交通事故問題にかかる弁護士費用の相場は?

交通事故に遭うと、程なくして相手側との話し合いが始まります。話し合いは保険の加入や後遺障害の有無によって多岐にわたります。事故後のショックを抱えながら1人で進めるには相当な労力が必要なので弁護士へ依頼して頂くことでスムーズに解決することができます。
今回は弁護士に依頼する際に発生する費用の相場を、いくつかのパターン別で、ご紹介します。
- 目次
交通事故問題を弁護士に依頼すべき理由
(1)交通事故では当たり前のことが当たり前に補償されません
日常生活をしていて交通事故に遭うことはそれほどよくあることではありませんが、ひとたび事故に遭うと、例え大した怪我をしていなかったとしても様々な苦労があります。
例えば、まず事故直後、あなたはショック状態にあるかも知れませんが、冷静になって、警察に連絡をしなければなりません。
あなたは用事があって外出していたかも知れませんが、そのようなことは差し置いて警察に連絡をし、更には加害者である相手と話しをし、自賠責保険会社がどこか、任意保険会社への加入の有無を確認し、連絡をしてもらわなければなりません。
またあなた自身が任意保険に加入している場合は、そちらにも連絡をする必要があります。
そして警察が現場に到着すると現場検証に立ち会わなければなりません。警察官から事故が起きた際の状況を聞かれますが、相手が全く異なる説明をするかも知れません。例え相手に責任があったとしても、あなた自身がそのことをきちんと警察に説明できなければ適切な補償を受けることはできません。
更に怪我をしている場合は、人身事故扱いにするか否かも判断しなければなりません。事故直後は興奮状態にあり、アドレナリンなどの影響で痛みをそれほど感じない場合も多いので、どこかを打ったのであればまずは人身事故扱いとして、病院で診察を受けた方が良い場合も多いように思われます。
こういった諸々の対応に追われているだけで軽く4、5時間は経過してしまいますが、この時間のロスや手間に対する補償は全くなく、補償されるべきことがらであっても、あなたが手続をしなければ誰も補償してくれません。
(2)加害者の保険会社はあなたの味方ではありません
痛みがあれば当然、病院に通院して治療を受けることになりますが、加害者の保険会社は、あなたの怪我の程度を常に疑っています。
あなたは本当に痛いから通院しているだけなのに、保険金目当てで通院しているかの悪意の目と戦い続けなければならないことも少なくありません。保険会社は治療を続けるあなたや主治医に圧力をかけ、時には治療継続中に治療費の支給を打ち切り、治療を断念させようとすることもあります。
このような状況の中で、治療のため仕事を休んだりした場合は、休業補償を請求することになりますが、資料を取り寄せたり、郵送したりすることはあなた自身が行わなければならず、また折角資料を送付しても、あれこれと追加指示をされ、挙句に、十分な支払いを受けられないということも、珍しいことではありません。
このような事態は例えば、後遺障害が残った場合に、それにより将来の収入が減ってしまったとして逸失利益を請求する場合にも頻繁に起こります。
またここまで事故によって様々な支出を余儀なくされることと思いますが、これらは基本的にあなたが一度立て替えなければならず、立て替えた場合、領収書を残しておかなければなりません。そういった資料がなければ後日、保険会社から精算を拒否されることもあります。
後遺障害の有無が確定すると、保険会社から、賠償額の提案がありますが、その金額は、早期解決という名目により、裁判において認定される金額と比較してかなり低額に抑えられるケースが多くみられます。
しかしながら、一般には、その提示額が相場より高いのか安いのかさえ、判断がつかないことがほとんどかと思われます。
このように交通事故に遭った場合、元の生活を取り戻したいだけであるのに、様々な書類や手続きを要求され、時間も手間も浪費させられた上、不適切な請求であるかの目を向けられ、挙句、十分な補償が受けられない、ということが非常に多くあります。
このような事態の原因は、事故に遭う側は、一生に一度あるかないかという出来事であるのに対し、保険会社はこのような交通事故への対応に慣れているという情報の非対称性に由来します。
