初心者マークを貼らないと罰則も!マーク付き自動車との事故で過失割合はどうなる?

初心者マークやシルバーマークを付けた自動車が付けていない一般の自動車と衝突事故を起こした場合、「通常の過失割合の判定より初心者・シルバーマークを付けている運転手が有利になる」という話を聞いたことはありませんか。
これは半分正しく半分間違っています。正しい面があるということは、初心者・シルバーマークを付けている自動車が近くを走行していたら一般のドライバーは通常運転時より注意したほうがいいのです。
これらの車と事故をすると過失が大きくなり損をする可能性が高いからです。ただ、初心者・シルバーマーク付き自動車が、事故のときに必ず有利になるとも限らないのです。
初心者・シルバーマーク付き自動車の事故の正しい知識と、意外に知られていない「初心者・シルバーマークのルール」について解説します。
- 目次
初心者・シルバーマーク付き自動車との事故で過失割合はどうなる?
初心者・シルバーマークの法律的な位置付けは後述します。
まずは、初心者・シルバーマーク付き自動車と一般の自動車が事故を起こしたときの過失割合の判定方法についてみていきましょう。
一般車が初心者・シルバーマーク付きの車に事故を起こすと不利
初心者・シルバーマーク付き自動車が事故で有利になるのは本当で、通常時より大体10%くらい有利になります。反対に事故相手の一般自動車側からすると、10%不利になるということです。
例えば、一般車どうしの事故があり過失割合が4対6と判定されたとします。
まったく同じシチュエーションで初心者・シルバーマーク付き自動車と一般自動車が事故を起こした場合、3対7と判定されてしまうということです。
初心者・シルバーマーク付き自動車の過失割合が有利な理由とは
どうして初心者・シルバーマーク付きの自動車のほうが通常の自動車より過失割合が有利になるのでしょうか。
初心者・シルバーマーク付き自動車は、わざわざ自動車のボディにマークを付けて運転操作が未熟なことを知らせています。
それなのに事故を起こしたのは「一般自動車がいつも以上の注意を払っていなかったから」と認定されてしまうからです。「その分、一般自動車の運転手の過失を増やしましょう」ということです。
例えば、一般自動車が相手の自動車に幅寄せや割込みをしたことで事故を起こしたとします。
その相手が初心者・シルバーマーク付き自動車だったとき、10%ほどの過失割合の調整が発生します。 ポイントは次の2点です。
初心者・シルバーマーク付き自動車が事故を起こしても有利にならない
それでは次に、初心者・シルバーマーク付き自動車と一般自動車が事故を起こしても、過失割合を調整しないケースを紹介します。
それは初心者・シルバーマーク付き自動車が原因で事故を起こした場合です。
例えば、赤信号で停止していた一般車に初心者・シルバーマーク付き自動車が後ろから追突したことを想定します。
この場合、過失割合は一般車:初心者・シルバーマーク付き自動車=0:10になります。1:9にはなりません。
これは、一般車ではなく初心者・シルバーマーク付き自動車側が事故を起こしており、10%調整が働かないためです。
もちろん、初心者・シルバーマーク付き自動車が一般自動車に幅寄せや割込みで事故を起こした場合も過失割合の調整は入りません。
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初心者・シルバーマークを貼る位置は法律で決まっている
初心者マークを貼ることは運転初心者の義務
初心者マーク(通称、若葉マーク)の正式名称は初心運転者標識といいます。運転免許を取得してから1年未満は運転する自動車の車体に貼っておかなければなりません。
初心者マークを貼ることは初心運転者の義務です。
そのため、貼っておかないと道路交通法第71条の5「初心運転者標識等の表示義務」に違反したことになり、原則6,000円の反則金と違反点数1点が科されます。
つまり初心者は初心者マークで自分の運転技術が未熟であることを周囲に知らせなければならないのです。初心者マークを貼る位置も法律で細かく決まっています。
なお側面ガラスのなかでも、後部座席の側面ガラスは貼り付けても違反にはなりません。
ただし、初心者マークは前方または後方から確認できなければならないので、側面ガラスに貼るのは避けたほうがいいでしょう。
リアガラスにも初心者マークをつけてもいいのですが、運転車の後方視界が妨げられるので、これも避けたほうが無難です。
