交通事故の責任は運転手以外にも?運行供用者責任と使用者責任とは

基礎知識
交通事故では運転手以外にも責任がある!運行供用者責任とは

交通事故を起こしてしまうと、さまざまな責任が生じます。
特に、交通事故の加害者(運転手)は、民事で損害賠償、行政罰として免許の停止・取消など、場合によっては刑事で懲役又は罰金という方法で責任を問われます。自分のお金は減るし、免許関係の手続で何度も関係各所に赴かなければなりませんし、懲役や罰金という形で前科がつくと人生にも影響がある、非常に重い責任が生じます。
では、運転手以外の人が交通事故の責任を問われる場合はあるのでしょうか。また、運転手以外の人はどういう形で責任を問われるのでしょうか。
本記事では、運転手以外に問われる責任についてご説明致します。
この記事を読んで、「運転をしないから大丈夫」と安心している方にも、危機感をもって頂ければ幸いです。

目次
  1. 運行供用者責任とは
  2. 運行供用者責任が認められた事例
    1. 自動車を貸している人
    2. 泥棒が事故を起こした場合の所有者
    3. 自動車の名義人
    4. 運行代行業者
    5. 運送業者
    6. 自動車修理業者
    7. 元請人
    8. 会社(使用者)
  3. 使用者責任とは
  4. 飲酒運転の場合
    1. 飲酒運転の可能性のある者に車両を提供した行為
    2. 飲酒運転をする可能性がある者に酒類提供した者
    3. 運転手が飲酒運転をすることを知りながら同乗した者
  5. まとめ

運行供用者責任とは

運転手以外で責任を負う者に、「運行供用者」があります。また、運行供用者に対して責任を負わせる法律は、自動車損害賠償保障法といいます。


まずは、この法律ができた背景について説明しましょう。

従来、交通事故が発生した場合は、民法709条(不法行為)に基づき、損害賠償請求をすることになっていました。

しかし、不法行為に基づく損害賠償請求をするためには、加害者のよそ見運転やスピードオーバーなど、加害者の故意又は過失を被害者側が立証しなければなりません。


この立証はとても難しいため、「被害者にそんな過大な証明を求めるのはおかしい」と批判されてきました。

また、交通事故の加害者が財産を持っていなければ、被害者は交通事故の損害を回収できなくなります。そこで登場したのが「自動車損害賠償保障法」です。


この法律では、故意又は過失の不存在を加害者が証明しなければならないこととし、運転手だけでなく「運行供用者」にまで損害賠償請求を可能にしました。

では、「運行供用者」とは具体的にどのような人を指すのでしょうか。


「自己のために自動車を運行の用に供する者」と法律上で規定されいます。これはすなわち、以下①②を条件としています。


運行を支配していること(「運行の用に供する」)

運行により利益を得ていること(「自己のために」)

①の運行支配は、客観的なものや事実上のものだけでなく、管理監督可能性も含めて判断されます。


そして、②運行利益も、客観的に見て利益を得ていると判断されればよく、実際に利益が発生していたかどうかは問いません。

このように、運行供用者に該当する範囲はかなり広くなっています。

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運行供用者責任が認められた事例

実際にあった裁判例を見てみましょう。

自動車を貸している人

自動車を貸していると一口に言っても、いろいろなケースがあります。以下では類型的に運行供用者に当たるかを考えていきます。

まず、レンタカー業者は運行供用者に当たるとされるケースが多いです。


一般に、レンタカー業者は、自己の所有する自動車の賃貸借契約を締結する際に、利用申込者に対して運転免許を持っているかどうかを審査し、使用時間が短時間なのに料金は高く、ガソリン代金も利用者負担となるので、運行支配性・運行利益性が認められます。

次に、リース会社はどうでしょうか。リース会社は運行供用者に当たらないとされることが多いです。


確かに自動車の所有権はリース会社にありますが、それは単に割賦金の支払いを担保するためだけであって、自動車の管理支配はその借主が全面的に行っていると考えられるからです。

では、個人的に自動車を貸した人はどうなるでしょうか。例えば、Aが所有している自動車を知人のBに無償で貸し、借主のBが事故を起こした場合などが典型的です。


このケースでは、Aさんの運行支配性、運行利益性、及び管理責任を総合的に考慮して判断されるので、判断はまちまちです。

とある判例で、Bから「2時間だけ貸してほしい」と言われてAはBに対して自動車を無償で貸したが、Bは「もう少し貸してほしい」と言って約束通りに返還せず、1か月後に事故を起こした例がありました。


このケースでは、Aは運行を指示・制御しうる立場になく、運行利益もAに帰属していないとして、Aは運行供用者に当たらないとされました。

他方、Bから「自動車が修理中だから代替車として自動車を貸してほしい」と言われてAはBに自動車を無償で貸したが、返還約束から41日後にBが事故を起こしたケースでは、Aが自動車を取り戻そうとする積極的な行為をしておらず、運行供用者に当たると判断されたケースもあります。

このように、自動車の貸主であっても、きちんと管理していなければ運行供用者に当たりうるのです。

泥棒が事故を起こした場合の所有者

では、自動車を盗んだ泥棒が事故を起こした場合はどうなるのでしょうか。自動車を盗まれた被害者が責任を負うのはおかしいという価値判断もあるでしょう。


しかし、次のような判例があります。

Aがエンジンキーをつけたまま公道に自動車を放置しており、通りがかったBがこの自動車を盗みました。そして、その現場から約百数十メートルのところで事故を起こしました。


