親の運転をやめさせたい!高齢者に上手に免許返納させる方法とは。

高齢者ドライバーによる交通事故が、なかなか減りません。この問題は、事故を起こしている高齢者に悪気や悪意がなく、運転能力の低下という不可抗力によって事故を起こしているため、社会的に糾弾しにくいのです。
しかし、誰が引き起こそうと交通事故は悲惨な結果を招きます。自分の高齢の親の運転をやめさせたり、高齢者に運転をあきらめさせる方法を考えてみましょう。
- 目次
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高齢者運転の危険性とは
高齢者ドライバーが歩道に突っ込んで歩行者をなぎ倒したり、高速道路を逆走したり、アクセルとブレーキを踏み間違えてコンビニの店内に突っ込んだりする事故が後を絶ちません。
高齢者の運転が危険であることはデータからも明らかです。警察庁によると、免許を持つ人10万人当たりの死亡事故件数は、75歳未満では約4件ですが、75歳以上では約9件にもなるのです。
高齢になると、視野が狭くなって危険を察知できなくなったり、アクセルやハンドルなどの操作があやふやになったり、安全確認を怠ったりしてしまいます。
政府は2018年1月に、80歳以上の運転者の死亡者数を2020年までに200人以下にする目標を掲げました。ちなみに2016年の80歳以上の運転者の死亡者数は266人でしたので、24.8%減らすことになります。
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行政の取り組みと更新させない仕組み
全国の警察は、高齢者ドライバーに運転免許証の自主返納を呼び掛けています。行政機関も自主返納した高齢者に特典を渡す取り組みをしています。
札幌市では70歳以上の人が免許返納すると、自己負担1,000~17,000円で10,000~70,000円分公共交通機関に乗車できる敬老優待乗車証を交付しています。
そのほかの自治体でもタクシー料金を割り引いたり、引っ越し業者が料金を10%減額したり、信金が定期預金の金利を高くしたりしています。
こうした取り組みの効果は着実に現れていて、2006年の自主返納者数は年23,203人でしたが、2015年には年285,514人と10倍以上になっています。また自主返納に年齢制限はありません。
現在は、75歳以上の人が免許を更新するとき、認知機能検査と高齢者講習を受けなければなりません。
認知機能検査で記憶力と判断力が低くなっていると判定されると、医師による臨時適性検査を受けるか、医師の診断書で「認知症ではない」ことを証明しないと更新できません。
医師によって認知症と診断されたら免許を停止されるか取り消されてしまいます。
運転をやめたくない高齢者心理とは
75歳以上で認知症がある場合は行政の力で運転をやめさせることができます。しかし、75歳未満の高齢者や75歳以上で認知症がない人から強制的に免許を取り上げることはできません。
なぜ高齢者は運転をやめてくれないのでしょうか。運転をやめない心理を知っておくことで、自分の高齢の親の説得がしやすくなります。
まず地方に住んでいる高齢者の場合、バスやタクシーなどの公共交通機関が充実しておらず、免許証と自家用車が生活を支えていることがあります。
地方のスーパーマーケットのなかには、高齢者宅向けの宅配サービスを展開しています。しかし、高齢者としてもスーパーマーケットを訪れて多くの商品のなかから選びたい気持ちになるでしょう。
また釣りや登山や山菜取りなどを趣味にしている方も、車がないと遊びに行くことができなくなってしまいます。地方の高齢者にとって車はコミュニケーションツールでもあるのです。
能力が低下したことを認めたくない心理から「自動車の運転くらいできる」と考える高齢者もいます。免許の自主返納を自ら能力の衰えを認めるものだと感じる人もいるのです。それはプライドが許さないでしょう。
高齢者をうまく説得させる方法
家族が反対したにも関わらず高齢者が自動車の運転を続けて事故を起こしてしまったら、家族はとてもつらい思いをするでしょう。「強引にでもやめさせるべきだった」と後悔するはずです。
そうならないように、家族はなんとか高齢者を説得したいものです。
別の楽しみを教える
デイサービスに通わせる
親を介護保険制度のデイサービスに通わせてはいかがでしょうか。
