免許がなくても懲役刑に!飲酒運転の同乗者の罰則・罰金とは?

基礎知識
弁護士監修
免許がなくても懲役刑に!飲酒運転の同乗者の罰則・罰金とは?

酒を飲んだドライバーが運転する自動車に乗ると、ドライバーだけでなくその同乗者も罰せられます。

同乗者だけではありません。飲酒運転に使われた自動車を提供した者も罰せられますし、飲酒運転のドライバーに酒を提供した者も罰を受けます。

「同乗者は、自分が酒を飲んでなければ罰せられない」「同乗者は免許を持っていなければ大丈夫」という話も流布していますが、すべて嘘です。

正確な知識を身につけ、いまいちど「飲んだら運転しない」「飲んだ人に運転させない」を徹底してください。

目次
  1. 刑事処分と行政処分の違い
    1. 同乗者と搭乗者の違い
  2. 「酒酔い」は「酒気帯び」より悪い状態を指す
  3. 飲酒運転者本人への罰とは
    1. 酒気帯び運転は最高懲役3年
    2. 飲酒検知拒否で懲役も
    3. 酒酔い運転は最高懲役5年
  4. 飲酒運転の同乗者への罰とは
  5. 飲酒運転した者への自動車提供者の罰とは
    1. 自動車を貸したときは酒を飲んでいなかった場合は?
  6. 飲酒運転した者への酒の提供者の罰とは
  7. 飲酒運転の罰則一覧
  8. まとめ

刑事処分と行政処分の違い

飲酒運転関係の罰には刑事処分と行政処分があります。刑事処分は道路交通法によって罰せられ、懲役や罰金が科されます。行政処分は免許の取り消しや停止の処分のことです。

また、飲酒運転をして事故を起こし相手にけがをさせたり死亡させたりした場合は、刑法の危険運転致傷罪などで罰せられ、さらに重い刑が科せられます。

ここでは、危険運転致傷罪を除いた飲酒運転のケースに絞って説明します。

同乗者と搭乗者の違い

同乗者とはドライバー以外で車に乗っていた人のことです。同乗者の座席の位置は関係なく、助手席でも後部座席でも同じ同乗者です。

したがって飲酒運転が発覚したときにドラーバーと一緒に罰せられる同乗者はどこに座っていても関係ありません。ちなみに搭乗者とはドライバーを含む車の中にいた全員のことです。

「酒酔い」は「酒気帯び」より悪い状態を指す

飲酒運転には酒酔い運転と酒気帯び運転の2種類があり、酒酔い運転のほうがより悪い状態をさします。

定義としては、呼気中のアルコール濃度が0.15mg/L以上検知された場合、酒気帯び運転と認定されます。数値の上限はありません。

酒酔い運転はアルコール濃度などの数値に関係なく、呂律が回らなかったり真っすぐ歩けなかったりして、警察官が「酒に酔っている」と判断したときに認定されます。

ちなみに体重70㎏の人が350mlの缶ビールを1本飲みきらなくても呼気のアルコール濃度は0.15㎎/Lに達する可能性があります。

一口でも酒を飲んだら運転してはいけない」と言われるのはそのためです。

飲酒運転者本人への罰とは

飲酒運転の同乗者の罰を説明する前に飲酒運転者本人の罰を紹介します。飲酒運転者本人の罰と比較することで、同乗者たち関係者が「相当重い罰」を受けることがわかるからです。

酒気帯び運転は最高懲役3年

酒気帯び運転をした者(本人)は、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科されます。可能性としては飲酒運転しただけで刑務所に入ることもあるということです。

事故を起こしていなくても、です。

行政処分では、呼気中のアルコール濃度が0.15~0.25mg/Lの場合、90日の免許停止と違反点数13点です。0.25mg/L以上の場合、免許取り消しで欠格期間2年、違反点数25点です。

免許停止は一定期間がすぎれば再び自動車を運転することができますが、免許取り消しは免許が没収されるので自動車はもう運転できません。

免許取り消しの処分を受けた者が運転するには、再び自動車教習所などに行き、免許を取得するしかありません。

なお、欠格期間とは免許を取得できない期間のことです。自動車教習所に行くことができない期間と考えておいてください。

飲酒検知拒否で懲役も

検問などで警察から飲酒検査を受けるよう指示され、それを拒否すると飲酒検知拒否となり、3カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

酒酔い運転は最高懲役5年

酒酔い運転をした運転手の罰は5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。行政処分としては、免許取り消しで欠格期間は3年、違反点数は35点です。

