後遺障害等級認定基準を徹底解説!これだけ読めば大丈夫

交通事故に遭い、不幸にも後遺障害が残ってしまった場合、入通院慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料や逸失利益が支払われるのが一般的です。そして、後遺障害慰謝料や逸失利益は、自賠責の定める後遺障害等級というものに該当するか否か、該当するとして何級に該当するのか、という観点から決定されます。そこで、本記事では、後遺障害等級について詳しく説明します。
後遺障害等級の概要
まず、後遺障害とは「怪我が完治せず、症状固定となった後に残る障害」をいいます。
後遺障害は、交通事故との因果関係があれば一定の労働能力の損失を伴うものとされています。例えば、交通事故の後遺障害によって足が不自由になってしまった場合、立ち仕事をすることはできませんよね。このように、交通事故によって後遺障害が発生すると一定の労働能力の損失が伴うのです。
交通事故によって後遺障害を負った場合、被害者は加害者に対し、損害賠償請求を行うことができます。この前提として、被害者は、医師に後遺障害診断書を作成してもらったうえで、自動車損害賠償責任保険(いわゆる「自賠責」)に対し、「等級認定」と呼ばれる認定基準を得るための申請を行い、認定してもらう必要があります。
そして、「等級認定」とは、当該被害者の負った後遺障害が後遺障害等級のどれに当たるのかを認定することをいいます。実際、被害者の負う後遺障害の症状は千差万別です。そのため、全ての被害者の損害を個別的に算出するのは困難です。
そこで、後遺障害を16の等級(要介護の2等級と、介護を要しない14等級)137項目に分類し、迅速かつ公平な処理を試みています。これが「後遺障害等級」というものです。
各等級の紹介
では、具体的に各等級の内容を見ていきましょう。
介護を要する後遺障害の場合の等級
第1級
1.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
植物人間状態や、寝たきりの状態、高度の痴ほう症などが生じ、常に周囲の助けがなければ生活できないようなケースがこれに当たります。
第2級
1.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
2.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
食事・入浴・用便・更衣などの際に介護を要したり、1人で外出できず自宅内でしか日常生活を送れないようなケースがこれに当たります。
その他の後遺障害の等級
第1級
1.両眼が失明したもの
2.咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3.両上肢をひじ関節以上で失ったもの
4.両上肢の用を全廃したもの
5.両下肢をひざ関節以上で失ったもの
6.両下肢の用を全廃したもの
第4項・第6項にいう「全廃」とは、主要な関節が固くなり、その機能が喪失したことをいいます。簡単にいうと、両腕又は両足が完全に機能停止したような場合です。
第2級
1.1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
2.両眼の視力が0.02以下になったもの
3.両上肢を手関節以上で失ったもの
4.両下肢を足関節以上で失ったもの
第3項・第4項を簡単にいうと、両手又は両足を失った場合がこれに当たります。
第3級
1.1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
2.咀嚼又は言語の機能を廃したもの
3.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
4.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5.両手の手指の全部を失ったもの
第3級では第3項・第4項がポイントです。これは、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって一般就労が全くできないか、困難である状態を指します。
第4級
1.両眼の視力が0.06以下になったもの
2.咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
3.両耳の聴力を全く失ったもの
4.1上肢をひじ関節以上で失ったもの
5.1下肢をひざ関節以上で失ったもの
6.両手の手指の全部の用を廃したもの
7.両足をリスフラン関節以上で失ったもの
第7項にいうリフスラン関節とは、足の甲の中央付近にある関節のことを指します。
第5級
1.1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
2.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
3.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4.1上肢を手関節以上で失ったもの
5.1下肢を足関節以上で失ったもの
6.1上肢の用を全廃したもの
7.1下肢の用を全廃したもの
8.両足の足指の全部を失ったもの
第2項・第3項の「軽易な労務以外の労務に服することができない」とは、単純作業はできるけれども、学習能力や環境の変化に対応できない場合など、一般人に比較して作業能力が著しく制限されている場合をいいます。また、第6項・第7項の「用を全廃したもの」とは、肩・肘・腕の3大関節の全てが強直し、手指の全部が機能しなくなった状態をいいます。
第6級
1.両眼の視力が0.1以下になったもの
2.咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
3.両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
4.1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
5.脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
6.1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
7.1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8.1手の5の手指又は親指を含み4の手指を失ったもの
第2項の「著しい障害」とは、お粥程度のもの以外を食べられなくなったとか、半分の発音ができなくなった結果言語のみで意思疎通できなくなった状態をいいます。第5項の「脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの」とは、X線写真などにより脊椎圧迫骨折などを確認できるものをいいます。
第7級
1.1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
2.両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
3.1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
4.神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
5.胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
6.1手の親指を含み3の手指を失ったもの又は親指以外の4の手指を失ったもの
7.1手の5の手指又は親指を含み4の手指の用を廃したもの
8.1足をリスフラン関節以上で失ったもの
9.1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
10.1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
11.両足の足指の全部の用を廃したもの
12.外貌に著しい醜状を残すもの
13.両側の睾丸を失ったもの
第4項・第5項の「軽易な労務以外の労務に服することができない」とは、就労こそ可能ですが、ミスが多くなるなど一般人と同等の作業ができなくなることをいいます。また、第9項・第10項にいう「偽関節」とは、骨折後の骨の間に腫瘍などができた結果、骨の癒合が不完全になる症状をいいます。
第8級
1.1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの
2.脊柱に運動障害を残すもの
3.1手の親指を含み2の手指を失ったもの又は親指以外の3の手指を失ったもの
4.1手の親指を含み3の手指の用を廃したもの又は親指以外の4の手指の用を廃したもの
5.1下肢を5cm以上短縮したもの
6.1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
7.1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