デイサービスは、午前10時ごろに施設に行き、レクリエーションや入浴をしたり昼食を食べたりして、夕方に自宅に戻るといった内容になっています。自宅と施設の移動は送迎してもらえます。
デイサービスを使えば、車がなくなっても多くの人と交流することができます。
介護保険制度のデイサービスを利用するには、自治体で要支援認定や要介護認定を受ける必要があります。
要支援認定の場合「立ち上がりに見守りが必要」なレベルでよく、「日常生活上の基本動作はほぼ自分で行うことができる」人でも認定してもらえる可能性があります。
高齢者向け教室をすすめてみる
デイサービスを利用するには要支援以上の認定を受ける必要があります。しかし、見た目や体が何ともなくても、いざというときの判断能力が劣ってくるのも高齢者の特徴です。
このような高齢者には、下記のサイトや各自治体で開催されている高齢者向け教室などの受講をすすめてみるのもいいでしょう。
参考:ジモティー「高齢者向け|教室・スクール情報」
アマゾンやヤフーなどのネット通販を教える
買い物のために自動車を使う高齢者には、地元のスーパーマーケットの宅配サービスだけでなく、ヤフーやアマゾンなどのネット通販を活用してもらってはいかがでしょうか。
ネット通販なら買い物の醍醐味を失わせることなく、自動車は使わなくて済みます。スマホだと画面が小さいので老眼だとつらいでしょう。そこで大きめのタブレットを購入してはいかがでしょうか。
「まだまだ運転したい」という意欲がある高齢者なら、タブレットの操作方法を教えてあげれば使いこなせるようになるはずです。
家族で連携して説得する
親への免許自主返納の説得を1人に任せると、2人の仲が険悪になってしまうかもしれません。
親に子供が複数人いる場合、「この子の言うことは聞かないがあの子の言うことは素直に聞き入れる」ということがあります。そこで1人が説得に失敗したら、別の人が話をしてみてはいかがでしょうか。
また、高齢者は孫には弱いものです。
孫たちが集まって「おじいちゃん、おばあちゃん、もう運転しないでください」といった内容の寄せ書きをすれば、高齢者も心を打たれて免許返納をしてくれるかもしれません。
免許を自主返納した人に説得してもらう
家族総出で説得しても運転をあきらめてもらえなかったら、免許を自主返納した人に説得してもらってはいかがでしょうか。できれば顔なじみの人がいいでしょう。
免許返納の「先輩」から、
などといったリアルなエピソードを聞けば、「自分も運転をやめようかな」と考えてもらえるかもしれません。
費用対効果を説明する
高齢者だからといって必ずしも思考能力が落ちているとは限りません。頭脳明晰な高齢者には自動車の運転は費用対効果が悪いことを説明してみましょう。理屈で攻めてみるのです。
自動車の維持費や保険料、ガソリン代などの費用を書き出してコストを見える化すると、高齢者の納得を得られやすいでしょう。
高齢者が古い車に乗っていたら、燃費の悪さや排気ガスによって環境を汚染していることを伝えてみてください。
現代の自動車がいかに低燃費でクリーンであるかを理解できれば、「いまの車を乗り続けることはできないし、だからといってこれから新車を買うわけにもいかない」と思ってもらえるかもしれません。
また高齢者が交通事故を起こして人を死亡させてしまった新聞記事を切り抜いて渡すことも効果があります。
自損事故であっても、腰の骨や首の骨を骨折すると、骨が治っても寝たきり生活になることがあります。事故を起こすことがどれだけ老後の生活を脅かすかを説明してあげてください。
そして、免許証を自主返納することこそがシルバーライフを充実させることを示してあげてください。ウォーキングや歩いて買い物に出かけることで足腰が鍛えられ、健康を増進させることを教えてあげてください。
もし家族に高齢者の健康に関する知識がない場合は、主治医に話してもらってはいかがでしょうか。
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まとめ
運転することに生きがいを感じている高齢者もいまので、強制的な手段に打って出ないほうがいいでしょう。なるべく柔和に接してあげてください。
しかし高齢者が交通事故を起こすと、家族も大きな損失を受けます。そのため家族は、運転をあきらめさせることをあきらめないようにしてください。
あの手この手を使って、円満に免許返納に持ち込んでください。
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