むちうちは後遺障害が非該当?等級認定されるには通院・治療中がカギ!

追突事故のような交通事故の場合、むちうち症になってしまうケースが非常に多くあります。ところが、むちうち症の場合、後遺障害等級認定を申請しても適切な認定を獲得できず、場合によっては非該当になることもあります。
この記事では、むちうち症で後遺障害等級認定を獲得するためにどうすればよいのかについて解説します。
- 目次
後遺障害等級認定とは
後遺障害とは、交通事故でケガをして症状固定の状態になり後遺障害等級が認定されたものを指します。
症状固定とは
傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待し得ない状態で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態
と定義されています。
後遺障害が認定されれば交通事故の相手方に対して慰謝料や逸失利益を請求することが出来ます。
後遺障害認定には、自賠責保険の後遺障害として等級を認定(後遺障害等級認)をしてもらう必要があります。
自賠責保険においては、後遺症の程度によって定められた「等級」ごとに、慰謝料金額などの基準が定められています。
等級認定を受けることができなかった場合には、裁判で争って裁判所が後遺障害の存在を認定してくれるような数少ないケースを除いて、後遺障害による慰謝料や逸失利益などを請求することはできません。
後遺障害等級認定では、「自賠責損害調査事務所」という機関が公正・中立の立場で、
を判断します。
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むちうち症の場合に認定され得る後遺障害等級とは
むちうち症とは
いわゆる「むちうち(症)」とは、頸部外傷の局部症状の総称のことです。「むちうち」というのは、医学的な傷病名ではありません。
医学的には「頚椎捻挫」「外傷性頚部症候群」「頚椎症性神経根症」などと診断されます。
むちうち症は、車の追突事故などで衝撃を受けて、首がむちのような運動を強いられ、靭帯や筋肉などが損傷を受けることで発症するといわれています。
むちうち症で残る後遺症の代表的な症状には、 首の神経を損傷したことによる以下のようなものがあります。
このような症状について認定される可能性のある主な後遺障害等級は、12級13号(「局部に頑固な神経症状を残すもの」)と14級9号(「局部に神経症状を残すもの」)です。
一般的に、むちうち症で12級が認定されることはまれで等級認定されないケースもあるといわれています。 以下では、それぞれの認定基準について説明します。
12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」の認定基準
自賠責制度における後遺障害等級認定は、労働者災害補償保険(労災保険)における障害等級認定基準に準じておこなうとされています。
労災保険の認定基準において、12級の認定基準は、
通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの」(基発第0808002号「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」)
であることとされています。また、基準の改正前には、12級は
他覚的に神経系統の障害が証明されるもの
とされており、現在でもこの点が実務上重視されています。
「他覚的に神経系統の障害が証明される」とは、レントゲン写真やMRI画像での異常所見など症状を裏付ける客観的な所見が存在することを意味しています。
14級9号「局部に神経症状を残すもの」の認定基準
14級の認定基準は、
労働には通常差し支えないが、医学的に説明可能な神経系統又は精神の障害を残す所見があるもので、受傷時の態様や治療の経過からその訴えが一応説明つくものであり、賠償性神経症や故意に誇張された訴えではないと判断されるもの
などとされています。12級とは異なり画像などの他覚的所見は必須ではありません。
むちうち症で後遺障害等級が認定された場合の慰謝料金額
むちうち症で後遺障害が認定された場合、慰謝料はいくら支払われるのでしょうか。 交通事故の慰謝料には下記の3つの算定基準があります。
これら3つの基準のうち、弁護士基準がもっとも高額な算定基準となります。弁護士基準は別名裁判基準ともいい、過去の交通事故の判例を元に算出しています。
そのため、もっとも妥当な慰謝料金額になります。
弁護士に損害賠償請求を依頼すると、この弁護士基準をもちいて慰謝料を計算します。
弁護士基準(裁判基準)によって算定すると、むちうち症で後遺障害等級認定された場合の慰謝料金額は次のようになります。
一方、後遺障害等級認定を獲得できない場合、後遺障害慰謝料は0円です。後遺障害等級認定を獲得できれば、得られる慰謝料の金額は大幅にアップすることになります。
したがって、適切な後遺障害等級認定を獲得するが重要です。
