狙われるのは自動車だけじゃない?当たり屋の最新手口と対処法とは。

走行中の自動車に自らぶつかっていき、わざと交通事故を起こしてドライバーから慰謝料をせしめる。これが「当たり屋」です。単純かつ幼稚な手口なので「昭和の遺物」と考える方も少なくないと思います。
しかし当たり屋は形を変えバージョンアップして現代社会にも生息しています。最近増えている巧妙な手口と当たり屋に遭遇してしまったときの対策を紹介します。
- 目次
自動車ターゲットの当たり屋には自動車タイプと自転車タイプがいる
昭和の当たり屋は、徐行運転している車に身ひとつで飛び込んでいき、実際はかすった程度なのに大げさにジャンプして転ぶ、という手口を繰り返していました。
さすがに現代の当たり屋たちは、このような死と隣り合わせの方法は使いません。
自動車をターゲットにした当たり屋は、自らも自動車を運転する「自動車タイプ」と自転車に乗ってターゲットの自動車に飛び込む「自転車タイプ」があります。
自動車タイプはターゲットの前を車で走り急ブレーキをかける
自動車タイプの当たり屋は自ら自動車を運転し、ターゲットの自動車の前を走り、わざとノロノロ走行をします。ターゲットが追い抜こうとすると今度はスピードを上げそれを阻止します。
このとき当たり屋は、ターゲットがいらつくのを待っているのです。ターゲットが冷静さを失ったところで信号待ちのチャンスを狙います。
当たり屋の自動車が先頭で、ターゲットの車がその真後ろについたとき、当たり屋は信号が青になっても出発しません。
ターゲットは、自分の後ろの別の自動車にクラクションを鳴らされ、あせります。
当たり屋はそのタイミングで自動車を走らせ、そして次の瞬間、サイドブレーキを引いて自動車を停止させるのです。
サイドブレーキを引くと自動車後部のブレーキランプが光らないので、ターゲットが走り屋の自動車の減速に気付かず衝突してしまうのです。
そして当たり屋は自動車を降りてきて、「さっきからあおられていたから衝突されると思っていた」などといいます。
あたかもターゲットが当たり屋に対して迷惑運転をしていたかのように主張するのです。
当たり屋はこのようにしてターゲットを精神的に追い込み、事故処理の主導権を握ろうとするのです。
自転車タイプは見通しの悪い交差点で自分の自転車を飛び出させる
自分が自転車に乗る自転車タイプの当たり屋は、見通しの悪い細い路地の一時停止がある交差点でターゲットを待ちます。当たり屋が待つのは一時停止違反をする自動車です。
ターゲットの自動車が一時停止ラインで止まらず交差点に自動車前部を突き出したときに、当たり屋は自分の自転車を自動車めがけて走らせます。
もちろん当たり屋は、自転車の前輪だけを自動車前部に当てます。
ターゲットの運転者は一時停止をしなかったという負い目があるので、うろたえてしまいます。その時点で当たり屋の思うつぼです。
以上はターゲットが自動車を運転しているケースです。しかし、自転車や歩行者も当たり屋のターゲットになることがあります。
自転車がターゲットにされることもある
最近は自転車に対する当たり屋も増えています。なぜ自動車ではなく、自転車への当たり屋が存在するのでしょうか。
その前に、昨今の自転車事故による損害賠償請求の事例を見てみましょう。
2008年に、少年が乗っていた自転車が女性に接触し、女性が意識不明の重体になる事故が起きました。
女性の家族が損害賠償を求める裁判を起こし、少年の親に9,500万円の損害賠償を命じる判決が出ました。裁判所は、被害女性の意識が戻らず寝たきり状態になったことを重くみたのです。
この少年は当たり屋ではありません。単純に不注意で事故を起こしだだけです。
この事件でわかるのは、自転車が加害者になる事故であっても多額の損害賠償金が請求されることがあるということです。
この判決は当たり屋と無関係な事例です。しかし、当たり屋も自転車事故の賠償金が高額になることを知っているといえます。
当たり屋にとって走行中の自転車にぶつかっていくことは、走行中の自動車に飛び込むより「安全」です。
自転車にはドライブレコーダーがついていないので、目撃者がいなければ当たり屋のほうも好き勝手に事故の様子を主張できます。
自転車をターゲットにした当たり屋は安全かつ高額な損害賠償を簡単に得られてしまうということです。
「スマホ歩行者」がターゲットになることもある
当たり屋がスマホに熱中している歩行者を狙うこともあります。戸外で歩きスマホをしていると、自分に近づく人やものにまったく気がつかないことがあります。当たり屋はその隙を狙います。
当たり屋は、本当はすでに壊れているパソコンやガラス製品などを持っていて、スマホ歩行者とぶつかったときにそれらを地面に落とし、「いま壊れた」と主張するのです。
