交通事故での裁判の流れ

交通事故に遭ったらまず示談をおこないます。しかし示談がまとまらなかった場合、裁判に持ち込むこともあります。
この記事では、交通事故で裁判にいたる理由にはどのようなものがあるのか、さらに交通事故で裁判を起こす際の準備や流れについて説明します。
- 目次
交通事故の裁判は「刑事裁判」と「民事裁判」の2種類
交通事故の裁判は大きく分けて「刑事裁判」と「民事裁判」の2種類あります。
刑事裁判
刑事裁判は加害者が有罪か無罪かを判断し、有罪と判断した場合に刑罰を決めるものです。刑事裁判の場合、原告は国家(検察官)になります。
民事裁判
交通事故の損害賠償請求に関する裁判は民事裁判になります。民事裁判の場合は原告、被告ともに個人または法人となります。
示談がまとまらないと裁判になる
交通事故の損害賠償請求を終わらせるには以下の2つの手段があります。
示談とは、交通事故の当事者同士で話し合い、双方が納得する形で解決をはかる方法です。
交通事故の損害賠償請求の場合、上記いずれかの方法により加害者が被害者に対し「損害賠償を〇〇支払う」と約束をすることで解決します。
反対に当事者のいずれかが納得しなければ示談は成立しません。この場合は裁判に持ち込んで損害賠償などを決めることになるのです。
示談がまとまらない場合とは
交通事故では示談がまとまらない場合に裁判に持ち込むことを説明しました。交通事故で示談がまとまらないケースは主に以下のいずれかになります。
上記のような場合、裁判に持ち込むことになります。
示談が成立すると基本的に裁判ができない
裁判を起こすとなると時間とお金が必要になります。したがって、なるべく示談で解決したいと考えるのは当然のことです。
ただし、お金がかかるからといって安易に示談を成立させてはいけません。示談が成立すると基本的に裁判を起こすことができないのです。
仮に、交通事故の被害に遭い、弁護士に相談する前に加害者と示談をして慰謝料100万円を受け取ったとします。この時点で示談が成立したものとみなされます。
もし示談成立後に「本来なら500万円をもらってもおかしくないような事故だった」と知っても、後から残りの400万円を加害者に請求することはできません。
一度成立した示談を覆すことは難しいのです。
ただし、「事故の時点では予測できない後遺症が発生した」という場合は、示談成立後に追加で支払いを請求できる場合もあります。しかし、簡単なことではありません。
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交通事故の民事裁判の準備
ここからは、実際に交通事故の損害賠償請求の民事裁判を起こす際、どのような準備をすべきかについて説明していきます。
裁判の相手を特定する
実際裁判を起こすとなると相手を特定することが必要になります。事故を起こした相手が見つからない限り、裁判を起こすことはできません。
また、相手が見つかっていても、その人がどこに住んでいて何という名前なのか分からなければ裁判所に呼び出すことができません。
裁判の相手がどこの誰なのか特定する作業について警察は対応してくれません。自分でおこなう必要があります。
裁判に必要な書類の準備
次に裁判を起こすための書類などを用意します。
訴状
裁判を起こす際、訴状を裁判所に提出する必要があります。
訴状とは自分が相手に「何を」「どれだけ」「どんな理由で(どんな法律に基づいて)」請求するのかをまとめた書類になります。
訴状を提出する裁判所はどこでもいいわけではありません。交通事故では損害賠償金額や住所などで提出する裁判所が変わります。
簡易裁判所・地方裁判所のどちらに提出すればいいのか
交通事故裁判の訴状は損害賠償金額によって簡易裁判所か地方裁判所にわかれます。
管轄
訴状を提出する裁判所の管轄も決まっています。交通事故の損害賠償請求の場合、以下のいずれかを管轄する地方裁判所あるいは簡易裁判所に訴状を提出します。
損害があったことの証明
交通事故では証拠(領収書や給料の金額がわかるものなど)を提出することで損害が出ていることを証明しなければなりません。
証明できなかった場合、「損害はなかった」という扱いを受けてしまいます。
