交通事故の後遺障害で適正な慰謝料を獲得する3つの方法

交通事故でケガをすると後遺症が残る場合があり、程度によって後遺障害等級に認定されることがあります。後遺症には軽度のものから後遺障害等級認定される重度のものまであり、等級認定されることで慰謝料金額も変わります。では具体的に症状に応じてどのように慰謝料金額が変わるのでしょうか。本記事では、後遺症と後遺障害の違いや等級ごとの慰謝料金額、さらに正しく後遺障害が認定されるためのポイントや適正な慰謝料金額を獲得するための方法について詳しく解説します。
- 目次
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交通事故の後遺症と後遺障害の違い
後遺症とはケガが完治せず機能障害などの症状が残ることをいいます。
一方、交通事故の損害賠償請求では後遺症のほかに「後遺障害」という言葉を使います。
では後遺障害は後遺症とどう違うのでしょうか。
交通事故の後遺障害とは、後遺症のなかでも自賠責保険の後遺障害等級に認定されたものをいいます。
後遺障害等級に認定されるには以下の5つの条件を満たすことが必要です。
●将来的にこれ以上ケガの回復が見込めないと医師が判断し「症状固定」と診断すること
●交通事故と後遺障害に因果関係が認められていること
●ケガのために労働能力の低下が認められること
●後遺障害が自賠責法施行令の等級(1級から14級)に当てはまること
●本人の感じる症状(後遺障害)が医学的に証明(14級に限り医学的に説明)できること
症状固定とは「これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態」のことです。
後遺障害等級による症状の違い
後遺障害には要介護2等級、介護を要しない14等級のあわせて16の等級があります。基本的には1級が最も重度で14級が最も軽度な症状になります。
後遺障害は等級ごとに認定される条件が異なります。
具体的にどのような症状がどの等級になるのかについては下記記事を参照ください。
後遺障害慰謝料の3つの基準
後遺障害が認定されると後遺障害慰謝料が支払われます。
後遺障害慰謝料は「後遺障害を抱えて生活することに対する精神的苦痛」に対して支払われるものです。
後遺障害慰謝料には自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの慰謝料基準があり、それぞれ支払い目的が異なります。
自賠責保険基準は、被害者の最低限の救済を目的としているため、もっとも低額な基準となっています。
任意保険基準は保険会社が独自で定めている支払い基準です。任意保険基準は非公開のため具体的な金額は不明ですが、自賠責保険基準より高額で弁護士基準よりも低額といわれています。
弁護士基準とは弁護士が交通事故の損害賠償請求で使用する慰謝料基準です。交通事故裁判の過去の判例を基にしているため裁判所基準とも呼ばれています。弁護士基準は3つの基準のなかで最も高額となります。
後遺障害等級ごとの後遺障害慰謝料の金額
介護を要しない症状の後遺障害慰謝料は、等級別・支払い基準別に下記のように金額が変わります。(表1参照)
●第1級 自賠責保険基準 1,100万円
弁護士基準 2,800万円
●第2級 自賠責保険基準 958万円
弁護士基準 2,370万円
●第3級 自賠責保険基準 829万円
弁護士基準 1,990万円
●第4級 自賠責保険基準 712万円
弁護士基準 1,670万円
●第5級 自賠責保険基準 599万円
弁護士基準 1,400万円
●第6級 自賠責保険基準 498万円
弁護士基準 1,180万円
●第7級 自賠責保険基準 409万円
弁護士基準 1,000万円
●第8級 自賠責保険基準 324万円
弁護士基準 830万円
●第9級 自賠責保険基準 245万円
弁護士基準 690万円
●第10級 自賠責保険基準 187万円
弁護士基準 550万円
●第11級 自賠責保険基準 135万円
弁護士基準 420万円
●第12級 自賠責保険基準 93万円
弁護士基準 290万円
●第13級 自賠責保険基準 57万円
弁護士基準 180万円
●第14級 自賠責保険基準 32万円
弁護士基準 110万円
以上のように1級~14級まで後遺障害慰謝料金額が定められています。最も軽度の障害である14級であっても後遺障害慰謝料の金額は自賠責保険基準で32万円、弁護士基準で110万円と金額に大きな差があります。
後遺障害等級は介護の要不要で区別しますが、弁護士基準の後遺障害慰謝料金額に介護の有無による差はありません。
なお要介護の後遺障害慰謝料は、第1級で4,000万円、第2級で3,000万円が自賠責保険金額の上限となっています。
表1.自賠責保険基準と弁護士基準の後遺障害慰謝料の比較
弁護士基準で慰謝料を獲得するために
交通事故で適正な後遺障害慰謝料を獲得する1つめの方法は「弁護士基準で後遺障害慰謝料を計算すること」です。
弁護士基準で後遺障害慰謝料を計算すると損害賠償金額を増額できる可能性があります。
弁護士基準で慰謝料請求するには交通事故裁判の知識が必要になります。そのため素人が弁護士基準で示談交渉をおこなうのは非常に困難です。
弁護士基準の慰謝料を獲得するには、専門知識の豊富な弁護士に依頼することが基本になります。
後遺障害認定を正しく受けるためのポイント
交通事故で適正な後遺障害慰謝料を獲得する2つめの方法は「後遺障害認定を正しく受けること」です。
後遺障害等級の申請には下記の2つの方法があります.