ちなみに初心者マークは、運転免許を取得してから1年未満の間は運転する自動車に貼らなければならないのですが、免許停止期間はこの1年の期間から除外されます。
すなわち免許取得から1年以内に2カ月の免停になったら、免許取得から1年2カ月間は初心者マークを付けていなければならないということです。
シルバーマークには罰則規定なし
シルバーマークの正式名称は高齢運転者標識といいます。こちらは70歳以上のドライバーが運転するときに自動車に貼らなければなりません。
ただシルバーマークを貼っていなくても道路交通法違反になりません。それでも対象者であればシルバーマークを貼っておいたほうがいいでしょう。
もし、シルバーマークを貼らずに70歳以上の人が自動車を運転し、もらい事故をした場合、「シルバーマーク付き自動車が事故のときに有利になる判定」がくだされないからです。
対象者でない人が初心者・シルバーマークを貼っても法的効果はない
免許取得から1年以上経過している人が初心者マークを付けたり、70歳未満の人がシルバーマークを付けてはいけません。
罰則はありませんが、初心者・シルバーマークは、初心者と高齢者が付けるものだからです。
また、対象でない人が初心者・シルバーマークを付けて事故を起こされても、過失割合の調整は行われません。
初心者・シルバーマーク付き自動車の走行を邪魔すると反則金6,000円
道路交通法には初心者と高齢者のドライバーを守る規則があります。
道路交通法第71条5の4で「初心者・シルバーマーク付きの自動車に対し、危険防止のためやむを得ない場合を除いて、幅寄せや割込みをしたりしてはならない」と規定しているのです。
もちろん幅寄せや割込みは一般自動車に対してもおこなってはいけません。
それにもかかわらず初心者・シルバーマーク付き自動車に配慮した条文があるのは、一般の運転手は初心者やシルバードライバーを守らなければならないからです。
この「初心運転者・高齢運転者保護義務」に違反すると原則反則金6,000円が科されます。これは事故を起こしていなくても違反になります。
初心者マークドライバーの事故率
そもそも初心者マークドライバーは、一般のドライバーより事故を起こしやすいでしょうか。それとも起こしにくいでしょうか。
初心者は運転技術が未熟なので事故を起こしやすいような気がします。しかし初心者の方が慎重な運転をするのでスピードも出さない可能性が高いため、意外に事故率は低いと考えることもできます。
2016年の国内の交通事故の発生件数は499,201件でした。それに対し免許取得者は約8,000万人です。
つまり1年間で約160人(=8,000万人÷499,201件)に1人が事故を起こしていることになります。
事故率は0.63%(=(1÷160)×100)となります。これは初心者も高齢者もベテランドライバーも含めた数字です。
では初心者だけの事故率はどうなっているかというと、警視庁によると、運転免許取得から1年以内に交通事故を起こした確率(事故率)は0.41%でした。
これだけ見ると初心者の事故率のほうが低いので「初心者のほうが安全運転をしている」といえます。しかし警視庁の数字を細かくみると必ずしもそうとはいえないのです。
例えば八王子のある地域では初心者の事故率は0.86%となっています。これは全ドライバーの事故率よりかなり高い数値です。
警視庁は東京都内を管轄していますが、これが山形県になると初心者の事故率は1.03%とかなり高率です。さらに愛知県では地域によって2%を超えるところもあります。
やはり初心者は事故を起こしやすいといえます。
したがって、一般自動車のドライバーが初心者マークやシルバーマークを見たら、
などの配慮をしたあげたほうがいいでしょう。初心者・高齢ドライバー以外にもこのようにしたいものです。
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まとめ
万が一、初心者や高齢者のドライバーの方で「事故で有利になる」と考えている人いたら考えをあらためたほうがいいでしょう。
自分で事故を起こしたら一般のドライバーと同じように過失判定されます。
そして一般のドライバーは、初心者・シルバーマーク付き自動車に対して事故を起こしてしまったら「罰が重くなる」と考えておいてください。
とはいえ、初心者・シルバーマークを見たときに「罰が重くなる」と考えるより、「優しくしてあげよう」と思ったほうがいいですよね。
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