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むちうち症で適切な後遺障害等級認定を獲得するためのポイントとは
適切な検査を受けること
むうち症で適切な後遺障害等級認定を得るためには、医学的な所見が存在することが重要です。そのため、レントゲン・MRIの撮影や各種の神経学的検査をきちんおこなうことが大切です。
神経学的検査は、自分の意思で左右しにくい腱反射テストの結果が重視される傾向にあります。
きちんとした通院実績を確保すること
むちうち症で後遺障害等級認定を得るためには、交通事故でケガをした直後から継続して、定期的に医師の治療を受けることが必要です。
受傷後すぐに受診していない場合には、その交通事故によって症状が発生したと認められないとして、交通事故とむちうち症との因果関係が否定されてしまうことがあります。
また、通院の頻度が少なかったり期間が短かったりすると、「たいしたことのないケガである」とみなされる傾向があります。通院の目安としては、できるだけ週に1~2回の通院を続けると良いでしょう。
なお、むちうち症では必ず病院(整形外科)を受診しましょう。 後遺障害認定に必要となるものに後遺障害診断書があります。この後遺障害診断書を作成できるのは医師だけです。
また、正しく認定を受けるための適切な検査も病院でしか受けられません。
もし整骨院・接骨院を受診したい場合は、必ず整形外科の医師に相談し、病院への通院と併せて利用するようにしましょう。
また、むちうち症で後遺障害等級認定を得るためには、少なくとも6か月の通院期間が必要といわれています。早めに治療を切り上げないように注意しましょう。
治療が長引くと、相手方の任意保険会社から「治療を終了するように(もしくは治療費を打ち切る)」と言われることもあります。
この場合、保険会社に言われるままに治療を中止してはいけません。必ず医師や弁護士に相談しましょう。
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事故直後から一貫して自覚症状を訴えること
後遺障害等級認定を得るためには、受傷直後から症状が一貫していることが必要です。
時間の経過とともに被害者が痛みなどの症状を訴える部位が変化すると、症状の一貫性がないとして等級認定されない可能性が高いです。
したがって、受傷直後から医師に対して「どのような症状があるのか」を正確に伝え続けることが必要です。
軽い気持ちで「調子が良くなった」などと、症状が軽快している判断されそうなことを伝えてはいけません。
もし症状が軽快したと判断されると、後遺障害等級認定が受けられないこともありますので、注意しましょう。
医師に適切な後遺障害診断書を作成してもらうこと
後遺障害等級認定の申請には医師が作成した後遺障害診断書を提出しなければなりません。
医師は後遺障害等級認定の専門家ではありません。後遺障害等級認定を受けるためにどのような記載が必要かについての知識がない場合もあります。
また、「後遺障害認定を受けやすいように」と考えて診断書を作成してくれるわけでもありません。
このような場合、弁護士に依頼すると後遺障害診等級の認定に有利になるような診断書を作成するように医師に働きかけてくれます。
被害者請求で申請すること
後遺障害等級認定の申請方法には、事前認定と被害者請求の2種類があります。
「事前認定」とは、事故の相手方の保険会社が、必要書類をそろえて後遺障害等級認定の手続きをおこなう方法のことをいいます。
一方、「被害者請求」とは、被害者自らが相手方の自賠責保険に対して直接後遺障害の等級認定の申請をおこなう方法です。
事前認定の場合、被害者の代わりに相手方の保険会社が資料収集などすべての作業をおこない、申請してくれます。自分でおこなわなければならない被害者請求と違って手間がかかりません。
しかし、相手方の保険会社が、被害者に有利な資料をきちんとそろえて申請してくれるとは限りません。
被害者にとって適切な後遺障害等級認定を得るためには被害者請求で後遺障害等級を申請しましょう。
ただし、被害者請求の方法を自分でおこなうのは手間がかかるうえ容易ではありません。このとき、弁護士に依頼すれば被害者請求を代行してくれるため、被害者の負担は大幅に軽減されます。
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まとめ
適切な後遺障害等級認定を獲得するためにはポイントがあります。
法的な知識が豊富な弁護士に相談すれば、適切なアドバイスを受けることができます。交通事故に強い弁護士であれば、損害賠償請求に必要な医学的知識も有している場合が多いです。
このような弁護士なら医師とのコミュニケーションもスムーズになるでしょう。
また、適切な後遺障害等級認定を獲得するには、治療が終了してからではなく治療中の段階で対策をとる必要があります。
交通事故にあってケガをした場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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