8.1上肢に偽関節を残すもの
9.1下肢に偽関節を残すもの
10.1足の足指の全部を失ったもの
第2項は、頚部と胸腰部のいずれかの可動域が参考角度の2分の1以下であったり、X線写真などにより脊椎圧迫骨折などを確認できるようなものをいいます。
第9級
1.両眼の視力が0.6以下になつたもの
2.1眼の視力が0.06以下になったもの
3.両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
4.両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
5.鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
6.咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
7.両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
8.1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
9.1耳の聴力を全く失ったもの
10.神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
11.胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12.1手の親指又は親指以外の2の手指を失ったもの
13.1手の親指を含み2の手指の用を廃したもの又は親指以外の3の手指の用を廃したもの
14.1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
15.1足の足指の全部の用を廃したもの
16.外貌に相当程度の醜状を残すもの
17.生殖器に著しい障害を残すもの
第6項は、固形食物の中に咀嚼できないものがあることまたは咀嚼が十分できないものがあることや、語音のうち1つを発音できない状態のことをいいます。第10項・第11項の「労務が相当な程度に制限される」とは、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があることをいいます。第16項の「相当程度の醜状」とは、人の目につくところで、顔に5cm以上の痕がつくことをいいます。
第10級
1.1眼の視力が0.1以下になったもの
2.正面を見た場合に複視の症状を残すもの
3.咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
4.14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5.両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
6.1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
7.1手の親指又は親指以外の2の手指の用を廃したもの
8.1下肢を3cm以上短縮したもの
9.1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
10.1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
11.1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
第11級
1.両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2.両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3.1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
4.10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5.両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
6.1耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
7.脊柱に変形を残すもの
8.1手の人指し指、中指又は薬指を失ったもの
9.1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
10.胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
第12級
1.1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2.1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3.7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4.1耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5.鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
6.1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
7.1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
8.長管骨に変形を残すもの
9.1手の小指を失ったもの
10.1手の人差し指、中指又は薬指の用を廃したもの
11.1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの
12.1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13.局部に頑固な神経症状を残すもの
14.外貌に醜状を残すもの
第13項の「頑固な」とは、神経系統の障害が他覚的に証明される場合をいいます。第14項の「醜状」とは、人目につく程度以上のもので、10円玉以上、長さ3cm以上、又は鶏の卵以上の大きさの痕が残る場合をいいます。
第13級
1.1眼の視力が0.6以下になったもの
2.正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
3.1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
4.両眼のまぶたの1部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
5.5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
6.1手の小指の用を廃したもの
7.1手の親指の指骨の1部を失ったもの
8.1下肢を1cm以上短縮したもの
9.1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの
10.1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
11.胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
第14級
1.1眼のまぶたの1部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
2.3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
3.1耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
4.上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
5.下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
6.1手の親指以外の手指の指骨の1部を失ったもの
7.1手の親指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの
8.1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの
9.局部に神経症状を残すもの
第9項は、神経系統の障害が医学的に説明可能な場合をいい、医学的な証明までは不要です。
まとめ
以上の通り、後遺障害等級は症状に合わせて極めて多岐にわたるうえに、医学的知見をも要する非常に複雑な構造になっております。本記事では、これらを1つ1つ詳しく記載することはできませんので、後遺障害等級に対するイメージを持っていただければ幸いです。
実際に後遺障害でお悩みの方は、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
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