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飲酒運転の同乗者への罰とは

飲酒運転の同乗者への罰とは

飲酒運転の自動車の同乗者の刑罰は、運転者の飲酒状況によって決まります。同乗者が酒を飲んでいようと飲んでいまいと関係ありません。

また同乗者の運転免許の有無は、行政処分には関係してきますが、刑事処分には影響しません。

つまり、同乗者が免許を持っていなくても懲役刑を科されることもある、ということです。繰り返しになりますが「事故を起こしていなくても」です。

飲酒運転の自動車に「同乗する」とは、運転者が酒を飲んでいる状態であると知りながら、車に乗せてほしいと要求したり依頼したりして、その車に乗り込むことをいいます。

運転者が酒酔い運転をしていたら、同乗者は3年以下の懲役または50万円以下の罰金を科されます。このとき同乗者が運転免許証を持っていたら、免許取り消しや免許停止の処分が下されます。

運転者が酒気帯び運転をしていたら、同乗者は2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。同乗者が免許を持っていたら、やはり取り消しか停止になります。

「酒気帯び運転の本人の罰」と「酒酔い運転の同乗者の罰」の重さが同じになっています。

飲酒運転した者への自動車提供者の罰とは

飲酒運転をした者に自動車(車両)を提供した者は、実は罪が重く、運転者と同じ罰が科される可能性があります

酒酔い運転をしていた者に自動車を提供していたら、5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。酒気帯び運転をした者に自動車を提供していたら、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

いずれの場合も、自動車の提供者は免許取り消しか停止処分が下されます。

自動車を貸したときは酒を飲んでいなかった場合は?

ここで注意したいのは、運転者が酒を飲んでいないときに自動車を貸し、その後で自動車を借りた人が飲酒して運転した場合です。

この場合は、自動車を提供した人は、運転者が酒を飲んでいたことを知らなかったわけですから刑事罰の対象にはなりません

飲酒運転をした者に自動車を提供していた者が罰せられるのは、運転者が酒を飲んでいると知っていながら自動車を提供したときです。

もっとも、自動車を貸した人が、運転者の飲酒運転を知らなくても、自動車提供者は民事上の責任を負う可能性が高いでしょう。

もし飲酒運転者が人身事故を起こしたら、自動車の所有者(提供した人)の自賠責保険を使って補償することになります。

そして自賠責保険でカバーできないほどの補償が必要な場合、任意保険を使うことになりますが、その任意保険の運転者を家族限定にしていたら適用されません。

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飲酒運転した者への酒の提供者の罰とは

飲酒運転をした者に酒を提供した者も罰せられます

酒酔い運転をした者に酒を提供した者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。酒気帯び運転をした者に酒を提供した者は、2年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

いずれの場合も、酒の提供者が免許証を持っていれば取り消しや停止の処分を受けます。

飲酒運転の罰則一覧

上記で紹介した罰則内容を一覧表にまとめるとこのようになります。

表.飲酒運転の罰則一覧
罰則を受ける者 罰則 運転者の状態
酒酔い運転 酒気帯び運転
運転者本人 懲役期間 5年以下 3年以下
罰金 100万円以下 50万円以下
免許 免許取り消し・欠陥期間3年 免許取り消しまたは停止
違反点数 35点 13点または25点
同乗者 懲役期間 3年以下 2年以下
罰金 50万円以下 30万円以下
免許 免許取り消しまたは停止 免許取り消しまたは停止
自動車の提供者 懲役期間 5年以下 3年以下
罰金 100万円以下 50万円以下
免許 免許取り消しまたは停止 免許取り消しまたは停止
酒の提供者 懲役期間 3年以下 2年以下
罰金 50万円以下 30万円以下
免許 免許取り消しまたは停止 免許取り消しまたは停止

(2020年7月28日現在)

運転者本人と自動車の提供者の罪の重さが同じで、同乗者と酒の提供者の罪の重さが同じです。

飲酒者の自動車は「凶器」になるので、それを渡した自動車提供者の罪は行為者と同じくらい重いことがわかります。

同乗者も酒の提供者も飲酒運転を止められるのに止めなかったので、本人ほどではないにしてもかなり重い罪が科せられるのです。

まとめ

飲酒運転の自動車の同乗者や、自動車の提供者や、酒の提供者の罪が、意外に重いことを実感できたのではないでしょうか。

飲酒運転の同乗者や自動車・酒の提供者などに対する厳罰化は、飲酒運転者に関わるこれらの人たちこそが飲酒運転を助長させているという認識があるからです。こうしないと悲惨な事故がなくならないからです。

飲酒死亡事故件数は、1996年の1,296件から2016年の213件にまで減っています。20年で実に84%も減らしたのです。だから飲酒死亡事故をゼロにすることは不可能ではないのです。

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