民事調停の流れ。裁判との違いやメリット・デメリットを徹底解説。

裁判・調停
民事調停の流れ。裁判との違いやメリット・デメリットを徹底解説。

交通事故の被害にあったとき、その解決手段としてまず思いつくのは示談です。そして示談が成立しなければADR(裁判外紛争解決手続)訴訟になる、というのが一般的です。 しかし実は他にも手段があります。それは「民事調停」というものです。本記事では、民事調停がどのようなものなのかを説明します。なお、ADRについては、下記の記事も併せてご覧ください。 

参考:「交通事故の損害賠償。事故発生から賠償金の受け取りまでの流れ。

目次
  1. 民事調停の流れ
    1. メリットとデメリット
    2. 調停の流れ
    3. 調停の結果
  2. 必要な書類・書き方
    1. 申立書
    2. 主張書面
  3. 調停の回数・期間
  4. 調停の費用
  5. 調停委員とは
  6. 調停が合意・不調の場合
  7. さいごに

民事調停の流れ

民事調停とは、裁判のようにどちらの言い分が正しいかを争うのではなく、話合いでお互いが合意できるところを探り紛争の解決を図る手続です。


調停手続では、裁判官と民間から選ばれた調停委員で紛争の解決に当たっています。

1-1.メリットとデメリット

メリット

調停は手続が簡単

民事調停は一般の人でも利用できる制度で、申立てをするのに特別な法律知識が必要ありません。


簡易裁判所の窓口または裁判所ホームページには申立用紙と記入方法を説明したものが備え付けてありますので、それを利用して簡単に申立てをすることができます。


手続は簡単で終了するまで自分1人で対応することができます


円満な解決が見込める

当事者同士が話し合い双方納得のいく解決策を見つけるのが基本なので、実情に即した円満な解決ができます

費用が低額

裁判所に納める手数料は事案により異なりますが、訴訟に比べて安くなっています。例として10万円の貸金の返済を求める手数料は、訴訟では1,000円、調停では500円です。

秘密が守られる

第三者に知られたくない場合にも、調停は非公開の席でおこないますので周りを気にせず事情を話せて安心です。

早期解決できる

調停では仲介人を挟んでポイントを絞った話し合いをしますので、解決までの時間は比較的短いと言えます


通常、申立てがあった日から、2、3回の調停期日が開かれ、3か月以内を目途に調停が成立するなど事件が解決して終了します。

デメリット

相手方がそもそも出てこない場合には成立しない

調停は、あくまで「話し合い」によってお互いの納得いく解決に向かって紛争を解決する場です。


そのため、加害者が指定された日時に裁判所に来なければ(これを不出頭といいます)、話し合いができず調停が成立しません。あくまで当事者双方が出てきて初めて成立します。

