置されていることがあります。瞬時にいくつもの標識の意味を理解するのは至難の業です。
1つの案内板のなかにたくさんの文字が書かれている
標識には矢印や記号のほか文字が書かれていることもあります。たとえ書いてあるのが地名だけだとしても、文字がたくさん書かれているとそれだけで分かりづらくなってしまいます。
日時の指定がわかりにくい
道路標識には日付や時間帯によって通行方法が変わることを指定するものもあります。この場合、「今日が何日か、今何時か」がわからなければとっさにどうしてよいかわからなくなります。
日本語の意味が分かりにくい
道路標識には「○○を除く」という形で通行できる車を指定しているものが多くなっています。この場合、通行できる車がすぐにわかりにくいという難点があります。
悪天候などで標識が見えない場合
標識の見え方は天候によっても変わります。標識自体には問題がなくても暴風雨のときや霧が発生したときには標識が見えにくくなってしまいます。
悪天候で標識が見えない場合にも、やはり運転者は交通ルールを知ることができません。
なお、悪天候の場合には運転者は標識が見えるよう減速して運転すべきです。標識そのものに問題があった場合と同様に考えるわけにはいきませんが、状況によっては運転者の過失が軽減される可能性があります。
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道路標識に問題がある場合の過失割合は?
交通事故の責任を割り振る過失割合
交通事故の損害賠償金額を決めるときに問題になるのが過失割合です。過失割合は交通事故の加害者と被害者の過失の程度を「10:90」、「20:80」などの割合で示したものです。
被害者側の過失割合が0であれば加害者は被害者側の損害を全額賠償する義務があることになります。
被害者側にも過失があれば損害賠償額は減額され、被害者の過失割合が大きくなるほど賠償金額は小さくなります。
標識を見落としていた場合は過失割合が変わることがある
交通事故の過失割合を決めるうえで、設置されている道路標識が影響してくることがあります。代表的な例が一時停止の標識です。
一時停止の標識がある場合と一時停止の標識がない場合では次のように過失割合が異なります。
信号機のない交差点における直進車同士の過失割合(同幅員の交差点で同程度の速度の場合)
原則の過失割合
左方優先の原則により左方車の過失割合が低くなり、A:B=40:60となります。
一方に一時停止の標識がある場合の過失割合
左方車か右方車かに関係なく一時停止義務に違反した方の車の過失割合が高くなり、 A:B=20:80となります。
標識に問題がある場合の過失割合
上記で説明したとおり、一時停止の標識がある交差点では一時停止義務を守らなかった運転者の過失割合が大きくなります。
しかし、一時停止の標識が分かりづらいものであれば運転者は一時停止義務があることを知ることができません。つまり、標識自体に問題があれば運転者に一時停止義務違反があったとは言えないことになります。
一時停止の標識自体が分かりづらく問題があるものと言えるならば、上記「一方に一時停止の標識がある場合の過失割合」の基準によって過失割合を算定しません。
「原則の過失割合」の基準により過失割合を算定するのが妥当と考えられます。
このように、標識自体に問題があったケースでは過失割合を考え直さなければならないことがあります。
一時停止の「標識」と「表示」は違う
一時停止義務違反を考慮して過失割合を算定する場合には標識か表示かにも注目する必要があります。一時停止の「標識」とは、赤い逆三角形に白の字で「止まれ」と書いてあるものです。
一時停止については、この「標識」以外に、路面に直接「止まれ」という「表示」がされている場合もあります。
道路交通法による一時停止義務は「標識」があるところでのみ発生します。一時停止の「表示」があっても「標識」がない交差点では運転者に一時停止義務はありません。
この場合、たとえ一時停止しなかったとしても道路交通法違反によるペナルティは発生しないことになります。
過失割合の算定においても、一時停止の「表示」を無視しただけの場合には不利益に扱うべきではないという趣旨の判例があります。
つまり、一時停止の「表示」があるだけの場合には一時停止義務違反はないので、上記「原則の過失割合」の基準で過失割合を算定することになります。
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道路標識に問題があるとされるのはどんな場合?
標識に問題があるかどうかは視認度で判断
ここまで説明したとおり、道路標識が設置されているにもかかわらず標識として機能していない場合は、交通事故の過失割合が変わることがあります。
道路標識が標識として機能しているかは標識の見えやすさ(視認度)により判断します。
視認度は事故を起こした運転者を基準にするのではなく一般的な運転者を基準に考えます。一般的な運転者が普通の注意力で運転して認識できる標識は視認度良好と判断され、問題ない標識となります。
一方、一般的な運転者が普通の注意力をもって運転しても見落としてしまうような標識は視認度不良となり、有効に機能していない標識と判断されます。
実際には視認度を判断するうえでの明確な基準はない
「一般的な運転者が普通の注意力で運転して認識できる標識」と言われても、あいまいでわかりにくいと思います。道路標識の視認度を判断する明確な基準は実際にはありません。
交通事故が発生し、過失割合を算定するうえで標識の分かりづらさが問題になることはあります。この場合には、ケースバイケースの判断が必要になりますから、弁護士に相談して対処してもらうようにしましょう。
まとめ
分かりづらい道路標識が原因で交通事故が発生した場合には、運転者の過失が軽減され、過失割合が修正されることがあります。
具体的にどのような場合に過失が軽減されるかについては明確な基準はありません。道路標識の分かりやすさや過失割合の算定で疑問を感じた場合には弁護士に相談するのがおすすめです。
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