このケースでは、Aは自動車が放置されていることを知りながら何の措置もとらなかったこと、盗まれた現場と事故現場が近いことから、Aが運行供用者に当たるとしました。

もちろん、類型のケースで、自動車を盗まれたAが運行供用者に当たらないとされた例もあります。ですが、自動車を盗まれた被害者だからといって必ずしも運行供用者に当たらないわけではないので要注意です。

自動車の名義人

自動車の名義だけを貸していた場合はどうでしょうか。この場合の判断もまちまちで、具体的な事情を総合的に考慮して判断されます。

父Aと同居して家に保管されていたA名義の自動車を、Aの子であるB(20歳)が所有しており、所有者のBが事故を起こしたケースでは、Aが登録名義人となった経緯やBとの身分関係に加えて、Bに対して自動車の運行により社会に害悪を与えないように監視監督すべき立場であるとして、Aは運行供用者に当たるとされました。

他方、Aが事故当時、すでにBに自動車を売却しており、単に登録名義の返還を怠っていた場合は、Aは運行供用者には当たらないとされています。

運行代行業者

運転代行とは、自動車で出掛けて飲酒などのために運転ができなくなり、運転代行業者に運転を依頼することをいいます。


近年、飲酒運転に対する危機感が社会的に増大したことで、運転代行業が急速に普及しています。

この運転代行業者は運行供用者に当たるのでしょうか。

判例は、運転代行業者は、運転の代行を有償で引き受けて依頼者に自動車を安全に運行して目的地まで運送する義務を負う者であり、自動車を使用する権利を有し、自己のために運行の用に供しているとして、運行供用者に当たるとしました。

運送業者

続いて、自動車の運送業者はどうでしょうか。

例えば、AがBから自動車を購入し、その運送をCが行う場合、判例ではCが運行供用者に当たります。所有者であるAは、運行支配を失っているからです。

自動車修理業者

それでは自動車の修理業者はどうでしょうか。

判例は、運行供用者に当たるとしています。


自動車の所有者は、修理期間中に運行を支配することができず、その支配は修理業者にゆだねられているためです。

元請人

では、元請人はどうでしょうか。例えば、元請人Aが、下請人Bが起こした事故の責任を負わなければならないのでしょうか。

判例は、AとBの関与形態などの事情により判断を分けています。


例えば、Aは常々Bに対して配車の指示をし、随時工事現場の状況を見まわったりするなど、間接的に運搬業務の指揮監督をしていた事案では、AもBとともに、自動車の運行を支配し、運行の利益を得ているとして、運行供用者に当たるとされました。

他方、Aがそのような運搬業務の指揮監督をしていないケースでは、Aは運行供用者に当たらないとされています。

会社(使用者)

最後に、従業員の事故について、会社が運行供用者に当たるかどうかを見てみましょう。

会社は、次に説明する使用者責任(民法715条)という制度の下でも責任を負います。両者の違いをまずは明らかにしておきましょう。

自動車損害賠償保障法の制度のもとでは「会社が運行支配・運行利益を得ているか」という観点から賠償責任を負うかどうかを判断します。


他方、使用者責任においては「客観的に見て職務の範囲内かどうか」、すなわち外部から見て「これは仕事の一環で起こった事故だな」と思えるかどうか、という観点から賠償責任を負うかどうかを判断します。


マイカーで事故を起こした場合と社用車で事故を起こした場合が典型的な違いです。

会社が運行供用者に当たるかどうかについての判例は次の通りです。

まず、会社が従業員のマイカー通勤を容認していた場合で、従業員は会社から手当ても支給されており、事故当日も会社からの指示にしたがって自宅から工事現場に出勤していた際に事故を起こしたケースでは、会社は運行供用者に当たるとされています。

また、会社がマイカー通勤を容認はしていないものの、黙認していた場合は、従業員が工事現場から会社の寮に帰宅する際に事故を起こしたケースでも、会社は運行供用者に当たるとされています。

ただし、会社が従業員に対して会社所有の自動車を私用で用いることを厳重に禁止しており、同乗者がこれを知りながら積極的にそそのかして従業員に運転させて事故を起こした場合は、会社は運行供用者に当たらないとされています。

使用者責任とは

使用者責任という制度により会社が責任を負う場合があります。

これは、簡単にいいますと、従業員が会社の事業を執行するにつき他人に損害を加えた場合に、会社が損害賠償責任を負うという制度です。


ここにいう「事業を執行するにつき」とは、客観的にみて職務の範囲内にあるかどうかを基準に判断されます。

例えば、従業員が社用車を持出し、事故を起こした場合には、外形的に見れば職務の範囲内にあるので、「事業を執行するにつき」という要件を満たし、使用者責任が肯定されます。

飲酒運転の場合

また、飲酒運転の場合には運転手のほかに次の者に刑罰が科されます。この件については、以下の記事で詳しく記載しておりますので、そちらを参照してください。

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飲酒運転で課せられる罰則の重さと損害賠償への影響とは
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飲酒運転で課せられる罰則の重さと損害賠償への影響とは

飲酒運転とは、お酒を飲んで自動車を運転する行為をいいます。ご存じの通り、お酒を飲んで自動車を運転することは…

 

飲酒運転の可能性のある者に車両を提供した行為

・酒酔い運転 :5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
・酒気帯び運転:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

飲酒運転をする可能性がある者に酒類提供した者

・酒酔い運転 :3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
・酒気帯び運転:2年以下の懲役又は30万円以下の罰金

運転手が飲酒運転をすることを知りながら同乗した者

・酒酔い運転 :3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
・酒気帯び運転:2年以下の懲役又は30万円以下の罰金

まとめ

以上の通り、自動車の運転手以外にも実に多くの人が交通事故の責任を負う可能性があるのです。


自動車を運転しない方や自動車をお持ちでない方も、思わぬ賠償責任を負わないよう充分ご注意ください。

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