話し合いで和解できなければ調停は成立しない

加害者と被害者が話し合いによって和解案を作らなければ、調停は不成立となってしまいます。


往々にして、被害者は過大に請求し、加害者は過少にとどめようとするので、お互いが妥協しなければ和解はできません

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1-2.調停の流れ

申立て

調停を申し立てるには、まず申立用紙に必要事項を記入し、必要な費用に相当する印紙を貼り付けて裁判所に提出します。


申立書の書式や記載例は、簡易裁判所の窓口のほか、裁判所のホームページにあります。

参考:「裁判所

申立書に訂正などがなければ、そのまま問題なく調停が開始されます。1回目の調停があるのは、申立書を出してから約1か月~2か月程度あとです。

調停当日

調停当日は、事前に裁判所に来る日時・場所を指定されます。申立人は、その時間までに裁判所に行く必要があります。そして、受付を済ませると待合室を指定されます。


調停開始までその待合室で待ち、調停員が呼びに来るのを待ちます。なお、被害者と加害者の待合室は別々です。

調停員が呼び出しに来ると待合室から調停室というところに移動します。


この調停室には調停委員が2名います。調停室では、被害者と調停委員2名が事故のことや示談の経緯について話をします。


被害者との話が終わると、被害者は待合室に戻り、次に加害者が調停室に入り同じように話をします。

加害者との話が終わると、加害者は待合室に戻り被害者が調停室に入ります。

そこで、調停委員から「加害者はこういうことを言っているよ」という話を聞かせてくれます。このようにして調停委員を間にはさんで話し合いをするのです。

何度か繰り返して争点が明らかになると、次回調停期日までの宿題が双方に与えられます。期日の間にこの宿題に取り組んでください。

1か月~2か月後くらいに次回の期日が決まりますので、またその日に裁判所に行ってください。

1-3.調停の結果

調停を複数回繰り返し、双方が納得のいく和解案が形成されると調停成立となります。


調停が成立すると、確定した判決と同じ効力がありますので、原則として後から不服を唱えることはできません。


金銭の支払や建物の明渡しなど一定の行為を約束した場合には、当事者はこれを守らなければなりません。

もし一方が約束した行為を守らない場合には、もう一方は強制執行を申し立てて調停の内容を実現する方法があります。

しかし、「相手方が出てこない」「和解案の折り合いがつかない」などの事情がある場合には調停は不成立となってしまいます。

必要な書類・書き方

民事調停に必要な書類は主に申立書主張書面です。

2-1.申立書

先に説明した通り、調停を申し立てるには、まず申立用紙に必要事項を記入し、必要な費用に相当する印紙を貼り付けて裁判所に提出します。


裁判所のホームページには申立書の書き方の例も示されていますので、そちらをご参照ください。

2-2.主張書面

主張書面は、調停が始まってから自身の主張を書面で伝えるためのものです。特に決まった書式などはありませんが、弁護士が付く場合には次のように記載することが多いです。

平成○○年(●)第1234号 損害賠償請求事件

申 立 人  甲 野 太 郎

相 手 方  乙 山 花 子

平成●年●月●日

主張書面1

●●裁判所○○係 御中

1 相手方の主張に対する反論

(1) 過失割合について

 相手方は、過失割合を8:2と主張する。

 しかし、本件交通事故の態様は・・・であるから、申立人に過失がないことは明らかである。

(2) 損害額について

・・・

以  上


別の裁判所のホームページに詳しく記載がありますので、そちらもご参照ください。

参考 :「書類を提出される方へ

調停の回数・期間

裁判所のホームページには、2回から3回程度(3~4か月程度)で解決することが多いとの記載があります。確かにこの程度の回数で解決するケースもあります。


しかし、事案が複雑なケースや争点(お互いの主張が食い違っている点)が多く、話合いに時間がかかるケースもあります。このようなケースでは3回よりも多くかかるのが通常です。

ただし、複雑なケースでも当事者双方が納得しさえすれば早期に解決します。結局のところ話し合いが成立するまでの期間はまちまちなのです。

調停の費用

調停の申し立てをご自身でおこなう場合の費用は、次のとおりです。詳しくは、裁判所のホームページをご覧ください。

調停または労働審判を求める事項の価額に応じて、次に定めるところにより算出して得た額 


✔ 調停または労働審判を求める事項の価額が100万円までの部分 その価額10万円までごとに 500円

✔ 調停または労働審判を求める事項の価額が 100万円を超え500万円までの部分 その価額20万円までごとに 500円 

✔ 調停または労働審判を求める事項の価額が 500万円を超え1,000万円までの部分 その価額50万円までごとに 1,000円

✔ 調停または労働審判を求める事項の価額が 1,000万円を超え10億円までの部分 その価額100万円までごとに 1,200円 

✔ 調停または労働審判を求める事項の価額が 10億円を超え50億円までの部分 その価額500万円までごとに 4,000円 

✔ 調停または労働審判を求める事項の価額が 50億円を超える部分 その価額1,000万円までごとに 4,000円

参考:「別表 民事訴訟費用等に関する法律別表第1(第3、第4条関係)

調停委員とは

調停委員は、調停委員会の一員として裁判官または調停官とともに当事者双方の話合いを合意にあっせんして紛争の解決に従事ています。

調停は裁判のように、どちらの当事者の言い分が正しいかを争う訳ではありません。


したがって調停委員は双方の当事者の言い分を聞きながら中立な立場で紛争の事実と状況に合った解決策を探るため、当事者の気持ちや主張を細かく聴きながら調停を進めていきます。

 

また、他の調停委員会から要求があれば調停委員は自分が直接担当していない事件についても、自らの知識や経験に基づく専門的な意見を述べることもあります。

調停委員は、法律の専門家でなくとも問題はなく「調停に一般市民の良識を反映させる」という思いのもと、社会生活上豊富な経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれます。

具体的には、弁護士、医師、大学教授、公認会計士、不動産鑑定士、一級建築士などの各分野の専門家のほか、地域社会に密着して幅広く活動してきた人など社会の各分野から選ばれており、年齢は原則40歳以上70歳未満のほとんどが50歳以上です。

調停には、地方裁判所や簡易裁判所でおこなう民事調停と家庭裁判所で行う家事調停があり、調停委員も、それぞれ民事調停委員と家事調停委員に分かれています。


その基本的な役割は同じですが、事件の内容などに合う最も適任と思われる調停委員を指定するなどの配慮をしています。

例えば、民事調停で建築関係の事件であれば一級建築士などの資格を持つ人、医療関係の事件であれば医師の資格を持つ人など、事件内容に応じた専門的知識や経験を持つ調停委員を指定しています。


また、家事調停では夫婦・親族間の問題になるので、男女1人ずつの調停委員を指定するなどの配慮をしています。

なお、調停委員は非常勤の裁判所職員であり、実際に担当した調停事件の処理状況を考慮して手当が支給されるとともに必要な旅費や日当が支給されることになっています(民事調停法第10条、家事事件手続法第249条第2項)。

調停が合意・不調の場合

調停にて当事者双方で合意できた場合にはそこで紛争は解決します。

しかし、当事者間の話合いがまとまらず不成立となった場合には民事調停手続は終了します。


そして、民事調停が終了した後の紛争解決方法としては、訴訟を提起するという方法があります。

調停打切りの通知を受けてから2週間以内に訴訟を提起した場合には、調停申立ての際に納めた手数料の額は訴訟の手数料の額から差し引かれます。

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さいごに

以上、調停に関する流れをざっと説明しました。

交通事故の被害者が1人で民事調停を申し立てることも可能ですが、平日の昼間に裁判所に行かなければならないことや、どうしても感情論になりがちで、建設的な議論をできないということが往々にして見られます。


こうなると紛争解決のための時間がただただ過ぎていくだけ、という事態にもなりかねません。

このような事態を避けるためにも、紛争解決に長けている弁護士に依頼することをおすすめします

弁護士に依頼することで、争点の整理やご自身が主張したいことを整理して調停委員に話してくれるため、迅速な紛争解決につながるからです。

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