このとおり加害者側の保険会社というのは全くあなたの味方ではなく、手続きを任せていると、加害者側の思うとおりに事が運んでしまうことになります。
(3)交通事故対応を弁護士に依頼すべき理由
このとおり交通事故への対応は、それ自体、手間であるだけでなく、加害者側の保険会社は、被害者から見れば余り信用ならないという状況にあります。このため事故とその被害について、専門家である弁護士が、あなたの立場に立って交渉をしてくれるサービスの存在が重要であることになります。
弁護士依頼することで、交通事故の対応を一任することができるだけでなく、後遺障害等級取得、適正な損害賠償請求を支援し、保険会社提示額を上回る損害賠償額を獲得することも可能となります。当然ながら弁護士も事業者ですので、当然、依頼すれば費用がかかります。
この弁護士費用には、大きく着手金、成功報酬金、日当、時間報酬があります。着手金は、事件の着手時に支払うもので、これは委任事件処理の状況にかかわらず返金されません。成功報酬金は、事件の終了時に支払うもので、終了時の成果に応じて支払が必要となります。日当は、弁護士がその事件の処理のため遠方に出かける場合に支払が必要となります。
時間報酬は、いわゆるタイムチャージと言われるもので、弁護士の活動時間に応じて、報酬の支払いが必要となります。通常、着手金・成功報酬方式を取る場合は、時間報酬は採用されませんので、これらと二重に請求されることはありません。
弁護士に依頼すればこれらの弁護士報酬の支払いが必要にはなりますが、通常、保険会社の提示額は裁判所基準とはかけ離れていることが多く、弁護士に依頼することにより賠償額が増額される結果、多くのケースにおいて、弁護士費用を支払ってでも弁護士に依頼した方が有利であるということができます。
また裁判では賠償額の10%程度を弁護士費用として加害者に負担させることができますので、その意味でも、弁護士を依頼した方が有利であると言えるでしょう。
更に近時では、これらの弁護士費用を支払ってくれる弁護士費用保険が整備されてきており、これらを活用すれば、弁護士費用の負担を避けながら、弁護士に交通事故対応を依頼することもできますので、ますます弁護士への費用面での敷居は下がってきているものと言えます。
弁護士費用の実際~事務所で違う?相場は?
それでは弁護士に依頼する場合、どの程度の費用がかかるのでしょうか。
そもそも事務所によって報酬は異なるのでしょうか、またその相場はどうなっているのでしょうか。
弁護士費用については、かつて弁護士会が報酬基準を作成し、多くの弁護士がこの基準を採用していました。
このため事務所によって弁護士費用が異なるということは余りありませんでしたが、これらは弁護士間の価格競争を阻害しているとの批判があり、現在では、報酬基準そのものは撤廃されたため、事務所ごとに報酬が異なるということが大前提の状況となっております。以下、代表的な弁護士報酬例を見ていきます。
①旧弁護士会基準準拠型
旧弁護士会報酬基準は廃止されましたが、経済的利益に応じた報酬の決定方法は明快であることから、現在も多くの事務所がこの報酬基準に準じて交通事故の報酬を定めており、いわゆる弁護士費用保険(LAC)の報酬基準もこれと同様であり、これが最もスタンダードと思われます。
なお旧弁護士会基準による弁護士報酬は以下の通りです。
交通事故における「経済的利益」については、一般的に、着手金においては請求額、報酬金においては実回収額を指します。なお依頼時において、既に得られることが確定している賠償金額(例:加害者からの和解提示額)を除きます。
このとおり旧弁護士会基準による場合、請求額、回収額が大きくなればなるほど、弁護士費用も多額になります。
②交通事故特化型
交通事故への取組についてホームページを作成するなどして積極的に集客を行っている事務所では、着手金を0円、或いは低額(概ね20万円程度)に抑え、報酬金額の料率を一律に設定しているケースが多いようです。
旧弁護士会報酬基準型の場合、どうしても着手金が高額化するため、万一、思うような事件結果を得られない場合、費用倒れに終わる危険があることは否定できず、このような着手金0或いは定額・低額方式が生まれました。
また交通事故の事案については、受任当初、怪我の治療状況が不透明であり、請求額を確定しづらい側面もあり、分かりやすさ、依頼しやすさという点でも支持されていると言えます。