歩きスマホやながらスマホはマスコミにも取り上げられることがあり社会問題になっています。
そのためスマホ歩行をしていた被害者は、事故の瞬間「やってしまった」「自分のミスだ」と思ってしまいます。当たり屋はターゲットが弱気になった瞬間を狙ってきます。
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当たり屋が犯罪集団の場合は被害者ひとりでの対応は困難
当たり屋がチームを組んでいると被害者がひとりで対抗するのは難しいかもしれません。当たり屋集団はターゲットが目撃者のいない場所に差し掛かるのを待って仕掛けてきます。
当たり屋の実行犯が事故を起こした後、その仲間が目撃者となりターゲットに過失があると証言するわけです。これでは被害者は自分に過失がないことを証明できません。
「すぐ警察」「とにかく記録」が対応策
ここまで当たり屋の最近の手口を説明してきました。では、実際に当たり屋に遭遇したらどうすればいいのでしょうか。
すぐに警察を呼ぶ
最初に、当たり屋に遭遇したらすぐに警察を呼びましょう。
相手が当たり屋かどうか確証できなくても、すぐにお金を要求してきたり、名刺や電話番号、勤務先を執拗に尋ねてきたりしたら、念のため警察を呼んだほうが無難です。
注意しなければならないのは、柔らかい対応をして、お金も要求せず、ただ電話番号を尋ねてくる当たり屋がいることです。これは警察に連絡させない手口です。
事故直後は体調に支障はないといいながら、後日電話をかけてきて、「この間の事故で後遺症が出た」と主張してくるかもしれません。
とにかく記録をとる
「あやしい」と感じたら、とにかく記録をとるようにしてください。自分の自動車にドライブレコーダーがついていたら事故の録画を消去しないようにしてください。
また相手との会話はスマホや携帯の録音機能を使って録音しておきましょう。特に相手が怒鳴っている声は重要です。その内容が恐喝になれば恐喝罪で警察に突き出すことができます。
相手が「ぶつかった」「痛い」といっている部位はスマホのカメラで撮影しておきましょう。
撮影しておかないと、当たり屋はターゲットと別れてから自分でケガをつくって「事故のときにできた傷だ」と主張することもあります。こうなると反証できません。
当たり屋は毅然とした態度に弱い
当たり屋に対しては毅然とした態度でいることが重要です。
当たり屋は、「ターゲットはカネで済ませたいと思うはずだ」と考えています。そのため、被害者(ターゲット)が「警察を呼ぶ」といえば、大半の当たり屋はうろたえるはずです。
ターゲットが自動車を運転していた場合、当たり屋は「警察を呼んだら人身事故扱いにするぞ。警察を呼ばずにここで示談するならカネで解決する」と揺さぶりをかけてきます。
それでも「人身事故にしてもいいから警察を呼ぶ」という態度を貫いてください。
当たり屋が「警察を呼んでもいい」といったらどうする?
一般的には、ターゲットが毅然とした態度を取ると弱いのが当たり屋ですが、毅然とした態度に出るターゲットを想定している当たり屋もいます。その場合、当たり屋も警察を呼ぶことに同意するでしょう。
ターゲットになってしまった人が自動車を運転していたら、警察はターゲットが人身事故を起こしたと認定し、行政処分をくだすかもしれません。つまり違反切符を切ることになります。
人身事故の場合、被害者(この場合、当たり屋のこと)が軽傷でも最低4点減点されてしまいます。
しかし、それでも警察を呼んだほうがいいのです。もしかしたらその当たり屋は以前も似た事故の「被害者」になっているかもしれません。そうなれば警察は詐欺ではないかと疑うでしょう。
警察に通報しないと、当たり屋に長期間にわたってつけこまれることになりかねません。そうなると、当たり屋が所属する犯罪者ネットワークの「カモ」にされてしまうかもしれません。
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まとめ
当たり屋や、当たり屋らしき者と遭遇したら、警察の通報と同時に弁護士に相談することをおすすめします。刑事事件にならない場合、警察が介入しないかもしれないからです。
知っている弁護士がいなくても心配ありません。当サイトでは無料相談できる交通事故に強い弁護士を多数掲載しています。
交通事故に強い弁護士は当たり屋の手口を心得ているので、その場で「何をすべきか」を教えてくれるはずです。悪に対抗するには、正義を味方につけることが重要です。
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