自損事故でも警察への届け出が必要!届け出がないと保険が使えない場合も。

自動車で自損事故を起こしたときに、自分以外に被害者がいないからといって警察へ届け出ないのは間違った対応です。事故直後に警察に報告しておかないと後になっていろいろな弊害が生じる恐れがあるからです。
また、自損事故後に運転者の体に異変がない場合でも念のため病院に行っておくことをおすすめします。深刻な後遺症が発症する可能性があるからです。
- 目次
自損事故とは
自動車の自損事故とは、運転車が単独で起こし、他人を巻き込んでいない交通事故のことです。
自損事故の形態はさまざまで、ガードレールや電柱や塀に衝突したり、コンビニの建物に突っ込んだり、路肩をはみだして畑のなかに落ちたりすることもあります。
自損事故による損害には、以下のようなものがあります。
つまり自損事故による被害や損害は決して小さくないのです。そのため以下で紹介する「自損事故を起こしたときにすべき5つの行動」は、ぜひ実行してください。
自損事故を起こしたときにすべき5つの行動とは
救急車を呼ぶ・助けを呼ぶ
自損事故を起こしてケガをしたり、自動車のなかから抜け出せなくなったりしたら、手元の携帯電話やスマホを使って救急車を呼んでください。
もし携帯電話やスマホが取り出せない状況であれば、大きな声を出して助けを呼んでください。例えば畑に落ちる自損事故の場合、道路に「事故の跡」が残っていないことがあります。
そのため事故現場の近くにいる人たちが事故に気付かない可能性もあるのです。
2次事故を予防する
自損事故を起こして体を動かせることを確認したら、すぐに自動車から出て、ほかにも被害者がいないかどうか確認してください。
事故発生直後は気が動転しているので、実際は負傷者が出ているにもかかわらず自損事故と勘違いしてしまうことがあります。
そのため、事故現場をしっかり確認して負傷者がいないことを確かめてください。また事故を起こした自分の自動車が道路をふさいでいたら速やかに路肩に寄せましょう。
エンジンがかからない場合でも、周囲の人の協力をあおぎながら自動車を道路の外に出しましょう。また、破損によってタイヤがロック状態になり、人の力で自動車を動かせないこともあります。
このような場合は、トランクのなかにある三角停止表示板を使って、後続車に事故車両があることを知らせてください。
高速道路で自動車が故障したときに三角停止表示板を設置しなかったら、道路交通法の故障車両表示義務に違反したことになり、5万円以下の罰金が科される可能性があります。
一般道路では事故後の三角停止表示板の設置は義務化されていません。それでも三角停止表示板を設置することは2次被害の予防になるので実施したほうがいいでしょう。
警察に届け出る
自分の安全を確保できたら速やかに警察へ届け出ましょう。携帯電話やスマホで110番通報します。
警察へ届ける項目
- 警察官が電話に出たら、次の内容を簡潔に伝えてください。
-
- 自動車事故を起こした
- 事故現場の詳しい住所。住所がわからない場合は目立つ建物など
- 救急車が必要かどうか
(例:「救急車を呼んでください」または「救急車は必要がありません」) - 自損事故であること、ほかに被害者はいないこと
- 自分のケガの状況
- 事故現場の状況
(例:「ガードレールに衝突した」「自動車が道路をふさいでいるが動かせない」など)
電話口の警察官はそのほかにも質問をしますので事実を伝えてください。後は警察官を待つだけです。
病院に行く
自損事故を起こしたときに体を強打したら、ケガや痛みが大きくなくても、念のため病院に行って検査してもらいましょう。もちろん体が動くのであれば救急車を呼んではいけません。
病院に行くのは事故処理が片づいた後でかまいませんが、あまり日にちが経たないようにしてください。遅くとも事故の翌日か翌々日には行くべきでしょう。
これは、交通事故を起こしてしばらくは体に異変がなかった場合でも時間が経過して後遺症が発症する恐れがあるからです。
交通事故の後遺症のひとつに脳脊髄液減少症(のうせきずいえきげんしょうしょう)があります。事故の衝撃で脳と脊髄のなかにある髄液が漏れ出す病気です。
少量ずつ漏れている場合すぐには症状が出ないのですが、悪化すると頭痛、聴力と視力の低下、吐き気、めまい、疲れやすさなどが生じます。
脳脊髄減少症が自損事故によって発症したとしても、事故を起こしたときに警察に届け出ていなければ病気と事故の因果関係を証明できません。
自動車の任意保険に人身傷害保険など自損事故の運転者の治療費を補償する特約があります。
しかし、後遺症が自損事故によって発症したことを証明できなければ補償されない可能性もあります。
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保険会社に連絡する
