交通事故紛争処理センターを利用するなら知っておくべき6つのポイント

基礎知識
交通事故紛争処理センターを利用するなら知っておくべき6つのポイント

交通事故に遭うと、被害者が相手方の保険会社と示談交渉をおこないますが、示談交渉がまとまらなかった場合には訴訟となります。

交通事故の損害賠償請求に至るには、このような流れが一般的になっています。では、示談交渉が決裂した場合には常に訴訟をしなければならないのでしょうか。

実は訴訟をしなくても「交通事故紛争処理センター」というところで、引き続き和解交渉をしてまとまるケースもあるのです。本記事では、交通事故紛争処理センターについて知らないと損するポイントなど詳しく説明します。

目次
  1. 交通事故紛争処理センターの概要
  2. どのようなときに交通事故紛争処理センターを利用するのか
  3. 交通事故紛争処理センターの利用に弁護士への依頼は必要?
  4. 交通事故紛争処理センターの利用手続きの流れ
  5. 交通事故紛争処理センターの利用に必要な費用
  6. 交通事故紛争処理センターで行わない業務とは
  7. まとめ

交通事故紛争処理センターの概要

まず交通事故紛争処理センターの概要について説明します。

交通事故紛争処理センターは、交通事故の関係者の利益の公正な保護を図るために、交通事故に関する法律相談や和解の斡旋などを行う公益財団法人です。

交通事故の被害者は、自賠責保険などの保険制度により一定額の補償を受けることができます。

ですが、被害者の多くの方々は、交通事故の賠償問題に関わる法律や保険についての知識がなく、示談交渉に慣れていないません。そのため、示談交渉がスムーズに運ばずに、妥当な賠償額が得られないことが多々あります。

交通事故の損害賠償請求において、交渉がまとまらなければ裁判所を利用することが確実な方法です。しかし、訴訟は手続が煩雑であり長期にわたることや、追加費用がかかるため、ハードルが高く利用されにくいのが現状です。

このような状況を踏まえ、交通事故紛争処理センターは、より法律の相談をしやすくなるように、和解斡旋機能を持つ「交通事故裁定委員会」として昭和49年に発足されました。

昭和53年には組織を拡大し、総理府(現在の内閣府)所管の「財団法人交通事故紛争処理センター」へと発展することで、中立公正の立場を強化しました。その後、平成24年4月1日には財団法人から公益財団法人へ移行しました。

交通事故紛争処理センターは発足以来、平成28年度までに受付けた相談取扱件数は、累計で約22万3,000件に上り、その内、約14万9,000件で示談が成立しています。

最近のデータでは、和解斡旋などにより終了した事案に対する示談成立の割合が約9割になっています。
参考:公益財団法人 交通事故紛争処理センター

どのようなときに交通事故紛争処理センターを利用するのか

先述した通り、損害賠償請求において和解の交渉がスムーズに運べない場合や妥当な賠償額が得られなかった場合に利用されます。

特に、当事者のいずれもが裁判をせずに示談をまとめたいと考えるケースでは積極的に利用されます。

近年、この存在が徐々に認知されてきたこともあり、任意保険会社の担当者から交通事故紛争処理センターの利用を勧められることもあります。

交通事故紛争処理センターの利用に弁護士への依頼は必要?

交通事故紛争処理センターを利用するにあたり、ご自身で費用をかけて弁護士に依頼する必要はありません。

同センターでは、被害者本人が賠償問題の法律知識がなく、交渉に不慣れな場合でも、センターの相談担当弁護士が中立公正な立場から、適切な対応をします。

センターの相談担当弁護士の費用はすべて無料です。ただし、手続きには交通事故や医療の知識のみならず、交渉技術などどうしても専門性の高い要素も含まれます。

そのため、弁護士を代理人としてつけて手続きを進める方もいらっしゃいます。

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交通事故紛争処理センターの利用手続きの流れ

続いて、交通事故紛争処理センターの具体的な手続きの流れについて説明します。まず、交通事故の被害者が電話による相談の予約申込みをします。

現在、同センターは全国12ヵ所にあり、被害者の住所もしくは、交通事故が発生した場所に応じて、下記の通り利用申込先が決定します。
交通事故紛争処理センターの利用申込先


それぞれのセンター所在地の連絡先は、以下リンク先をご参照ください。
参考:交通事故紛争処理センター所在地の連絡先


予約申込みの電話を入れると、そのあとは相談予約の受付をします。ここでは、実際にセンターに行く日時を調整します。ご自身の予定とセンターの予定のすり合わせをしましょう。

その後、センターから当日までに必要な書類を用意するように指示されるとともに、利用申込書と利用規定の送付があります。利用申込書を記入した上で、相談当日にセンターに提出しましょう。

