交通事故の裁判はいくらかかる?費用の相場と支払いを抑える方法。

交通事故の被害にあったとき、その解決方法として咄嗟に思いつくのは示談です。
しかし、示談が成立しなかった場合には訴訟(裁判)をすることになります。しかし「どれくらい費用がかかるのだろうか」「相手方に請求できるのだろうか」と不安な方も多いと思います。
そこで本記事では、訴訟をするにあたって費用の面から説明します。なお、以下では説明をわかりやすくするために、原告も被告も1人ずつのケースにしぼっています。
交通事故の裁判にかかる費用
裁判に必要な費用は、大きく分けて訴訟費用と弁護士費用の2つです。
訴訟費用とは、訴状送付に必要な郵便料金や手数料となる印紙代などです。
弁護士費用とは、相談料・着手金・報酬金のことです。
例えば相談料については相談無料の事務所や初回は格安で相談を受けている事務所もありますので、そういったところを利用して弁護士に直接確認しましょう。
なお、現在の日本の法制度では「敗訴者負担制度」が存在しません。したがって、依頼した弁護士の費用負担は原則として全て自己負担となります。
では、それぞれの費用はどんなものかを見ていきましょう。
訴訟費用
裁判を起こすためには、裁判所にお金を払わなくてはいけません。このお金のことを訴訟費用と言います。
訴訟費用は、書類に貼る印紙代や書類を郵送する時の費用などに使われます。なお、弁護士費用は訴訟費用には含まれません。 訴訟費用は、基本的に負けた方が支払うことになっています。
しかし、裁判が終わらないと勝敗は分かりませんから、裁判を起こした方が立て替えておきます。
では、訴訟費用はいくらくらいかかるのかと言うと、相手に請求する金額によって変わります。相手に請求する金額が大きいほど、訴訟費用も高くなります。
少しだけ具体的な金額を言うと、相手に100万円請求する場合の訴訟費用は1万円です。500万円請求する場合は、3万円です。
階級が上の裁判所ほど訴訟費用は高くなる
訴訟費用は、階級が上の裁判所ほど高くなります。これだけでは全く分からないので、もう少し詳しく説明します。
まず、裁判は当事者が望めば最大3回まで審理を受けることができます。
裁判所には階級があり、裁判の判決が不服だった場合は更に上の階級の裁判所に審判を求めることができます。しかし階級が上の裁判所ほど、訴訟費用は高いのです。
簡単に言うと、2回目の裁判(控訴審と言います)は1.5倍、3回目の裁判(上告審と言います)は2倍の費用が掛かります。
これも、最終的には負けた方が支払うことになりますが、裁判が終わるまでは、控訴・上告を行なった方が立て替えることになります。
訴訟費用は、以下の裁判所のホームページで確認することができます。
裁判所のホームページ:「裁判所に納付する手数料」
弁護士費用
弁護士費用とは、弁護士に裁判で戦ってもらうための費用です。この費用は必ず必要なわけではありませんが、多くの場合は必要となるでしょう。
なぜ必ず必要ではないかと言うと、民事訴訟は弁護士に頼まずに自分で手続きを行なっても良いからです。
なので裁判手続きに長けていて自身で対応ができるのであれば、弁護士に依頼する必要がないので、弁護士費用は必要ありません。
着手金
着手金とは、弁護士が受任した際に弁護士費用の一部を支払う金額です。依頼結果の成功・不成功には関係がなく、契約の手付金のようなものです。
費用の基準は以下に記載している、日本弁護士連合会が使用していたものを採用している事務所が多いです。
事件の経済的な利益の額が
・300万円以下の場合→経済的利益の8%
・300万円を超え3,000万円以下の場合→5%+9万円
・3,000万円を超え3億円以下の場合 →3%+69万円
・3億円を超える場合→2%+369万円
※着手金の最低額は10万円
事件のケースや性質に合わせて独自の金額を定める弁護士もいるので、依頼前に確認しておき、納得してから依頼するように気をつけましょう。
報酬金
報酬金とは、事件が全て解決してから支払う金額です。最終的に結果として得られた金額に応じて支払います。
着手金と同様に、以下の日本弁護士連合会が使用していた基準を採用している事務所が多いです。
事件の経済的な利益の額が
・300万円以下の場合→経済的利益の16%
・300万円を超え3,000万円以下の場合→10%+18万円
・3,000万円を超え3億円以下の場合 →6%+138万円
・3億円を超える場合→4%+738万円
どのような結果になれば、いくらの報酬金になるのか想定される金額を事前に確認しておきましょう。
裁判を検討したほうがいい場合って?
裁判に必要な費用について説明しましたが、実際に裁判に持ち込むべきかの判断は金額だけではなく、その他のさまざまな要素を考慮して検討する必要があります。
例えば下記のような場合は、示談交渉では解決が難しいため、裁判を起こすことを検討してみるのもよいでしょう。
- 重度の後遺障害が残った場合
- 両者の主張が大きく異なり、噛み合いそうにない場合
任意保険会社には内規がありますので、示談の段階では内規を超える賠償金額の提示は難しいと思われます。
もし重度の後遺障害が残り、弁護士と相談した結果、損害賠償金額が億単位になりそうということになれば、示談ではなく裁判に持ち込むほうがよいでしょう。
また事故当事者間で、それぞれの主張が大きく異なり、いつまで経っても噛み合わない場合も示談交渉での解決は難しくなります。
以上のような場合を除いては、裁判にかかる費用や負担と被害者が最終的に獲得できる金額を考慮して、裁判をおこなうほうがよいのかどうか慎重に判断しましょう。
裁判で請求できる費用とは
訴訟費用を安く抑えるには
訴訟費用は法律で決められているため必ず必要になります。そのため払わずに済む方法はありません。
ただし、どうしても払えないという方であれば、訴訟救助の申立てをすると訴訟費用を抑えて訴訟をすることができます。
また、原告の主張が認められた場合に限り、加害者側に訴訟費用の全額または一部を請求できます。
弁護士費用を安く抑えるには
日本の民事裁判は、弁護士を立てずに本人訴訟をおこなうことができます。本人訴訟をすれば、弁護士費用が発生しないため、裁判にかかる費用を節約することができます。
しかし、裁判を起こす根本的な目的を考えるとこれが本当に節約になるのかどうかを慎重に考える必要があります。
裁判を起こす目的は「勝訴するため」です。素人である被害者が本人訴訟をおこなって敗訴してしまえば、慰謝料が支払われなくなってしまい、示談交渉で解決する場合より、かえって損失が大きくなってしまいます。
もし弁護士に依頼したいがお金がない、というような場合には「法テラス(日本司法支援センター)」を利用するのもひとつの手段です。法テラスは弁護士費用が低額に設定されており、さらに弁護士費用の立て替えもおこなっています。
参考:「法テラス」
また、被害者が弁護士費用特約の付いた自動車保険に加入している場合は、弁護士費用特約を利用することで、弁護士にかかる費用はもちろんのこと訴訟費用も保険会社が支払ってくれるので、自分で費用を支払わずに済みます。弁護士費用は任意保険の特約になります。
任意保険には必ず弁護士費用特約を付けておきましょう。
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