自損事故を起こしたら保険会社にも連絡をしておきましょう。任意保険には車両保険のように自損事故にも使える特約があります。
しかし、加入した契約者が何の特約に加入しているかを忘れてしまっていることがあるのです。
自損事故が起きてしばらばく経ってから、実は保険金が支払われるケースだったことが判明することは珍しくありません。
そこで自損事故を起こしたら、保険会社の営業担当に事故の状況を詳細に伝え、補償に該当するかどうか確認することをおすすめします。
また、自動車保険は自賠責保険と任意保険の二つがありますが、自賠責保険には自損事故に対する補償がありません。
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警察へ届けなかった場合
警察へ届け出ないと罰則がある
自損事故でガードレールや電柱などに衝突した場合、警察は「交通事故」と認定します。
自損事故を起こした運転者は交通事故を警察に報告する義務があります。これは道路交通法第72条第1項に規定されています。重要な条文なので要約を紹介します。
- 道路交通法第72条第1項の要約
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- 交通事故を起こした運転者や乗務員は、直ちに車両の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止するなどの必要な措置を講じなければならない。
- 運転者は最寄りの警察署に、交通事故が発生した日時、場所、死傷者の数、負傷者の負傷の程度、損壊した物、損壊の程度、事故車両の積載物、すでに講じた措置を報告しなければならない。
つまり、自損事故を報告しないと道路交通法第72条違反になるわけです。この違反には3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金という罰則が設けられています(道路交通法第119条)。
警察へ届け出ても免許の点数は変わらない
警察へ届け出ると、免許の点数が減点されるのではないかと不安になる人もいるでしょう。
しかし、運転ミスによる自損事故であれば、ガードレールなどにぶつけたことに対する罰則はありません。また免許証の点数が減点される行政処分も受けません。
ただ、運転ミスではなく自動車を故意にガードレールにぶつけたりした場合は、器物損壊罪(刑法第261条)や過失建造物損壊罪(道路交通法第116条)として懲役や罰金が科されます。
警察へ届け出ないでいると「連絡できない理由がある」と疑われる
自損事故後、直ちに警察へ届け出ないと、後で事故が発覚したときにあらぬ疑いをかけられる恐れがあります。
警察官は自損事故を起こした運転者が届出をしなかったのは「届出できない理由があったのではないか」と考えます。
したがたって、必ず「なぜ事故直後に警察に連絡しなかったのか」と聞かれることになります。
つまり自損事故を警察に届け出ることは、その事故が確実に自損事故であったこと、つまり誰も傷つけていないことを警察に認定してもらう意味もあるのです。
警察へ届け出ないと保険金が支払われない
自損事故であっても警察に届け出ておかないと、任意保険の車両保険を使って自分の自動車を修理することができなくなる可能性があります。
自損事故を起こした直後に自動車を確認したところ、大きな損傷がないことから「任意保険の車両保険は使わない」と判断したとします。
しかし、後日エンジンフード内(エンジンが収まっている空間)に大きな損傷がみつかったとします。
実は、保険会社によっては交通事故証明書がないと車両保険が使えないことがあります。
このとき運転者が車両保険を使って修理しようと保険会社に連絡すると「交通事故証明書」を求められるでしょう。しかし交通事故証明書は警察が事故を調査していないと発行されません。
この段階で警察に自損事故の届出をしても交通事故証明をしてくれない可能性があります。
時間が経過してしまったことで、その損傷が自損事故によるものかどうか立証できないからです。また、そもそも本当に自損事故が発生したのか確認できないかもしれません。
まとめ
自損事故を起こして保険会社に連絡したところ、「その事故内容では補償できない」「保険金を支払うことができない」と回答されることがあります。しかし、あきらめてはいけません。
自動車の任意保険の場合、保険金を支払うケースかどうかは担当者や営業所などによって「微妙に異なる」ことがあるからです。
もし補償内容や保険金の支払いについて保険会社と見解が異なったら、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。
一度「保険金は出せない」という結論が出ても、それを撤回できるかもしれません。
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