うつ病は後遺障害に認定される?交通事故による精神障害で慰謝料を獲得する方法。

交通事故でケガをした被害者のなかには、身体のケガが回復した後も精神的な不調に長く悩まされる方がいます。精神的な不調は、もともとの性格や交通事故以外の原因によるものと誤解される傾向があります。
さらに精神的な不調には特効薬がなく、治癒に時間がかかるため、不調を患った人にとっては非常に辛いものです。
被害者としては、せめて金銭的な補償として十分な慰謝料を受け取って、お金の心配をすることなく治療に専念したいところです。
ここでは、交通事故の後遺症でうつ病やPTSDに苦しんでいる方に、後遺障害等級認定を受けて後遺障害慰謝料を獲得するために知っておきたい情報を説明します。
- 目次
交通事故が原因でうつ病やPTSDを患うことがある
人間の心や脳は非常に繊細です。したがって、強いストレスや不安にさらされたり、大きなショックを受けた場合には、思いもかけないほど強いダメージを受けることがあります。
交通事故はある日突然遭遇してしまうものです。また、交通事故は一生のうちに何度も遭遇するものではないため、被害者にとっては大きなトラブルといえます。
ですから、運悪く交通事故に巻き込まれた場合の被害者の精神的ショックは非常に大きなものになります。
また、交通事故によりケガなどを負って入院や通院の治療が長引くこともあります。
こうなると、就労や日常生活など、これまでのようにおこなうことができず、被害者の生活環境は激変してしまうことになります。
生活環境の変化によるストレスは、うつ病など精神障害の大きな原因ともいわれています。
交通事故が原因で起こりやすい精神障害の例
うつ病
前述のうつ病は現代人の多くが悩まされている病気です。ストレスや不安を抱えがちな現代社会において、患者数は増加の一途をたどっています。症状としては精神的には、
などの状態が長く続きます。並行して身体的な症状として、
などがあらわれることもあります。ひどい場合は仕事や日々の生活にも支障をきたしてしまいます。うつ病を発症する原因のひとつとして強いストレスや不安があります。
交通事故や交通事故にともなう生活環境の変化は、被害者にとって強いストレスや不安を招くことがあります。
PTSD
PTSDとは、心的外傷後ストレス障害といい、事件や事故などのできごとが精神的なトラウマとなることをいいます。
交通事故はもちろん、虐待・火災・戦争・暴力・大地震などの天災などもPTSDを引き起こす大きな要因となります。
トラウマの原因となる事故や事件から時間がたっても、PTSDの患者は急にそのときのことを思い出しパニック状態におちいることがあります。
さらに、PTSDからくる不安な気持ちや恐怖などが続き、日常生活がままならなくなることがあります。
交通事故の場合、特に大型車との正面衝突や同乗者が亡くなるなどの悲惨な事故の被害者に発生しやすいようです。
後遺障害等級認定とは
交通事故でケガをしたとき、治療を受けても完治せず後遺症が残ることがあります。
このとき「これ以上治療をしても症状が大きく改善も悪化もしない」と主治医が判断した状態のことを症状固定といいます。症状固定をすると治療費の支払は打ち切りとなります。
また、交通事故の治療で入通院した際に支払われる入通院慰謝料も症状固定までの期間を基準に計算します。では、症状固定後の症状に対して慰謝料は支払われるのでしょうか。
この場合、自賠責事務所に対して後遺障害等級申請をすることで、入通院慰謝料の代わりに後遺障害慰謝料の支払を求めていくということになります。
後遺障害等級認定は自賠責損害調査事務所という独立した審査機関がおこないます。
後遺障害等級認定は、後遺症のなかでも一定以上の重篤な障害が残ったと認定され、かつそれが交通事故により生じたという因果関係があるものについて認められるものです。
後遺障害等級は1級から14級までの等級に分類されます。等級の番号が若いほど重篤な障害とみなされるため、認定される等級によって受け取ることのできる後遺障害慰謝料の金額は大きく変わります。
自賠責保険の後遺障害等級審査は書面主義といわれています。つまり、等級申請書類の内容のみで後遺障害等級の審査がおこなわれるため、審査結果が厳しい場合があるのです。
骨折などレントゲンやMRIにあらわれるような症状であれば書面も準備しやすいでしょう。
しかし、うつ病やPTSDのような精神障害や、むちうちのように外形には変化がないけれど自覚症状があるような疾患は、いかに説得力のある申請書類を準備できるかが鍵となります。
うつ病やPTSDについて後遺障害等級認定を受けるために
事故と精神障害についての因果関係を証明するには
うつ病やPTSDなどは目に見えない精神的な問題です。
そのため、「もともとの性格からきたものである」とか「他のストレスからきたものではないか」と、疑われてしまう可能性があります。では、どうすればいいのでしょうか。
後遺障害等級認定の際、必要書類として主治医に後遺障害診断書を用意してもらう必要があります。
このとき、以下のような内容を医学的な観点からきちんと後遺障害診断書に記載してもらうことが大切です。
PTSDやうつ病の症状固定は時間がかかる
前述のように、後遺障害等級申請は主治医が症状固定と判断してくれたのちにおこなうことができます。ただし、一般的にPTSDやうつ病は、治るまでに時間を要する病気です。
また、患者の多くは、一進一退を繰り返しつつ、少しずつ心の状態が回復していく特徴があるともいわれています。
さらに、PTSDやうつ病は、環境の変化やゆっくり休養することなどによって回復につながる可能性もあります。
したがって、うつ病やPTSDの場合、主治医としても症状固定の判断が難しく、慎重になる傾向があります。症状固定の判断まで2~3年間かかることも珍しくないともいわれています。
うつ病やPTSDで後遺障害が認定される場合の等級
うつ病やPTSDなどの非器質性精神障害が認定される可能性のある等級は、9級10号、12級、14級の3つになります。
交通事故でうつ病やPTSDをわずらっており、「一応働くことはできるが、病気のせいで仕事に支障がある」または「就労できる職種に制限がある」という場合に認められます。
このとき認定される後遺障害は、
に認められます。
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うつ病やPTSDの後遺障害慰謝料の相場とは
うつ病やPTSDで認められ可能性のある後遺障害慰謝料は、厚生労働省が定めた基準により以下の金額になります。
個別の事情によって調整が加えられることもありますが、一つの目安として頭にいれておきましょう。
14級と9級では6倍近い差がありますので、後遺障害申請の準備がいかに重要かわかると思います。
交通事故後うつ病やPTSDで悩んでいる方は弁護士に相談を
交通事故の被害者になり、うつ病やPTSDで悩まされている方は、一度交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。
自賠責保険への後遺障害等級申請の方法には、事前申請と被害者申請という2つの方法があります。
被害者自らが十分な申請資料を用意できるという観点では被害者申請の方が非器質性障害のように立証が難しいケースではおすすめです。
交通事故に強い弁護士であれば、事故と精神障害との因果関係の立証や医師への上手な依頼方法など、実務に精通しています。
一人では手間がかかり専門知識も必要となる被害者申請を選ぶ場合でも安心です。
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まとめ
交通事故によるうつ病やPTSDなどの精神障害は、治療に時間がかかるうえに後遺障害の認定が難しいことが多いです。
交通事故に強い弁護士なら加害者や保険会社との示談交渉も依頼できますので、精神的な負担を減らすことにもつながります。
加入している任意保険によっては、弁護士費用特約といって弁護士費用を補填してくれる特約が付されている場合もあります。一度保険内容をチェックしてみましょう。
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