認知症ドライバーの過失割合とは

過失割合
弁護士監修
認知症ドライバーの過失割合とは

近時、高齢者が起こす交通事故が増えています。特にブレーキとアクセルの踏み間違いといった単純なミスが大きな事故につながるケースなど皆さんもよく耳にされていると思います。

高齢化するにともない避けられないのが認知症の問題です。

認知症とは、アルツハイマー、血管性認知症などの原因により引き起こされる状態、総称を指しますが、明確な発症原因は未だに解明されていません。

そしてこの認知症はある日突然発症するものではなく、日々、認知の機能が衰える形で現れてきます。

このような認知機能の衰えは、運転において状況判断力や、道順の記憶、とっさの運転操作など様々な場面で悪影響を及ぼします。

ここでは認知症のドライバーによって、事故が引き起こされた場合の責任についてご説明したいと思います。

目次
  1. 加害者が認知症だった場合、保険金は支払われるのか
  2. 過失割合はどう判断されるのか
  3. 認知症のドライバーの刑事責任
  4. 認知症の運転手が原因で起こった過去の交通事故や判例
  5. 認知症での交通事故を防止するためには

加害者が認知症だった場合、保険金は支払われるのか

自動車の運行に関して生じた交通事故については、自動車賠償責任法(自賠法)の適用があり、加害者ドライバーが車両の運行供用者である場合は、その過失にかかわらず自賠法上の責任を負うことになりますので、原則として、自賠責保険による賠償は受けられます

また任意保険についても各保険会社により取扱は異なりますが、基本的には故意によるようなケースを除き賠償が受けられると考えられます。

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過失割合はどう判断されるのか

交通事故が起きたとき、加害者が認知症であった場合、加害者の責任はどうなるでしょうか。

民法は過失責任の原則を定めており、交通事故は被害者に対する不法行為を構成しますが、加害者ドライバーが認知症の場合、責任能力がなく過失を問えないのではないかという問題が起きます。

もっとも認知症と一括りに言っても程度も様々であり、単に認知症であるというだけの理由で免責されることはなく、個別具体的な状況で注意義務の有無が判断されます

認知症により認知機能が衰えればそれだけ判断力が低下し、基本的な注意義務に違反し、過失割合が大きくなることが予想されます。

他方、事故当時、認知症により全くの心神喪失状態にあった場合には、過失責任の原則から責任を問うことはできません(民法713条)。

この点、普段より症状を自覚し、運転中に心神喪失状態になることを予見しながら敢えて運転を行ったと言えるような場合には、運転行為に及んだ事実自体を過失と認定して責任を問われることが考えられますが、認知症については認知力・判断力の低下が日常的な症状となるため、そのようなケースは限られてくるように思われます

このように運転するかどうかについての判断力にも問題があり、加害者本人に責任を問えないような場合は、これを看護する家族が、漫然と運転を許容していたような場合、監督責任者として責任を問われることも考えられます。

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認知症のドライバーの刑事責任

交通事故により相手を死傷させた者には過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪の適用があります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)

前者は、7年以下の懲役刑・禁固刑または100万円以下の罰金刑が定められ、後者は、負傷の場合は15年以下の懲役刑、死亡の場合は1年以上の有期懲役刑が定められています。

てんかんや睡眠時無呼吸症などの特定疾患については、例え事故発生時に心神喪失状態になっていたとしても、予め運転が危険となる可能性を認識することで、そもそも運転をしないという事故回避措置を取ることができますが、認知症は認知力・判断力の低下が日常的な症状となるため、どの段階であれば結果を回避できたのかという判断が難しく、刑事責任を問うことは難しいことが多いように思われます。

認知症の運転手が原因で起こった過去の交通事故や判例

公表されている裁判例で、認知症のドライバーの責任について判じた者は多くありませんが、例えば、高速道路逆走の事案で認知症を理由に責任を否認したドライバーに100%の賠償を認めた事例(前橋地裁平成19年10月31日判決・自動車保険ジャーナル・第1717号)などがあります。

同裁判例では、「自らが認知症であり、高速道路運転の認識を有していなかった」との免責主張に対し、被告の症状や運転認識の欠如の事実を認めるに足りる証拠はないとして認知症による免責の主張を排斥しています

認知症での交通事故を防止するためには

認知症は、認知力・判断力の低下が日常的な症状であるため、運転を行う時点で既に自ら適切な判断が出来ない可能性が高いと言えます。

このため認知症のドライバーについては、家族や周りの人間、かかりつけの医師などが働きかけることにより、免許を返上させる、車を売却するなど、運転を控えさせるようにすることが重要になります

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