本人訴訟は難しい!交通事故の裁判を個人で起こすと損する理由

交通事故の被害者が相手方の保険会社と交渉をしても、示談案が全然まとまらないこともあります。この場合に採る次のステップの1つに、裁判を起こすことが挙げられます。
しかし、一口に「裁判を起こす」といわれても、不安は募るばかりだと思います。
「私1人でできるのか」「いつどこに何を持って行けばいいのか」「個人でやるのと弁護士に頼んだのではどちらがいいのか」など、多くの懸念事項を抱えられることになるでしょう。
そこで本記事では、個人が弁護士に頼まずに裁判を起こす場合のおおまかな流れとそのメリットデメリットをご説明いたします。
- 目次
裁判をする場合
裁判というと、よくドラマで見る弁護士が法廷に立って激論を繰り広げているイメージをされる方も多いのではないでしょうか。
そのイメージからか、裁判=弁護士がするものと考える方も多いと思います。
では本当に、裁判を起こす際は必ず弁護士に依頼しなければいけないのでしょうか。
結論からいうと必ずしも弁護士に頼む必要はありません。
日本には、裁判には弁護士を必ず付けなければならないという法制度がないので本人訴訟が認められています。
しかし注意すべき点がひとつあります。それは、代理人をたてる場合は必ず弁護士に依頼するということです。
民事訴訟法の規定上で「弁護士でなければ訴訟代理人となることができない」となっているので
自分1人で裁判をすることはできるが、誰かに頼む場合は必ず弁護士を利用するということになります。
どういう場合に裁判をするのか
先ほど話した通り裁判になる場合とは、保険会社との示談が成立しないときです。
よくあるケースとしては保険会社との話し合いが、うまく進まずこちらの主張を聞き入れてくれない場合です。
例えば、交通事故が原因の怪我で半年間通院したとしましょう。
半年間、通院の事実があるにもかかわらず、保険会社は「怪我の程度からみると治療は3ヶ月で充分。あとの3ヶ月分の治療費は不必要なので支払う理由がない」などの主張をし続けることもあります。
もちろん示談の段階で、こちらの主張をしっかり聞いて認めてくれる場合は問題ありません。
しかし主張を続けても全く聞き入れてもらえないような場合は、裁判にならざるを得なくなります。
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裁判を起こす流れ -訴えの提起編-
それでは、実際に裁判を起こす流れをご説明しましょう。
自分で裁判を起こす際に必要な手順を大きく分けると、
1.訴状を作る
2.訴状を出す
の2つに分けられます。
訴状を作る
裁判を起こすためには、裁判所に「訴状」というものを提出する必要があります。その前提として、まず訴状を作ります。
訴状に記載する事項は、実に多岐にわたります。当事者の表示、送達場所、請求の趣旨、請求の原因、証拠方法など、専門用語も多く、分かりにくいです。
そこで、自分で訴状を作る際には裁判所のホームページを参照し、サンプル通りに作ることが望ましいです。
参考:訴状の作成について(外部リンク)
この中で、サンプルだけでは分かりにくいところがあります。それは「請求の原因」というものです。
交通事故でいえば、請求の原因というのは損害賠償請求権を発生させるのに必要な事情をいいます。具体的には、
②権利又は法律上保護された利益の侵害(怪我をしたこと)
③損害の発生及び額(治療費、慰謝料など、交通事故が原因で被った損害額)
④②と③の因果関係
を記載します。
日常的な感覚からすると「これを書かなくても何があったか分かるじゃないか!」というものでも欠けてはいけません。
どれか1つでも欠けると、裁判所から指摘が入りますので注意して作成してください。
また、証拠(証拠方法と同じ意味です)もきちんと用意してください。
訴状の記載は、「主張」と「証拠」の大きく2つに分けられます。
「主張」というのは起こった事実をただ書くのではなく請求を認めてもらうための重要な事実を書きます。
ただ裁判所から見て主張だけでは、それが真実か否かの判断ができません。
そのため、主張を真実であると裏付けるための「証拠」が必要となります。そのため証拠は、ある程度詳細に時系列で書く必要があります。
証拠は、原則として原本を用意しなければなりません。裁判所への事前提出はコピーで問題ありませんが、裁判を行う際は原本を提出してください。
証拠書類を提出する場合は「甲●」などと提出する順番の番号をつけておくのが一般的です。
訴状を出す
訴状を作ったら次は裁判所に提出します。裁判所であれば、どこに提出しても良いという訳ではなく、管轄が決まっています。訴状を提出する裁判所を「管轄裁判所」といいます。
管轄について少しだけ説明をします。
交通事故の裁判における管轄とは、
①簡易裁判所か地方裁判所か
②①が決まったとして、どこの裁判所か
という2つの点で決まります。
まず、①の簡易裁判所か地方裁判所か、の問題は請求する金額によって変わり
請求額が140万円以下の場合:簡易裁判所
請求額が140万円を超える場合:地方裁判所
となります。