用意すべき資料には、交通事故証明書や、事故発生状況報告書、保険会社などの賠償金提示明細書各種診断書領収書などがあります。

個別の事件に応じて提出を指示される資料が変わるので、用意すべき資料は、事件ごとにセンターの指示を仰いでください。

さて、いよいよ相談当日です。予定時間より少し前に到着し、窓口で受付を済ませましょう。

その上で利用申込書と各種資料を提出し、相談担当弁護士による面接があります。初回は人損が発生しているケースでは被害者1人だけが参加します。

ここでは、各種資料に関する質問や、これまでの交渉経緯、相談だけで終わることができそうか、そうでなければ相手方を呼び出す必要があるか、などの質問がなされますので、1つ1つ丁寧に答えましょう。

そして、被害者が和解斡旋を相談担当弁護士に要請し、相談担当弁護士が和解斡旋が必要と判断した場合には、センターから相手方保険会社などに来所を要請し、当事者の出席を得て和解斡旋に入ります。

この場合、第2回目以降から当事者双方が出席した上で和解斡旋の手続きに入ります。

さて第2回目の期日です。

ここでは、申立人、相手方(保険会社など)及び相談担当弁護士が立ち会います。相談担当弁護士が当事者双方から話を聞いて、中立公正な立場で争点・賠償額など、和解のための斡旋案(解決方法)をまとめ、当事者双方に提示します。

第2回期日で解決方法が提示されない場合には第3回目までに提示がなされます。このとき、相談担当弁護士は金額調整を行うわけではありません。

当事者双方は、相談担当弁護士から提示を受けた解決案に従うか、従わないかを決定するだけです。ここで、当事者双方がこの解決案に従うという意思表示をすればその紛争は解決します。

ですが、当事者の一方が解決案に従わないとの意思表示をした場合には和解斡旋は不調となります。当事者双方は、通知を受けた後14日以内に限り個別事案の審査の申立をすることができます。

では、個別事案の審査とはなんでしょうか。「審査」とは、和解斡旋とは別の手続きであり、法律学者、裁判官経験者及び経験豊富な弁護士で構成された審査会で行います。

審査では、争点や事故の状況について当事者双方から改めて説明を受けたうえで、審査員の合議により裁定(結論)を出します。

審査に申立てられた事案は、事前に相談担当弁護士が関係書類とともに審査会に対して、争点、当事者双方の主張を説明し、開催の予定期日が決められます。

審査の結果、結論を示す裁定が行われます。申立人は裁定には拘束されませんが、申立人が裁定に同意した場合には、保険会社などは、審査会の裁定を尊重することになっていますので、和解が成立することになります。

そして、申立人が裁定に同意すれば、裁定の内容に基づき、示談書又は免責証書が作成され、保険会社などにおいて支払手続きが行われます。

なお、人身事故の場合は、通常は3回~5回で和解が成立しています。また、物損事故の場合は、通常1回~2回で和解が成立しています。

また、交通事故紛争処理センターにおける手続きが終了した場合は、再度の利用申し込みはできませんので、注意してください。

交通事故紛争処理センターの利用に必要な費用

交通事故紛争処理センターは、全て無料で利用することができます。

ただし、医療関係書類の取付け費用、センターまでの交通費(駐車場代を含む)、資料作成費(コピー代など)、通信費(電話代など)などの費用はご自身の負担となります。

交通事故紛争処理センターで行わない業務とは

以上の通り、交通事故紛争処理センターは交通事故に関する紛争を解決する機関なのですが、次の紛争は利用対象ではありません。

  • 自転車と歩行者、自転車と自転車の事故による損害賠償に関する紛争
  • 搭乗者傷害保険や人身傷害補償保険など、自分が契約している保険会社又は共済組合との保険金、共済金の支払いに関する紛争
  • 自賠責保険(共済)後遺障害の等級認定に関する紛争

また、次の場合は原則として交通事故紛争処理センターにおける手続きが行われません。 ただし、自動車事故の加害者、保険会社又は共済組合が同意した場合は例外的に手続きを行う場合があります。

  • 加害者が任意自動車保険(共済)契約をしていない場合
  • 加害者が契約している任意自動車保険(共済)の約款に被害者の直接請求権の規定がない場合
  • 加害者が契約している任意自動車共済が、JA共済連、全労済、交協連、全自共及び日火連以外である場合
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まとめ

以上、交通事故紛争処理センターについて説明しました。これまで説明したように、多くのメリットを持つ紛争解決機関ですが、平日の日中に開催されることも多いため、なかなか行けない方も多いと思います。

そのような場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。

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