なおこの場合でも、弁護士費用特約を利用する場合には、LACの基準に従い、通常の着手金・報酬方式を採用することが多いようです。
③タイムチャージ型
弁護士費用特約付の自動車保険が普及するようになり、物損事故や軽微な交通事故案件を中心に、時間制報酬(タイムチャージ)での受任も増えてきています。
物損事故については、車の修理費用や代車費用など明確な損害が発生するものの、車の修理費用が車の時価を超える場合は車の時価の限度でしか修理費用が認められず、また過失割合が問題となると十分な補償が受けられないなど、厄介なトラブルに発展しがちな一方、損害の総額自体がそれほど大きくなく、弁護士に依頼すると費用倒れになるため、長らく被害者が泣き寝入りを余儀なくされてきました。
これに対し、弁護士費用特約により、時間制報酬が採用されると、案件の損害額の大小にかかわらず、弁護士において案件に十分な時間をかけて対応することが可能となり、物損事故等においても納得のいく解決に道筋が出来てきた状況にあります。
弁護士費用の計算例
<ケース1>
請求額・・・2,000万円(後遺障害等級12級,30歳主婦)
解決額・・・1,600万円
事前提示・・受任前になし
①旧弁護士会報酬基準型の場合
着手金 109万円
・経済的利益2,000万円
→300万×8%+1,700万×5%
報酬金 178万円
・経済的利益1,600万円
→300万×16%+300万×10%
その他,出張があれば日当
②交通事故特化型
着手金・・・20万円(定額)
報酬金・・・160万円(回収額×10%)
その他,出張があれば日当
<ケース2>
請求額・・・8,000万円(後遺障害等級6級,40歳会社員)
事前提示額・2,000万円(受任時)
解決額・・・6,000万円
①旧弁護士会報酬基準型の場合
着手金 249万円
・経済的利益6,000万円(8,000万円-2,000万円)
→300万×8%+2,700万×5%+3,000万×3%
報酬金 378万円
・経済的利益4,000万円(6,000万円-2,000万円)
→300万×16%+2,700万×10%+1,000万×6%
その他,出張があれば日当
②交通事故特化型
着手金・・・20万円(定額)
報酬金・・・600万円(回収額×10%)
その他,出張があれば日当
<ケース3>
請求額・・・5,000万円(後遺障害等級10級,50歳会社員)
事前提示額・2,000万円
解決額・・・2,500万円
①旧弁護士会報酬基準型の場合
着手金 159万円
・経済的利益3,000万円(5,000万円-2,000万円)
→300万×8%+2,700万×5%
報酬金 68万円
・経済的利益500万円(2,500万円-2,000万円)
→300万×16%+200万×10%
その他,出張があれば日当
②交通事故特化型
着手金・・・20万円(定額)
報酬金・・・250万円(回収額×10%)
その他,出張があれば日当
弁護士費用を抑えるためには
弁護士費用の負担をできるだけ抑えたい方はご自身の加入する任意保険に附帯する弁護士費用特約に加入することで,最大300万円まで弁護士費用が保険で賄われます。
現在,弁護士会と協定を締結しているのは下記損保会社となりますので,保険加入にあたってはご参考下さい。
記
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
AIG損害保険株式会社
au損害保険株式会社
共栄火災海上保険株式会社
セゾン自動車火災保険株式会社
全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)
全国自動車共済協同組合連合会
全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)
ソニー損害保険株式会社
損害保険ジャパン日本興亜株式会社
そんぽ24損害保険株式会社
大同火災海上保険株式会社
Chubb損害保険株式会社(チャブ保険)
チューリッヒ保険会社
プリベント少額短期保険株式会社
三井住友海上火災保険株式会社
三井ダイレクト損害保険株式会社
楽天損害保険株式会社
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