①の簡易裁判所か地方裁判所かが決定すれば、次に具体的にはどこの裁判所に提出するのかを考えます。
②のどこの裁判所かは、
のいずれかを管轄する裁判所を選びます。
このように具体的なケースごとで管轄裁判所は変わります。
自分で裁判をしようという方は様々な要件を見ながら管轄裁判所を判断する必要があることを念頭に置かなければいけません。
裁判所から手続面のサポートを受ける
裁判所は、自分で裁判を起こそうという人のために、事務手続面について教えてくれる場合もあります。
よくわからなくなった場合には、裁判所に電話をして問い合わせることもできます。
裁判を起こす流れ -裁判所内での処理編-
訴状を管轄裁判所に提出した後は、どのようになるのでしょうか。
裁判所が訴状を受理した後は、特に修正すべきところがなければ裁判所内部で配点をします。この配点というのは、裁判所内のどの部で処理をするかを決定する手続です。
実は、一口に「裁判所」と言っても、その内部には多数の部が存在します。例えば、東京地方裁判所には民事事件を取り扱う部だけでも51もの部があり、その部の中でも複数の係に分かれております。
裁判所は、この配点をしたあと被告に訴状を送達します。
被告に訴状が届いたら、「訴訟係属」、すなわち裁判を起こした状態になります。その後、期日が指定されます。
期日というのは、実際に裁判手続を進行させるために指定された日時をいいます。自分で裁判を起こした場合には、この指定された期日に必ず出頭しなければなりません。
裁判が開始した後の流れ
裁判を起こした後は、まず裁判所から指定された期日(期日は全て平日に指定されます)に裁判所に行きます。これを「出頭」といいます。
期日の流れを大まかに説明しましょう。期日(正確には、「口頭弁論期日」といいます)は、皆さんがテレビドラマなどでよく見かける法廷でおこなわれます。
裁判を起こした原告は裁判官から見て右側に、被告は左側に座ります(よくわからない場合には、近くにいる裁判所のスタッフに訊きましょう)。
時間になると裁判官が来ます。裁判官が来たら、必ず起立して礼をすることが慣例となっています。
期日が始まると、裁判官からいろいろと質問されますので、1つ1つ質問に答えましょう。
その後、証拠の原本を示すように求められます。その際、証拠の原本は、裁判官ではなく事務作業を行ってくれる裁判所事務官や裁判所書記官に手渡します。
諸々の手続が終了すると、次回までの宿題を確認した上で、次回期日を決定します。1期日あたりの所要時間は、5分~20分程度です。
自分だけでおこなう裁判(本人訴訟)のメリットとデメリット
このように、裁判を起こすというのは実に複雑で専門的な作業です。以上を踏まえて個人で裁判を起こすメリットとデメリットをまとめてみましょう。
メリット
交通事故の場合、裁判をすると保険会社の基準で決定されていた慰謝料とは異なり、裁判所基準で慰謝料が算出されます。
一般的には、保険会社の基準よりも裁判所基準の方が高額になることが多いので、これはメリットの1つです。
また、判断回避がありません。勝訴するにせよ敗訴するにせよ、裁判所は、起こされた裁判の内容について必ず判断をしなければなりません。
そのため、いわゆる白黒がはっきりする状態になりますので、この点もメリットの1つです。
さらに、弁護士費用がかかりません。
仮に弁護士に依頼するとなると、それに相応する費用が必ずかかります。
もっとも、自分の加入する保険会社のプランで、弁護士費用特約に加入している場合には、保険会社が弁護士費用の一切を負担してくれるので、この点はメリットになりません。
デメリット
以上をお読みいただいた通り、裁判を起こすのは、とにかく面倒で時間がかかります。
特に、交通事故の場合、法律の知識のみならず、医療分野、交通事情の分野などの専門知識も必要になるため、知らない専門用語に出くわすと、どうしても1つ1つ調査していかなければなりません。
他方で、保険会社は日々そのような業務をおこなっており、これらの専門知識を充分に備えております。
そのため、相手方と互角に闘うことは、そう容易いことではありません。
また、訴状を作成する段階でも、主張すべき事実は何か、それに対応する証拠はなにか、その証拠はどこにあるのか、第三者が証拠を持っている場合にはどうすれば手に入るのか、などと数多くの疑問が生じてくることでしょう。
また、裁判を起こすと、平日の午前中から夕方の間に実際に裁判所に行かなければなりません。
普段、皆さんはお仕事をしたり、家事をしたりと忙しい日々を送られていることと存じます。
そのような中、平日の時間に休みをとってわざわざ裁判所に自ら行かなければならないのはやはり面倒です。
さらに、裁判は和解しなければ通常1年以上もかかる長い闘いになります。
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まとめ
以上、個人で交通事故の裁判をする場合の流れをまとめました。先述のデメリットを回避するには、やはり弁護士に頼むのが最善の策だといえます。
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