ただし、自動車事故の場合、自動車損害賠償保障法が加害者に対して「過失がなかったこと」の立証責任を課しています。そのため、被害者は損害を証明しやすくなっています。
交通事故の民事裁判の流れ
ここからは民事裁判の具体的な流れを説明していきます。
一審判決までの流れ
- 代理人(弁護士)に依頼する ※民事裁判では依頼しなくても問題ありません
- 訴状を裁判所へ提出する
- 訴状提出から約1ヶ月後に第1回目の弁論期日が指定される
- 弁論のための準備をおこなう
※証拠書面や写真、医師の診断書や後遺障害等級認定などを準備する - 当事者や証人を尋問し、どちらの言い分が正しいかを裁判官が見極める
- 判決前の最終弁論
※これまでのことを踏まえて双方が最終的な主張をおこなう - 一審判決
※裁判所による判決のこと - 判決確定
※控訴がなければ確定となる
ほとんどの場合、上記の流れで一審判決が出て終結となります。
二審判決までの流れ
当事者のどちらかが一審判決の内容に不服があり、控訴した場合は二審がおこなわれます。控訴は判決の送達を受けた翌日から2週間以内に「控訴状」を提出しなければなりません。
二審の流れを以下で簡単に説明します。
- 一審判決後2週間以内に控訴状を提出する
- 控訴状を提出した理由、一審判決への不満の理由などを裏付ける書類などを提出する
- 控訴を受けた側は控訴した側の控訴理由書に対し反論を記載する
- 控訴審第1回期日
二審の場合は第1回期日で終わることが多い - 二審判決
※一審判決と同じ内容の判決が出ることが多い - 二審判決確定
※上告がなければ確定
交通事故の民事裁判にかかる時間
裁判というのは非常に時間がかかります。短い場合でも数か月かかることがほとんどです。なぜ裁判はこんなに時間がかかるのでしょうか。
裁判は1日みっちり話し合うというものではありません。30分~1時間程度の細かい話し合いを何度も重ねていくため時間がかかるのです(数分で終わる回もあります)。
また控訴や上告がおこなわれるとさらに時間がかかります。
裁判が長引くかどうかは事故内容にもよりますが、少なくとも数か月、長くて年単位の時間がかかることを念頭に置いておきましょう。
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交通事故の民事裁判にかかる費用
裁判を起こすためには裁判所にお金を払う必要があります。民事裁判で裁判所に支払うお金は印紙と予約郵券になります。
裁判所に支払う印紙金額は相手に請求する金額によって以下のように変わります。
予約郵券は訴状などを裁判所が郵送する際の郵便代です。金額は裁判所によって異なりますので必ず確認しましょう。
交通事故の民事裁判のメリット・デメリット
民事裁判を起こす前に、裁判を起こすメリットとデメリットを知っておくことも大切です。
交通事故の民事裁判のメリット
交通事故の民事裁判のメリットは主に3つあります。
交通事故の民事裁判のデメリット
一方、交通事故の民事裁判のデメリットは以下の通りです。
上記のメリット・デメリットを考慮して、示談交渉を続け成立を目指すのか裁判に持ち込むのかよく考えて進めましょう。
交通事故の民事裁判は弁護士に依頼すべき
刑事訴訟(有罪無罪を決める裁判)と違い、民事訴訟は弁護士に頼まずに自分でおこなうこともできます。
一方、裁判は非常に時間がかかります。また、交通事故であれば後遺症などで被害者は体を動かすことが難しい場合もあります。
交通事故の損害賠償では請求額が高額になることも多くあります。自分だけで裁判を起こし、損をしないためにも弁護士の力を借りる方がいいでしょう。
また、弁護士に依頼すれば強制執行の手続きもおこなってもらえるので安心です。
まとめ
交通事故の民事裁判の流れを説明しました。
損害賠償請求などの民事裁判は自分だけで起こすことができます。しかし、裁判は法的な知識が必要なうえ、時間的にも身体的にも負担が大きいものです。
また、せっかく裁判を起こすならば勝訴を目指したいものです。
交通事故に強い弁護士なら交通事故の民事裁判の経験も豊富です。交通事故の裁判を有利に進めるためにも弁護士に相談するといいでしょう。
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