●事前認定
●被害者請求
事前認定
事前認定は、加害者の保険会社が後遺障害認定に必要な書類を取りまとめて自賠責保険会社に提出する申請方法です。
後遺障害認定に必要な書類をまとめるところから認定手続きまで加害者の保険会社がすべておこないますので、被害者の手間が省けます。
ただし、事前認定はすべて加害者側の保険会社がおこないますので、どのような申請がおこなわれているのか被害者はわかりません。
また被害者に有利な等級を申請するために加害者側の保険会社が積極的に行動するとは考えにくいです。
被害者に適正な等級を申請することは後遺障害慰謝料の増額につながります。一方で保険会社は保険金の支払いをできるだけ低く抑えたいと思うはずです。
したがって加害者側の保険会社が被害者に有利な等級を申請するために積極的に動くとは考えにくいのです。
被害者請求
被害者請求は、被害者が後遺障害認定に必要な書類を取りまとめて加害者側の自賠責保険会社に提出する方法です。
後遺障害認定に必要な手続きをすべて被害者自身でおこなうので、非常に手間がかかる方法です。
しかし被害者が納得のいくまで必要な資料の準備などをおこなえるため、納得のいく申請結果が得られる可能性が高くなります。
また被害者が手続きの進捗状況も確認できるので透明性が高い方法です。
被害者請求は弁護士に依頼できる
被害者請求は適正な後遺障害等級が認定されやすいなど、被害者にとってメリットが大きい申請方法です。
ただし必要書類の準備など複雑な作業も伴ううえに専門的な知識も必要になってきます。
このような場合、弁護士に後遺障害等級申請の被害者請求を依頼すると複雑な作業を代行してもらえるため、たいへん便利です。
認定結果に不満を感じたら異議申し立て
交通事故で適正な後遺障害慰謝料を獲得する3つめの方法は「認定結果に不満を感じたら異議申し立てをすること」です。
後遺障害等級を申請したら、ほとんどの場合3か月程度で結果が出ます。結果通知は保険会社から郵送で届きます。
もし認定結果に不満がある場合、「異議申し立て」による再請求が可能です。
認定結果に対する異議申し立てには以下の3つの方法があります。
自賠責保険会社に対する異議申し立て
自賠責保険会社に対して異議申し立てをおこなう場合も「事前認定」と「被害者請求」の2つの方法があります。
被害者請求の場合、自賠責保険会社に異議申立書を提出します。
事前認定の場合、相手の保険会社に対して異議申立書を提出します。
自賠責保険会社への異議申し立ては回数に制限がないため、何度でもできるのが特徴です。
ただし被害者が納得できない等級を認定したのも、異議申し立て先の自賠責保険会社です。
このため前回の申請時より有力な資料を提出しなければ結果を覆すことは困難になります。
自賠責紛争処理機構への申請
自賠責紛争処理機構とは、自賠責保険や共済の保険金・共済金の支払いに関する紛争を公平かつ的確に解決するための機構です。
自賠責紛争処理機構は前回納得できない等級を認定した自賠責保険会社とは異なります。また自賠責紛争処理機構は公平中立な立場で審査をしますので、被害者に不利な結果にはならない可能性があります。
ただし自賠責紛争処理機構への異議申し立ては原則として一回に限られています。
裁判を起こす
後遺障害等級の認定に不満を感じた場合、最終手段として裁判があります。
ただし裁判はすでに認定されている結果を重要視する傾向があります。そのため前回の申請時より有力な主張立証をおこなう必要があります。
後遺障害の異議申し立ては弁護士に依頼しよう
納得のいかない認定結果に対する異議申し立て方法について説明してきました。
いずれの方法にしても異議申し立てが認められるケースは非常に少なく、ハードルが高いのが現実です。
異議申し立てはいずれの方法も被害者がおこなうことが可能です。
しかし弁護士であれば、納得のいく認定結果を得るために何が不足しているかなどを被害者にアドバイスすることができます。
もし認定結果に不満を感じたら、弁護士に依頼して効果的に異議申し立てをおこないましょう。
まとめ
交通事故で適正な後遺障害慰謝料を獲得する方法について
・弁護士基準で後遺障害慰謝料を計算すること
・後遺障害認定を正しく受けること
・認定結果に不満を感じたら異議申し立てをすること
の3つを説明しました。
等級認定の手続きや認定結果に納得できない場合は弁護士に依頼することをお勧めします。
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